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 成蹊高校の会場では天文地学部の高校生が待機

7月1日から始まった今年の富士山測候所の夏期観測も、8月31日の閉所を控え、今週は各研究グループの観測機材の撤収ラッシュを迎えた。

今年の観測活動を総括するにはまだ尚早かもしれないが、山頂観測10周年を迎えた今年は、話題に事欠かなかったといえよう。①新規のプロジェクトが3分の1を占めて測候所の活用分野が更に拡大した②夏の観測だけにとどまらず冬に向かって通年で観測を継続する研究が6件もあり”第2次越冬観測ラッシュ”となった③火山時に発生する二酸化硫黄のリアルタイムモニタリングや宝永山火口での観測や富士山噴火に備えた防災関連の研究④高所医学研究が2件参加、などなどである。

これらの研究活動の一方で、測候所利用のもう一つの柱である教育活動に関しても、新規の試みが行われた。8月24日(木)標高3776㍍の富士山頂と下界の成蹊高校をインターネットで結んで行ったインタラクティブ授業である。

山頂で講義を担当したのは鴨川仁・東京学芸大学准教授。前日23日に、インドネシアのバリで開催されていた国際会議のあと成田空港から学芸大学へ。そこで一仕事済ませ、夕刻にレンタカーで御殿場に移動。翌24日早朝6時のブルで山頂には9時に到着。地上の成蹊高校と確認試験もそこそこに、10:40頃から本番の授業が始まった。

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 appear.inの画面は山頂(右)、成蹊高校(左上)、NPO事務局(左下)の3つに分割されている。

成蹊高校の教室には、部活の天文気象部の高校生5人が待機。事前に部活の夏期合宿でも、この授業で聴きたいことなどを勉強しておいたそうだ。

成蹊高校の天文気象部は、同じ高感度カメラを用いた流星の研究を行い、撮像もしている。一昨年あたりからは高高度発光現象について調べる活動をしており、極地研のコンテストなどにも応募し受賞している。また、成蹊中学・高校に所属する私立の気象観測所(武蔵野市吉祥寺)では、富士山が見えるかどうかの研究を50年近く続けているので有名。鴨川先生との関係は、スプライトの研究つながりとのこと。

  • 富士山頂で観測をするのに,どのくらいお金がかかっているのですか.
  • 鴨川先生が富士山頂で観測を始めたきっかけは何ですか? 誰かのお勧めがあったのですか?
  • 雷の研究というのは,どのようなところに活かされているのですか?
  • 成蹊高校でやっている雷の観測と,富士山頂に置いた場合では,見える範囲など,どの程度違うのですか?
  • 雷雲から放電するときに,下向きに雷ななって落ちるのと,上向きのスプライトができるのと,どちらが先ですか?
  • 富士山頂の雷観測は,夏以外ではどのようにしているのですか?
高校生の質問も専門的な雷の研究のことから、山頂の施設の維持にかかる費用まで広範なものであったが、鴨川先生は山頂周辺の中継映像を見せながら、実にわかりやすく噛み砕いて説明していただいた。最後は「富士山頂では地上ではできない研究テーマが沢山ある。君たちが大学生になったときは、ぜひ富士山観測に参加してもらいたい」と高校生たちにエールを送った。

「高校生たちも大変刺激になったようで,ご教示頂いた内容をこれからのクラブ活動等で活かしていきたい」と担当の宮下先生からメールが届いた。山頂周辺の生中継を交えたインタラクティブなやりとりは臨場感もあり、山頂でのわれわれの活動の意義をわかりやすく伝える効果は十分あったのではないかと考えている。

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 山頂の様子を写す画面。事務局でも記録写真を撮影

8月11日の静岡新聞の社説に『旧富士山測候所 地球環境の研究拠点に』というタイトルで、会の活動意義と貴重な施設である測候所の維持活用を訴える意見が掲載された。そのためには「研究者側も地球環境を監視する観測所としての意義をわかりやすく伝えてほしい」というご指摘もあった。今回のような「伝え方」もその一つのヒントになりうるのでは、と思った次第である。

参加いただいた高校生の皆様、指導にあたられている宮下先生、山頂で撮影を担当していただいた山頂班の皆様のご協力に対して感謝申し上げます。

(注1)今回使用したツールはURL発行のみでビデオチャットができるappear.inというビデオ会議システム。クラウドで無料サービスとしてはSkypeが有名だが、登録設定などが面倒なのに比べ、こちらのサービスはわずらわしい事前登録が一切いらない。場所の都合で対面での会議がなかなか難しい場合など、活用範囲はいくらでもありそうだ。

(注2)本事業は「2017年度東京ガス環境おうえん基金「スタートアップおうえん」:富士山頂から地球環境問題の最先端を学ぼうプロジェクト」助成を受けて実施しています。