太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 スタッフブログ

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八畳のカーテンを開けると巨大な富士山が・・・


今年の夏季山頂観測に向けて、御殿場市内のアパートを借りて事務所にする御殿場基地が、山頂班2名を迎えて、6月17日オープンしました。高速御殿場インターから5分のモン・ソレイユの2階です。名前の通り陽当たりと風通しの良い、やや小型の4DKです。

地図、間取りなど詳しくは「夏季観測2018公式サイト>御殿場基地情報」をご覧ください。

180617御殿場1

アパートの前は駐車場。ここに1台、 裏の駐車場に2台とめることができます。


御殿場2

台所は70年代の団地サイズですが、快適です。

御殿場3

玄関隣の八畳の和室、ベランダからは広い駐車場が見えます。

夏の間、富士山測候所を利用する皆さんの登山基地として、有効に利用されることを望んでいます。

(広報委員会)


前回のブログ「宇宙誕生の歴史の倍の時間で1秒の狂い!?・・・・」の香取先生のお話の枕に「伊能忠敬の測量への言及」と書きましたが、伊能忠敬没後200年に当たる今年、いろいろな会合が開かれています。その一つの「測量協力者顕彰大会」に、たまたま出席したご縁でいただいたのがこの写真です。

伊能圖_富士山20%

伊能忠敬研究会に、写真や情報の本NPOでの使用について問い合わせたところ、研究会事務局の戸村茂昭様から懇切なメールを頂きました。ここでその内容を含めて伊能忠敬の「富士山の測量」についてご紹介します。

戸村氏によると、「上の地図は美的な価値としては意味があっても、 伊能測量の科学的な価値の評価の点では片手落ち」だと言われる恐れがあるとのことです。(なお、この絵の頂上の位置は地図としての富士山の頂上の位置とのことです)

先日(6月6日)のNHK 総合TV 「歴史秘話ヒストリア」の中でも紹介されていましたが、伊能図には縮尺によって大図と、それを編集・縮小した中図、小図の3種類があります。

「大図」(1:36,000、214枚):山岳などは絵画風に描写されている。記号の利用は少ない。
「中図」(1:216,000、8枚) :記号が多く用いられている。
「小図」(1:432,000、3枚):   同上
(鈴木純子、「伊能図の世界」、「伊能忠敬日本列島を測る(前篇)」p30-38、伊能忠敬研究会、2018)

今回頂いた上の写真は大図の一部からのものとのことです。

「中図」によると、「大図」では分からなかった新たな2つの視点が顕著に現れていると戸村氏は指摘されます。(1)朱色の測線が富士山の周りをグルリと一周している。これは、廻り検知という方法を実践した証拠。(「廻り検知」とは、測量しながら、ぐるりとまわって最初の地点に戻った時、最初の測定値と比較して誤差を確認する方法)
 (2)富士山の頂上から沢山の方位線が放射状に描かれているという点。 これは、伊能測量の羅針として、天空は北極(緯度の羅針)としたのに対し、 地上では富士山(方位の羅針)とした証拠。
http://www.inopedia.tokyo/02dataRm/region/06/

このように、伊能測量隊にとって、広範囲の地点から見通せる高い山である富士山は方位の目安として、多くの場所から測定されています。史料「山島方位記」にもそのことが書かれております。また、高さについても、

 西倉沢村からの測定で、3732.72m、 吉原宿からの測定で、3660.00m

等の現在の値(3776m)と非常に近い値が示されていることに驚きます。

これらの値は、下図に示す原理を用いて仰角の精密な測定を行い、換算されたものです。 また、戸村氏によると「富士山の方位は頂上・剣ヶ峰一点だけでなく、「右」「中」「左」の三点迄区別した方位を測っている」とのことです。伊能測量隊の技術と、絶え間ない精度向上の努力を物語っています。

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(戸村茂昭、「富士山の高さを伊能測量ではどのように求めたのだろうか?」、伊能忠敬研究 74 号、6-8、 2014 )

伊能図についての興味は尽きませんが、伊能忠敬研究会のホームページに、富士山だけでなく日本各地の詳細なデータがありますので興味のある方は是非ご覧ください。
http://www.inopedia.tokyo/02dataRm/region/05/
http://www.inoh-ken.org/

(広報委員会)
  

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去る6月3日(日)NPO法人富士山測候所を活用する会総会後の1時間、東京大学大学院教授・理研香取量子計測研究室の香取秀俊先生をお招きし、特別講演会「時空のゆがみを見る時計」が催されました。講演会には会員のほかに、東京理科大学や東京学芸大学の学生等を含め約50名の聴衆が熱心に聞きいりました。
一般人だったら日常それほどは気にしていない時計の精度、またもっと気にしていないであろう相対性理論、それらはGPS等の測位衛星で、自分たちの時刻と位置を決定するのに共に重要な役割を果たしてくれることから香取先生の講演は始まります。

測位衛星にはセシウム原子時計が内蔵され、相対性理論(高度の違いで時間の進みが変わる)を考慮して、現代では時刻と位置を決定するのが当たり前になっています。位置を知るといえば、標高を知ることも重要なこと。「標高を測ることの面白さ」に始まるお話の枕には、伊能忠敬の地図への言及もありました。

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日常にある高精度時計の誤差はどの程度でしょうか?
 ≒ 10s・・・3x10-5 s(=1年に1秒の狂い)
と我々にとっては十分な精度に思えます。
しかし、測位衛星にも内蔵されているセシウム原子時計の精度は
 ≒ 10-15 s(=3000万年に1秒の狂い)
となると、先ほど話をした時刻、位置決定が人工衛星からでき、相対性理論を考えるようになってくるわけです。これでも十分だと思いきや、香取先生の発明した光格子時計では
 ≒ 10-18 s(= 2×136億年に1秒の狂い)
と宇宙誕生の歴史の倍の時間があっても1秒しか狂わないという信じられない精度になってきます。となってくると、1秒という定義が原子時計で行われているものから、いずれはこの光格子時計がその役目を担うようになるだろうと考えられます。

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光格子時計は、ストロンチウムなどの原子をレーザー冷却による絶対0℃に近い、0.0000001 Kで冷やし、格子状になったポテンシャルにこの原子を閉じ込めこのポテンシャルにトラップされた原子の励起と脱励起の振動で高精度の振動を得ているようです。

時刻精度がここまでよいとなると日常の生活を変えるような応用をもたらすことができます。例えば、高度差を相対性理論から導出できるようになります。

同じテーブルに2台置いた測定器からのビートを共鳴させ、わずか2cmのズレなども計測できるという革新的技術、などなど。難しい概念と言葉が、香取先生のスライドを見ているとなんとなくわかったような気分になるから不思議でした。
「光格子時計でダークマターが分かるかもしれない」
「アインシュタインの相対性理論は大丈夫だろうか?」
「物理定数は本当に定数か?」
といった刺激的な言葉が飛び交い、司会の鴨川先生はじめ多くの聴衆が興奮の渦に巻き込まれました。

今年1月の「週刊朝日」で「次のノーベル賞候補はだれか?特集」に選ばれた香取先生ですが、ここまで
門外漢の人たちでもわからせてしまった圧倒的講演でした。
(広報委員会)


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