9016e4a9.jpg


今年の御殿場基地。




御殿場基地は、第一義的には研究者や山頂班の登山開始前の必要物資の集積、買い出しなどのベースキャンプとしての役割を担っていますが、そのほかに山頂と結ぶ無線LANの八木アンテナの設置場所としての役割があります。このため、基地の場所を選ぶときは、部屋あるいはベランダから富士山頂に設置したアンテナが見通せることが必須条件になり、地域はかなり限定されます。


今年の御殿場基地には、新たな役割・機能も追加されました。観測拠点としての役割です。


ひとつは大気電場の測定。フィールドミルと呼ばれる電場測定機器がベランダの手すりに取り付けられています。回転遮蔽板によって周期的に外部に露出するセンサー部に大気電場で電荷を誘導させ電場を測定するもので、このデータは時系列を見ていると雷雲接近が非常によく分るそうです。御殿場基地、太郎坊、山頂に設置したフィールドミルのデータはリアルタイムで山頂班へも提供すべく準備しています(鴨川先生:東京学芸大)。


もう一つは、二酸化炭素の測定。ベランダから取り込んだチューブを室内に引き込み、押入れに設置したCO2計で測定しています(向井先生:国立環境研究所)。




御殿場基地は、山頂の富士山測候所に負けず劣らず、多目的に活用されています。



[関連プロジェクト]
宇宙線被ばく線量評価の信頼性向上を目的とした富士山頂での放射線測定

我が国で実施されている航空機乗務員の被ばく線量評価の信頼性を高めるため、日本最高峰に位置する富士山測候所において宇宙線を常時監視する体制を構築し、そのデータから上空の線量を迅速かつ正確に推定できるようにする。本年度は、昨年4カ月の連続データ取得に成功した経験を踏まえ、バッテリーの増強などを図ることで通年観測の実現を目指す。又、雷雲の活動に伴う高エネルギー放射線の発生機構についても考察する。

富士山頂における無人の継続的二酸化炭素濃度測定

2009年より、NIESが開発した遠隔地用自立電源型自動二酸化炭素濃度測定システムを用い、富士山頂にて大気中二酸化炭素濃度の長期観測を行っている。電源自立型の衛星通信システムを備えた耐低温性の小型の装置である。観測されたデータは毎日定時測定後につくばのNIESにe-mailで送信されている。2010年の夏季より2年目の無人の越冬観測に突入したが、通信やメンテナンスの方法など更に改善が期待される部分を残している。観測を継続しながらデータの分析を行うと同時に、長期的観測を見越したシステムつくりを進めていく。測候所の開所中はボトルサンプリングによる大気採取も行い、測定装置により得られたデータとの比較を行う。




 

477f0882.jpg


御殿場基地事務所内で無線LANの設置調整にあたる放医研グループ。




 


287a715d.jpg

左はベランダに取り付けた電場計。上部にCDを一回り大きくしたような円盤状のものが高速回転しています。

右は富士山頂に向けた無線LANのアンテナ。細い透明のビニールチューブはCO2計に接続されています。



4fa5c7fb.jpg



押入れに設置されたCO2計。