太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

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(上)大河内先生とポスター賞の大力さんと光川さん(下)第60回大気環境学会年会長の伊豆田猛・東京農工大教授と6人の受賞者(いずれも大河内先生のFBから)


お待たせしました。大気環境学会の続報です。
今年も2名の富士山研究者がポスター発表賞を受賞しました! 早稲田大学大河内研究室の大力充雄さんと光川彩夏さんです。

ポスター賞の受賞者は全部で6人でしたが、受賞の対象になる「学生・若手」の発表は50件。その中で、富士山関係2件が選ばれたことはNPOにとって大変嬉しいことです。


今回の大気環境学会第60回年会(9月18日-20日)では、日中韓国際交流シンポジウムも行われ、当NPO理事長でもある畠山史郎アジア大気汚染センター長の講演もあり、多くの分科会が同時に行われました。

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 第60回 大気環境学会 年会が行われた東京農工大学キャンパス(米持先生のFBから)

9月18日午前中の口頭発表では、《植物影響セッション》で、帝京科学大学・和田龍一先生の「富士山麓森林におけるオゾンフラックスの季節変化とその要因解析」、《光化学オキシダント/VOCセッション》では早稲田大学大学院の山脇拓実さんによる「揮発性有機化合物の大気圏動態と航空機および船舶排ガスの影響評価 (3)」の注目の講演があり、活発な議論が続いていました。

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 早稲田の山脇さんの発表パワーポイント 富士山頂の大気は様々なところの影響を受けている
 

最終日の9月20日には、早稲田大学・大河内博教授による「大気中のマイクロチップの研究を始めませんか?」という意欲的な提案講演もありました。

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 大河内先生の発表スライド(一部)

地球を診断して早期治療する “アースドクター(地球医)” を目指しておられる大河内先生の面目躍如といったところです。海洋汚染だけでなく大気汚染も考えるとき、地球規模の観測研究の中で富士山頂が果たす役割も今後大きくなるのではないでしょうか?

(広報委員会)

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ペットボトル禁止キャンペーンの水筒 (大河内先生の共同研究者で、ペレット問題の世界的な権威 高田秀重・農工大教授提供)






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 米持真一先生とメダルと表彰状

9月18日から、府中市の東京農工大学で第60回大気環境学会(9月18日-20日)が行われていますが、19日の総会で、大気環境学会学術賞(斎藤潔賞)が埼玉県環境科学国際センターの米持真一担当部長に下記の業績について授与されました。

「微小エアロゾルの動態観測と光触媒特性を活用した大気環境改善に関する研究」

受賞講演は「フィールドに軸足を置いた微小エアロゾル観測と光触媒作用の応用研究」というタイトルで、日中韓共同研究によるPM2.5の研究が中心ですが、富士山頂での長年の観測結果も紹介されました。

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(上)受賞講演を行う米持先生(下)講演発表のスライドから

ネオジム (Neodymium) 磁石を用いた自作の光触媒材料とその応用としての「フィールドに軸足を置く」という研究スタイルは、過酷な富士登山を徒歩で30回もこなした米持先生の面目躍如でした。

今年の7月25日には、富士山頂研究5000人目の研究者が米持先生だったことを覚えておられる方も多いでしょうか?今年は先生にとって良い年だったようですね。




なお、9月18日の午前中には帝京科学大学和田龍一教授の1H1000「富士山麓森林域におけるオゾンフラックスの季節変化とその要因の解明」、および早稲田大学大学院の山脇拓実さんの1D1115「揮発性有機化合物の大気圏動態と航空機および船舶ガスの影響評価(3)」の富士山測候所利用関係の口頭発表が行われました。


午後のポスターセッションはキャンパスの北端にある武道場にで行われました。土足厳禁の会場に、臨時にビニールを張り巡らした大会場は大会運営委員長の伊豆田猛先生苦心の作とのこと。折からの豪雨の中でしたが、149件の発表に向けて大勢集まりました。富士山測候所関係の学生発表も4件あり活発な討論で広い会場に熱気があふれていました。

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P-37「富士山頂における自由対流圏大気ナノ粒子中微量金属元素の観測」宇田颯馬さん(早稲田大)

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P-75「大気中陰イオン界面活性物質の動態と起源推定(8)」張晶瑩さん(早稲田大)
太郎坊での観測が報告されていました。


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P-81「富士山頂での火山性ガスの越冬モニタリングシステムの構築」高橋智樹さん(首都大学東京)

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P-103「富士山体を利用した自由対流圏大気および大気境界層における雲水化学特性 (6)」大力充雄さん(早稲田大)

この中から、19日夜の懇親会で発表賞が決定されています。結果はFBでちらほら見えていますが、「続報」で詳しくお知らせしますのでぜひ期待ください。

(広報委員会)

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 旧富士山測候所内で撮影中の加藤俊吾・首都大学東京准教授(左)とソニー技術者の西出葵嘉さん(右)

今週9月11日(水)に放送された静岡第一テレビの夕方のニュース番組『news every. しずおか』。この特集で『富士山頂で未来の通信研究』と題して「この夏、日本一の富士山とスカイツリーを結ぶある通信技術の研究が行われていた」と富士山測候所を活用する会の研究が取り上げられました。

旧富士山測候所は当時は職員が常駐する世界一高い観測所といわれていたが、有人観測が2004年幕を下ろした。現在は富士山測候所を活用する会が気象庁から借り受け、全国からひと夏で400人の研究者が訪れ、富士山頂でしか得られないデータを観測している。

実は、今年気象庁のアメダスは障害で4月12日から75日間もデータが停止していたが、NPOの雲の上の研究所には昨年夏から気温を測定したデータを1年間送り続けていた機器…ソニーが開発した新しい通信規格ELTRESの送信機…があった。

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(上)測候所の窓に取り付けられていたELTRESの送信機(下)取り外して動作を確認

ELTRESの電源として使用されていたのは単1サイズのリチウム一次電池わずか6本だけ。これまでの常識を覆す低消費電力である。送信できるデータ量が少ない代わりに、省電力・長距離通信の特長をもつ新しい通信規格で注目されている。

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同じ測候所内で、地球温暖化の指標となる二酸化炭素の通年観測データを衛星で送る装置には100個ものバッテリーが使われている。


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「バッテリーのことをあまり気にせずデータを送り、ちゃんとしたデータがとれる夢のような端末だ。昔は人が常駐していたが、いまは常駐しなくとも環境問題などの社会の大事なデータを観測できる。ELTRESは我々の研究を大きく変えようとしている」(鴨川仁・事務局長/静岡県立大学特任准教授)

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今年は火山ガスを観測するセンサーが取り付けられた。「富士山はいつ噴火してもおかしくない。リアルタイムモニタリングでいち早く危険を察知することができたらと思っている」(加藤俊吾准教授)

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「携帯電話でつながっているエリアは世界の半分だけ。残り半分をELTRESでつなげていきたい」(ソニー荒島さん)

最後にコメンテーターが「子供の頃の技術は新幹線とレドームだったが、富士山測候所はその役目を終えたいま新たな進化を遂げているのを感じる。自然界の富士山と人類の未来への調和が見えてくるのが楽しみ」と締めくくりました。

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(上)小野澤記者と撮影前の打ち合わせ(中)カメラに囲まれてやや緊張気味の加藤先生(下)撮影終了後

とてもわかりやすい番組構成で私たちの研究をご紹介していただきました。静岡第一テレビの関係者の皆さまに感謝申し上げます。

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  撮影終了後、旧富士山測候所の前で
(広報委員会)

R06 富士山頂における一酸化炭素, オゾン, 二酸化硫黄の夏季の長期測定
※WNI気象文化大賞助成
加藤俊吾(首都大学東京) 大気化学/ 継続
富士山頂の測候所に一酸化炭素(CO)計、オゾン(O3)計、二酸化硫黄(SO2)計を設置し、大気中濃度の連続測定を行う。COは汚染大気輸送の指標となる。O3は汚染大気の光化学反応の進行度合いにつての指標となり、実際に大気環境に悪影響を与える物質である。また二酸化硫黄(SO2)は化石燃料燃焼以外にも火山から放出され、噴煙の影響をとらえることができるため、防災の観点から通年観測が望まれる。小型小電力のセンサーによるこれらのガス測定テストも行い、商用電源が利用できない期間での観測を目指す。

U12 ELTRESを用いた富士山頂通年科学計測
加藤俊吾(富士山測候所を活用する会)通信/ 継続
SONY社のELTRESを活用し火山噴火に資する科学データを越冬で取得し通信実験を行う。
本実験は前年度の代表者・荒島謙治(SONY)のELTRES通年通信実験を拡大させたものである。

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 ELTRESによるリアルタイムモニタリングデータはこちらで公開されている




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