9月21日の本ブログでご紹介した鈴木智幸博士の次の論文が同じくAtmosphere誌に10月6日付けで掲載受理になりました。

富士山頂の旧測候所庁舎内で作業する鈴木智幸博士Suzuki T, Kamogawa M, Fujiwara H, Hayashi S. Temporal and Spatial Evolution of Precipitation under the Summer Sprite Parent Mesoscale Convective Systems in Japan. Atmosphere. 2022; 13(10):1661. https://doi.org/10.3390/

以下鈴木博士による簡単な論文の説明です。
雷雲起源の放電活動は雷雲上空でも発生しており、総称して高高度放電発光現象と呼ばれている。2013年7月22日に富士山山頂から初めて、雷雲内の大きな正電荷の中和に伴い発生する巨大な高高度放電発光現象であるスプライトが6事例撮影された。これらのスプライトは、大規模に組織化された雷雲群であるMCS(メソ対流系)の層状域と5例が、対流域と1例が関連している可能性が示唆された。
スプライトの原因となった層状域の電荷は、層状域内の広い領域で作られているといわれているほか、対流域起源の降水粒子が層状域に移流してその原因となっていることが指摘されており、広大な領域で電荷分離が起こっていることが推測される。電荷を担っているのは、雷雲内の大量の降水粒子であることから、MCS下での地上降水量の時系列にはスプライトの発生と関連するシグナルがみられるのではないかと推測し、MCS全体のレーダーエコーから推定された降水量を適当にカテゴリー分けし、その時系列とスプライトの発生時刻を比較した。
その結果、この事例では、8mm/hを境に降水量時系列の特性が異なり、8mm/hよりも降水量が小さいときには、降水時系列にピークが2つあったのに対して、8mm/h以上では、5例のスプライト発生直前に非常に大きな降水量のピークがみられたことから、8mm/hを閾値として、降水量が大きい場合を強い降水、小さい場合を弱い降水と定義して、全降水量に対してどの程度の比率を占めているかを求めた。全降水量に対する強い降水の変化の時系列とスプライト発生時刻を比較したところ、強い降水のピーク後20分以内にスプライトが発生していたことか分かった。
また、層状域で発生した5例のスプライトに対応するMCS内の強い降水量に関する最初のピークは、降水量の増加開始から約80分、対流域付近で発生した1例のスプライトに対応するMCS内の強い降水量に関するピークは、約30分であった。層状域の電荷分離はゆっくりとしており、対流域では比較的速いと考えられることから、両者の違いは、主な電荷分離が異なっていることが示唆された。
なお、この研究は富士山環境研究センターの藤原博伸研究員や本NPOの鴨川仁専務理事も共著者です。ますます、これからの研究の発展が楽しみです。
(広報委員会)
2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。
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