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 工事前の2.8合ハット内部の写真。湿気により木製の柱や梁が腐食している

富士山の多くの山小屋が電気を使用していないのに、山頂の富士山測候所には電気が通じているのを聞いて驚く方も少なくない。厳密には夏の7月、8月の2カ月間だけではあるが、麓から商用電気を通し観測機材の電源などの利用に供している。

山頂に電気を供給している高圧ケーブルは標高1075㍍にある1号柱から標高1575㍍にある73号柱までは延長3.8㌔㍍の架空送電線、その先は海底ケーブル仕様のケーブルが、山頂に向かって地中埋設されている。

埋設ケーブル区間の総延長は約7.2㌔㍍。途中5箇所の中継点としてのハット(木造小屋)を経由している。ハットはケーブル区間で障害が発生した場合、障害箇所を特定するための切り分けを可能とするほか、避雷(アレスターにより雷のサージを吸収)などの役割ももっている。

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 富士山測候所の電源系統

ハットを含む電源ケーブルは、毎年夏期観測が始まる前に点検を行い、その機能の確認を行っている。標高2020㍍にある2.8合ハットで、内部の木の柱や梁が腐食し、天井が落下する危険性があることが確認されたのは、昨年点検が実施された6月のことである。

測候所開所期間中にハット倒壊により山頂への電気が停止するリスクを回避するためには、今年の開所前までに内部の補強工事を終わらせておくことが越年の課題となっていた。昨年来、その工法についてはいくつかの案の検討を重ねてきたが、最終的にはコストや工期を勘案し、単管パイプでハット天井部を押し上げる形で補強する方式に落ち着いた。工事は6月22日(木)とし、悪天候等に備えて翌日23日(金)を予備日に設定した。

大変だったのは、それからである。機材・資材などを運搬するブルドーザーの乗り入れにあたっては、当該場所が国立公園第1種特別地域(富士箱根伊豆国立公園)、特別史跡名勝天然記念物(特別名勝)、鳥獣保護区特別保護地区に指定されているため、それぞれ関係する法令の規制を受ける。工事着手前に、その許可を取りつけなければならないのである。

実に厄介なことに、(当然といえば当然なのであるが) 許認可は管轄するそれぞれの地方公共団体を通して申請しなければならない。静岡県環境部環境局自然保護課殿のご指導を仰ぎながら、関係するところに連絡しまくり、突貫で申請書類を作り上げ郵送した。工事着工に必要となるすべての許可書が取り揃った時は、工事前日ギリギリの午後3時を回っていた。

21日は、東海地方は折からの低気圧と梅雨前線の影響で広範囲に雨が降り、本格的な梅雨入り。各地で冠水被害や避難勧告も出されるほどの大雨となった。幸いなことに翌22日は梅雨も中休み、曇天ではあったが工事には支障なかったという。

9:40には2.8合ハットに到着。工事は予定どおり順調にはかどり、作業は12:30前には終了した。これで6月27日(火)の始点(1号柱キュービクル)から測候所(終点)までの通電試験を経て、7月1日の開所となる段取りだ。2.8合ハットの補強工事はその前提となるいわば第一関門である。ここを突破できたことで、開所に向けて一歩前進することになった。

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 9:40 2.8号ハットに到着、資材・機材を荷下ろし

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  2.8合ハットの外観。特に異常は認められない

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 補強作業終了後。単管パイプと天井の補強材でがっちりと組み込み(入口より撮影)

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 ハット内の電気設備(碍子、避雷器)も点検・清掃

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 12:30 作業完了後、ハットの扉を閉鎖・施錠