福島第1原発停電:小動物の感電が原因か

毎日新聞 2013年03月20日 20時44分
配電盤内部で見つかったすす。中央の計器にネズミのようなものが接触したとみられる=東京電力提供

福島第1原発で停電が起き、使用済み核燃料プールの冷却装置など9設備が停止した問題で、東京電力は20日、各設備に電力を分配する仮設配電盤の一部に焦げた跡があり、真下にネズミのような小動物の死骸が見つかったと発表した。小動物が高電圧部分に接触、感電してショートし、停電した可能性があるとみて調べている。

昨年8月、夏期観測真っ最中の富士山測候所でも、同じような事故が発生した。

発生したのは、2012年8月15日21時43分。山頂庁舎が突然停電になった。山頂班生越さんから御殿場基地の村上さんに電話、村上さんからわたしに電話があったのは22時前。

直ちに電気主任技術者の大胡田さんと関電工の井上さんに電話。もう時間も遅かったので、翌朝の対応をお願いした。この時点で配電盤のブレーカーが落ちていることを想定し、最初に調べる箇所は麓の太郎坊にある1号キューピクルとしていた。

翌朝8時、井上さん等が沼津を出発。現地のキュービクルの扉を開けると強烈な鼻を突く異臭がし、黒焦げになった5、6センチの小さなネズミを発見。さらに近くには衝撃で吹き飛ばされてもう一匹のネズミの死骸があり、さらにもう一匹生きているネズミがいたが逃げ出したとのこと。

山頂班と連絡をとり、落ちていたブレーカーを投入して電気は回復。この時すでに発生から12時間を経過しており、測候所室内の温度は8度まで低下していたという。配電盤にはネズミは侵入できない仕様になっているとのことであるが、それを収納しているキュービクルの扉が凹んで変形し、小動物が出入りできる隙間ができていたらしい。応急措置としてこの隙間を塞ぎ、対策は今年の夏期観測前に扉を交換することにした。

この事故の影響は山頂の富士山測候所の停電だけ(*)であり、復旧も翌朝に出動してもいいというのんびりした対応で済んでいた。これに対して今回の東電の事故は、まかりまちがえば重大事態で極めて緊急性が高い。原因究明にかかった時間が大きすぎるのではないか、というのが正直な気持ちである。それとも、原発がネズミにやられたというのは格好がつかないので、どのように説明するかに手間どったのではないかとも勘ぐりたくもなるのである。なにしろ、重大な「事故」を「事象」と言ってはばからない東京電力。「ネズミ」と言う前に「ネズミらしい小動物」と言うことにしたということか。

巨大原発システムと富士山を停電させたネズミ。たかがネズミと決してあなどることができないことを改めて思い知らされたのである。

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扉の歪みの隙間からネズミが入り込んだキューピクル。この写真の撮影は2011年夏。

(*)厳密には、山頂の環境省バイオトイレも同じ送電線から分岐しているので影響を受けている。

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