太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 スタッフブログ

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 6月7日(水) - 9日(金)静岡市で開催された第26回環境化学検討会にて。右から4人目が大河内理事


こんにちは。富士山測候所を活用する会のスタッフブログ担当です。

今年も7月14日の大気化学グループの集中荷上げをもって、富士山測候所を活用した高所トレーニング、気象観測、雷観測、大気観測など29ものプロジェクトが本格的に始動しました。当会は富士山頂で観測を始めて10周年、いよいよセカンドフェーズへ移行していきます。

今年は、発足当時から富士山測候所を活用している当会の理事、大河内博の研究グループについて紹介していきます。大河内研究チームは、早稲田大学創造理工学部に所属しており、 ”アースドクター”という新しい学問分野の形成を目指しています。

”アースドクター”とは、言葉どおり、”地球のお医者さん”。そのお医者さんの専門は予防医学。地球が風邪を引く前に、処方箋という環境観測データをもとにして環境予防学を行っています。

今日から、富士山測候所での大河内研究チームの研究活動や学生生活を5回に分けてご紹介していきます。

バッテリー交換
 今年の夏に取り換えのため太郎坊に運び込んだ50個のバッテリー。総重量は850㎏もある

7月11日-12日、国立環境研究所(以下「国環研」という)の野村先生一行が山頂へ。
今回の登山目的は、富士山頂での大気中CO2濃度の観測を開始した2009年に設置したバッテリーの取り換え。昨夏50個と今夏50個ずつ、合計100個のバッテリーを、2年がかりで新品と交換した。

これにより、現在行っている富士山頂での大気中CO2濃度の通年観測を長期間(20-30年)継続する体制が整った。

バッテリー交換
 今年の夏から始めた大気自動サンプリング用のボトル

今回の登山のもう一つの目的は、大気のボトルサンプリングを開始すること。
CO2以外の温室効果ガス濃度を現在、富士山頂で行っている大気中CO2濃度と同頻度で測定するためには、大量の電力を必要とする。現在の測候所の電力事情では困難なため、今年の夏から大気のボトルサンプリングを行うことにした。

自動で毎月大気を採取する装置を山頂に設置し、翌夏に大気を採取したボトルを回収し、実験室にて温室効果ガス(CO2、CH4、N2Oなど)を測定するというもの。これにより、富士山頂での温室効果ガス濃度観測がより一層強化されることになった。

今年の夏期観測では、大気の観測などで通年観測にチャレンジするプロジェクトが多いのも特徴だ。国環研が他に先駆けて通年観測を開始したのが、8年前の2009年。今年は温室効果ガス濃度観測も強化されたこともあり、ある意味 ”第2次通年観測ブーム” の到来と言えるかもしれない。


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 2017年4月14日 国立研究開発法人 国立環境研究所の報道発表

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 イスララエル・テルアビブ大学・Yoav Yair教授の発表

今年のJpGUは米国地球物理学連合AGUとの合同大会ということもあり、海外からそうそうたる面々の研究者が来日した。スプライトの名を一気に世に広めたNHKスペシャル「宇宙の渚」にて活躍したイスララエル・テルアビブ大学・Yoav Yair教授もその一人である。

Yair教授は大気電気の専門家でもあるが、地球の大気電気だけでなく、惑星の大気電気も専門。火星に雷があるか否かは科学者の間では注目の的であり、日本も含めた各国の宇宙先進国が競ってその存在を探している最中という。

雷放電のきっかけになる電気は、地球だと積乱雲であるが、火星では砂塵嵐ではないかと予想されている(もちろんもし存在するならば、であるが)。地球でも砂塵嵐はあり、イスラエルでは砂塵嵐が発生することから、大気電場の測定で、仮想火星環境としての研究が進んでいる。

テルアビブ大学が所有するヘルモン山の山岳大気電場観測データ、砂漠地域の大気電場観測観測データで得られた結果から、砂塵嵐内がどのような電気の分布になっているか、Yair教授らは悩んでいた。

たまたま、Yair教授富士山での山岳大気電場観測の結果(鴨川、三浦、大河内3グループの共同研究で米国地球物理学連合レター誌に発表)を目にしたとき、まさに富士山で得られた結果とその解釈が役に立つと直感し、今回JpGUでの発表となった。

富士山の山岳大気電場観測は、かねて三浦教授の師匠でもあった関川理科大教授が、その不思議さを1960年代に発表し、世界でも山岳大気電場は地表での測定と異なる、と大きく話題になっていたマイナーながら難題でもあった。

それをNPOの共同研究で解明し、発表したわけであるが、50年以上にわたって未解明だったこの問題。いまこのことを直接興味を持つ人はあまりいない。しかし、火星の雷の基礎研究に富士山での研究が役に立つとは、当時の研究者は夢にも思わなかったであろう。


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