2010年度富士山測候所 研究報告書(速報 その7)

氏 名:兼保直樹 Naoki KANEYASU
所 属:産業技術総合研究所 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology

共同研究者氏名・所属: 

片山葉子 東京農工大学

Yoko KATAYAMA Tokyo University of Agriculture and Technology

研究テーマ: 富士山頂における太陽光発電による地表オゾン観測のための予備的研究

(この研究は「富士山における排ガスフリーマイクログリッド構築の具体化に関する研究」の一部を構成する)

Preliminary study of surface ozone measurement at the summit of Mt.Fuji with a solar-powered instrument

研究結果:

   富士山頂で商用電源が使用できない夏季以外の季節を含めた通年観測のために、自立電源である太陽光発電パネルを用いた大気測定機器の運用の可能性を探るため、太陽光発電パネル(公称30W)×4枚によるオゾン計の運用実験を行った。太陽電池パネルは水平面に設置した(図1)。バッテリーには、冬季の運用を想定して南極でも使用されている耐低温モデル(サイクロンG)×2個を使用し、屋外に置いた防水ボックス内にオゾン計とともに設置した(図2)。


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図1 6t水槽上に水平設置された太陽光発電パネル      図2 6t水槽脇に置いた防水箱内に設置されたオゾン計・バッテリー・コントロールユニット




   7/21日の運用開始から8/6までは、バッテリーによる電力供給を節約するため間欠タイマーによりオゾン計の動作を毎2時間のうち1時間だけとし(1日12時間運転)としたところ、比較的好天が続いたこともあり、全期間でオゾン計は停止することなく稼働し、かつ、2時間に1回のデータであっても、オゾンの日内変動をある程度再現できることが判明した(図3)。



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図3 山頂で測定された地上オゾン濃度の時系列





   8/6~16までは、間欠タイマーを外してオゾン計を連続運転とし、どのような状況まで停止せずにオゾン計が稼働するかのテストとした。この期間、天候が比較的悪く、気象庁測定の日照時間がゼロの日が2日続くと、バッテリー電圧は充放電コントローラーの保護回路が働く11.5Vを切ることが生じ(図4)、これによりオゾン計も2日半程度停止した。

最後の8/16~23日までの期間は、充放電コントローラーのバッテリー保護回路をバイパスして、バッテリー電圧が何Vまで低下したらオゾン計が停止するかを調べるテストも兼ねた運転を行った。ところが、この期間は好天が続き、連続運転を行ってもバッテリー電圧は未明の11.8Vまでの低下で止まっており、オゾン測定に欠測は生じなかった。d6b0c27d.png

図4 オゾン計・太陽光発電パネルに接続されたバッテリーの電圧と日照時間の時系列





以上より、(1)本テストでは太陽光発電パネルの発電量に比べてバッテリーの容量が少なかったこと、(2)このため、今後地上で行う冬季のテストにはバッテリー容量を増やして非晴天時の続く条件に対する動作をテストすべきこと、(3)1/2の時間の運転でも、オゾンの日内変動はほぼ再現可能であること、などが判明した。

 (*)この研究の一部は新技術振興渡辺記念会からの受託事業として行なわれた。

英文:

Surface ozone monitoring without using commercial power supply was tested at the summit of Mt. Fuji.  An ozone monitor was operated powered by photovoltaic cell and seal batteries with several operation scenarios.  With the solar-powered system, time series of ozone concentration was successfully obtained during the summer campaign.  Based on this result, additional apparatus and the improvement of the solar power system is to be designed for constructing the year-round ozone monitoring system in the near future.

研究成果の発表:

 本研究は新たな科学的知見を取得することを目的としたものではないため、現在のところ学会での発表予定はない。

(参考)
関連プロジェクト:富士山頂における排ガスフリーマイクログリッド構築の具体化に関する研究
関連ブログ:太陽光パネルが取り付けられました。