前回の地震観測網のブログ(23-4)で、地震活動そのものが近年活発になったのでは無いという事をお伝えしましたが、今回は地震の空間分布について解説したいと思います。
 次の図は日本列島およびその周辺のプレート分布です。日本列島は4つのプレートに囲まれています(ユーラシアプレート、北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート)。

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 この図は、多分日本で初めて垂直方向の誇張をせず、実際のプレートの沈み込みの角度を表現したものです。私どもが調べた限り、気象庁の図も、地震調査研究推進本部の図も沈み込むプレート角度が急すぎるのです。
 気象庁のウェブサイトでも解説されていますが、現在世の中に存在する図はすべてこのような角度でプレートが沈み込んでいる図です。この角度で沈み込んでいますと、紀伊半島近傍で深発地震は発生する事は出来ません。


 プレートテクトニクスそのものについては、機会を改めて解説したいと思います。最近は地学を高校で履修できない高校が多いですが、そのような高校の学生さんも、最低限地球科学分野では次の2つの単元を学ぶ事になっています。1つ目が「天動説・地動説」であり、もう一つが「プレートテクトニクス」なのです。プレートテクトニクスはいまや地球科学分野では”公理”とも言えるものになっているのです。

 次の図が日本列島およびその周辺の地震の分布です。2000年から2022年までのマグニチュード3以上の全ての地震を図示してあります。色の違いは地震が発生する深さの違いを示しています。

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 この図の中の四角で囲った領域のA-Bに沿って投影した断面図を見てみましょう。地震が発生する深さが日本海(ユーラシア大陸側)へ向かって深くなっている事がわかると思います(深発地震面の発見)。

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 深発地震面は、断面図上に震源分布をプロットしていくと確認できます。これを1927年に初めて発見したのが初代気象庁長官であった和達清夫(1902-1995)でした。そして、1930年代には日本の地震学研究者の間では広く認知されるようになっていました。
一方、欧米ではほぼ同時期にアメリカのヒューゴー・ベニオフ(Hugo Benioff, 1899-1968)がやはり観測結果から深発地震の存在を予見していました。

 そのため、深発地震面は外国では「ベニオフ帯」と呼ばれるようになりました。しかし、実際の発見は和達が少し早かったのです。そのため、この1月に93歳で他界された長尾の指導教官でもある上田誠也先生が、国際会議で和達先生の功績を称えるため、今後深発地震面を「和達ーベニオフ帯」と呼ぶようにしようという事を繰り返し発言されました。その結果、今では欧米でも「Wadati-Benioff zone」という名前が定着したという事がありました。 
(文責:長尾年恭)

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  1月19日に93歳で逝去された上田誠也東大名誉教授(2003年撮影)

 1月19日の多くの新聞ではプレートテクトニクス研究の第一人者・上田誠也東大名誉教授の訃報を載せていました。上田先生は東大退官後東海大や理研に長く務められ88歳まで科研費Cが採択されるような精力的な研究を続けられたとか。長尾理事と鴨川専務理事はとともに上田先生のお弟子さんでした。
本NPOにとってもご縁の深い上田先生のご冥福を心からお祈りいたします。

(広報委員会)





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