DSC_2097tori
去る6月3日(日)NPO法人富士山測候所を活用する会総会後の1時間、東京大学大学院教授・理研香取量子計測研究室の香取秀俊先生をお招きし、特別講演会「時空のゆがみを見る時計」が催されました。講演会には会員のほかに、東京理科大学や東京学芸大学の学生等を含め約50名の聴衆が熱心に聞きいりました。
一般人だったら日常それほどは気にしていない時計の精度、またもっと気にしていないであろう相対性理論、それらはGPS等の測位衛星で、自分たちの時刻と位置を決定するのに共に重要な役割を果たしてくれることから香取先生の講演は始まります。

測位衛星にはセシウム原子時計が内蔵され、相対性理論(高度の違いで時間の進みが変わる)を考慮して、現代では時刻と位置を決定するのが当たり前になっています。位置を知るといえば、標高を知ることも重要なこと。「標高を測ることの面白さ」に始まるお話の枕には、伊能忠敬の地図への言及もありました。

DSC_2102トリミング


日常にある高精度時計の誤差はどの程度でしょうか?
高精度と言われている時計は通常年差10秒程度です。この誤差は

          
10s/year = (10 s)/(60×60×24×365 s)3x10-7(1年に10秒の狂い)

と我々にとっては非常に高い精度に思えます。
しかし、現在「秒」の定義の基本となっており、測位衛星にも内蔵されているセシウム原子時計の精度は
 ≒ 10-15 (3000万年に1秒の狂い)
となると、先ほど話をした時刻、位置決定が人工衛星からでき、相対性理論を考えるようになってくるわけです。これでも十分だと思いきや、香取先生の発明した光格子時計では
 ≒ 10-18 ( 300億年に1秒の狂い)
と宇宙誕生の歴史(138億年)の倍の時間があっても1秒しか狂わないという信じられない精度になってきます。となってくると、1秒という定義が原子時計で行われているものから、いずれはこの光格子時計がその役目を担うようになるだろうと考えられます。

DSC_2103x30

光格子時計は、ストロンチウムなどの原子をレーザー冷却による絶対0℃に近い、0.0000001 Kで冷やし、格子状になったポテンシャルにこの原子を閉じ込めこのポテンシャルにトラップされた原子の励起と脱励起の振動で高精度の振動を得ているようです。

時刻精度がここまでよいとなると日常の生活を変えるような応用をもたらすことができます。例えば、高度差を相対性理論から導出できるようになります。

同じテーブルに2台置いた測定器からのビートを共鳴させ、わずか2cmのズレなども計測できるという革新的技術、などなど。難しい概念と言葉が、香取先生のスライドを見ているとなんとなくわかったような気分になるから不思議でした。
「光格子時計でダークマターが分かるかもしれない」
「アインシュタインの相対性理論は大丈夫だろうか?」
「物理定数は本当に定数か?」
といった刺激的な言葉が飛び交い、司会の鴨川先生はじめ多くの聴衆が興奮の渦に巻き込まれました。

今年1月の「週刊朝日」で「次のノーベル賞候補はだれか?特集」に選ばれた香取先生ですが、ここまで
門外漢の人たちでもわからせてしまった圧倒的講演でした。
(広報委員会)