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岩坂先生による特別講演会「3000m上空で見つかった納豆菌について思う:北東アジア域の大気監視・管理

5月13日(日)富士山測候所を活用する会の総会に引き続き、15:40から東京理科大学総合研究機構山岳大気研究部門との共催による特別講演会が行われました。

「3000m上空で見つかった納豆菌について思う:北東アジア域の大気監視・管理」という大変興味深いタイトルで岩坂泰信先生(前金沢大学フロンティアサイエンス機構特任教授)が約1時間にわたってご講演。聴講者は37名で満席となりました。

バイオエアロゾルの長距離輸送という大気科学のホットな話題を金沢大学で製品化した納豆と絡めて、ユーモアたっぷりのわかりやすいお話でした。講演後の質問では、黄砂に微生物が付着するメカニズムや納豆の味に関する質問なども出て、楽しく有益な講演が終わりました。

ちなみに、「いちばん美味しかった納豆はどこで採取された納豆菌か」との質問には、「立山上空」とのこと。大陸からはるか上空を渡って飛んでくるロマンいっぱいの納豆菌・・・その納豆を賞味してみたい気持ちに駆られたのはわたしだけでしょうか。


【講演概要】

金沢大学の研究・教育活動の中で能登半島が大変重視されている。能登は海流、風系、水循環の面からみて大気科学や大気環境を勉強するものにとって大変魅力的な所である。能登で観察される黄砂は微生物の運び屋と考えられる。

バイオエアロゾルを考える上で大切なことは、滞空中の温度の問題である。例えば微生物については1972年-2~-4℃にが報告され、2007年に-7~‐11℃に耐える微生物が報告されている。一方、上空の鉱物は-13~-20℃であり、こちらのほうが低い。

バイオエアロゾルの対流圏広域拡散による環境影響調査から、グローバルスケールで砂塵嵐があった時に空気中の微生物が増加することが知られている。

能登半島の人口2万の珠洲市に観測サイトを置いて観測し、同時に中国敦煌市にも観測サイトを置いている。気球を使って採取した両市上空のエアロゾルサンプルのDNA分析を行っている。微生物の種を同定すると、納豆菌と近縁のバチルス属がたくさん含まれている。

以上をまとめると①バチルス属がしばしば見つかる、②黄砂イヴェント時は大気中に微生物濃度が上昇、③黄砂に微生物が付着した粒子は見つかるが、微生物単独では検出されていない。"


なお、金沢大学の生協で黄砂試料から分離したSi-37株より「すかいなっとう」「フロンティア納豆」など・・・と名付けて売っている。



講演資料ダウンロード: