3月6日でトルコ・シリア国境付近で発生した地震から1ヶ月が経過しました。最終的に死者が5万人を超えるという大変大きな人的損失を伴う地震となってしまいました。

 今回発生した地震は、陸域で発生する地震としては最大級と考えられるものです。というのは、ほとんどの巨大地震はプレート境界、つまり日本海溝や南海トラフのような沈み込み帯で発生します(同様なものが南米・チリ 沖で発生する地震や2004年のスマトラ島沖地震)。

 換言すればプレート境界が海ではなく、陸の下にある時にマグニチュード8クラスの地震が発生する可能性が出てくるのです。次の図は1980年以降に発生したマグニチュード5以上の全世界の地震を図示したものです。ほとんどの地域で面的ではなく線状に発生している事がわかります。これがプレート境界なのです。

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 この地震の分布を元に決めたプレート境界を模式的に示したものが次の図となります。

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 ご覧になってお分かりになるように、トルコを含む中東地域には、内陸地域にプレート境界が存在しています。そのため、陸域ですが、いわゆる沈み込み帯で発生するようなマグニチュード8クラスの巨大地震が発生したのです。ちなみにインド北方で地震が線状ではなく、かなり面的に広がって発生しているのは、インド亜大陸がユーラ シア大陸に衝突した事が原因です。その衝突の影響が面的な地震の発生という形でユーラシア大陸内部まで出ているのです。ヒマラヤ山脈が世界一高いのも、このインド亜大陸とユーラシア大陸の衝突が原因なのです。

今回のトルコの地震で人的被害が大きくなった原因

 一般にこの規模の地震が発生しますと、厳しい基準によって建物に高い耐震性を求めている日本やカリフォルニアのような場所でも深刻な被害をもたらす可能性があります。トルコでは日本のような木造の低層住宅ではなく、5〜10階建ての鉄筋コンクリートの集合住宅のほうが一般的なのだそうです。そのため、ビルが倒壊するといわゆる”パンケーキ・クラッシュ”と呼ばれる建物がグシャっと潰れる破壊が発生し、命取りになるのです。
 情報によれば、トルコでも1990年代後半に新しい建築基準が設定され、それは2007年と2018年に改訂されたとの事です。問題はこの”建築基準がどれくらい守られていたか”という事なのだと思います。私が入手した情報によれば、トルコには”恩赦法”と呼ばれる法律があり、たとえ開発業者や個人が建築基準に違反しても、罰金さえ払えば違法建築物の事実上の認可を得ることができるそうです。さらに認可を受けた建物は将来に渡って検査不要となるため、無認可の改修を行うことが可能で、壁や柱を撤去してもそのまま使用できる状況なのだそうです。
 地震は天災ですが、死者が多く出た事は人災であったと言わざるを得ないと考えています。

(文責:長尾年恭)


(広報委員会)


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