太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 スタッフブログ

2011年07月

2006年から職場の筑波大学農林技術センター八ヶ岳演習林でヤマネの巣箱調査を行っている杉山さん。

ヤマネは夜行性で日中に目撃できることは極めて少なく、また一年の約半分を冬眠するので、さらに人目につかない動物だそうだが、ヤマネの目撃情報をこれまで500例ほど収集。その中で最も驚く発見事例の一つが「富士山頂のヤマネ」だったという。

これまで富士山頂では、気象庁富士山測候所の観測員の方がヤマネを度々目撃されていたそうだが、関連書籍の中でも記述のみ。しかし、昨年(2010年)、富士山測候所を活用する会の村上祐資さん(東京大学)がヤマネを数日間にわたり目撃・写真撮影し、ご自身のブログ「富士山日記」に載せたのがきっかけで、村上さんに富士山測候所を活用する会の紹介を受け、今夏の観測研究に公募参加されました。

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昨年(2010年)8月に富士山測候所で目撃されたヤマネ(村上さんのWebアルバムより)

「樹木等が無い富士山頂でヤマネが目撃されるのは本当に不思議なこと。人為的にヤマネが山頂に運ばれるのか?荷揚げ時にヤマネが紛れ込むのか?ヤマネ自身が移動したのか?山頂に生息しているのか?本当にミステリー。工業内視鏡でヤマネが潜んでいそうな岩場の隙間を覗いたり、暗視鏡による測候所周辺・内部の夜間観察、ヤマネの餌となる昆虫類のライトトラップや富士開山期間の山頂滞在者(山小屋管理者他)の聞き取り調査を行ってみたい」ということです。


そんな杉山さんの第2回の登山レポートが届きました。果たして謎は解けたでしょうか?それとも・・・

杉山さんは8月中にさらに2回の登山を予定されています。

7月26日~28日にかけて再び測候所の何箇所かにヤマネの餌(油揚げ・イモケンピ)を仕掛け様子を見ましたが、残念ながら食べた様子はありませんでした。滞在期間中は富士山のアメダスデータを見ましても最高気温5.8最低気温0.8℃と気温が低く、ネズミの気配すらない状況でした。測候所外回りも天候に恵まれず探査できずにいます。

今回の山頂滞在でわかったことはつぎのとおりです。

1.ブルの荷揚げの様子から、振動が激しくヤマネが荷に潜り込むのは難しい。
2.登山者のリュックもファスナー開閉がしっかりしていて潜り込む隙間がない。
3.山頂はガスがかかることが多く、建物や岩場が結露で濡れて水分が確保できる。
4.山頂で見かけた昆虫類は少ないが、クモ・ハエ・アブ・テントウムシ等は見られる。
5.登山者の食べこぼしも余りない。

上記の事を考えますと、村上さんが目撃したヤマネは「何らかの目的」でヤマネが一時滞在した可能性が強いのではないかと感じました。しかしながらヤマネの行動範囲はオスで2haメスで1ha弱とされていますので、砂礫斜面をヤマネが登ってきたのかは不明です。

ますます謎が深まる感じですが、次回8月15日・16日再度餌を仕掛けて、ヤマネの痕跡を見つけてみたいと期待しているところです。

[関連プロジェクト]
富士山頂のヤマネ
富士山頂部では度々「ヤマネ」が目撃されている。これは山頂の山小屋への物資搬入時や登山者が関与した人為的移動が考えられる。富士山頂の過酷な環境では事実上ヤマネの定着が難しいと思われ、翌春まで生存できなかったヤマネの死骸が富士山頂に残っている可能性が高く、これまでどのくらいのヤマネが人為的に運ばれたか調査をする。

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赤外線センサーがヤマネをキャッチすると自動的にデジカメのシャッターが降りる仕掛け。手前はオトリの油揚げ・イモケンピ。

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杉山さんのブログ「ヤマネ生息調査」

ヤマネの文献調査として全国のヤマネ発見事例を収集し、ヤマネ生息確認情報・発見事例をGoogleマップ上に転載、ヤマネ生息分布地図として情報公開している。偶然にも貴重なヤマネ目撃事例を持っている方に、ヤマネの調査研究に携われる場、情報を共有できる場を提供するのが目的。




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今年の御殿場基地。




御殿場基地は、第一義的には研究者や山頂班の登山開始前の必要物資の集積、買い出しなどのベースキャンプとしての役割を担っていますが、そのほかに山頂と結ぶ無線LANの八木アンテナの設置場所としての役割があります。このため、基地の場所を選ぶときは、部屋あるいはベランダから富士山頂に設置したアンテナが見通せることが必須条件になり、地域はかなり限定されます。


今年の御殿場基地には、新たな役割・機能も追加されました。観測拠点としての役割です。


ひとつは大気電場の測定。フィールドミルと呼ばれる電場測定機器がベランダの手すりに取り付けられています。回転遮蔽板によって周期的に外部に露出するセンサー部に大気電場で電荷を誘導させ電場を測定するもので、このデータは時系列を見ていると雷雲接近が非常によく分るそうです。御殿場基地、太郎坊、山頂に設置したフィールドミルのデータはリアルタイムで山頂班へも提供すべく準備しています(鴨川先生:東京学芸大)。


もう一つは、二酸化炭素の測定。ベランダから取り込んだチューブを室内に引き込み、押入れに設置したCO2計で測定しています(向井先生:国立環境研究所)。




御殿場基地は、山頂の富士山測候所に負けず劣らず、多目的に活用されています。



[関連プロジェクト]
宇宙線被ばく線量評価の信頼性向上を目的とした富士山頂での放射線測定

我が国で実施されている航空機乗務員の被ばく線量評価の信頼性を高めるため、日本最高峰に位置する富士山測候所において宇宙線を常時監視する体制を構築し、そのデータから上空の線量を迅速かつ正確に推定できるようにする。本年度は、昨年4カ月の連続データ取得に成功した経験を踏まえ、バッテリーの増強などを図ることで通年観測の実現を目指す。又、雷雲の活動に伴う高エネルギー放射線の発生機構についても考察する。

富士山頂における無人の継続的二酸化炭素濃度測定

2009年より、NIESが開発した遠隔地用自立電源型自動二酸化炭素濃度測定システムを用い、富士山頂にて大気中二酸化炭素濃度の長期観測を行っている。電源自立型の衛星通信システムを備えた耐低温性の小型の装置である。観測されたデータは毎日定時測定後につくばのNIESにe-mailで送信されている。2010年の夏季より2年目の無人の越冬観測に突入したが、通信やメンテナンスの方法など更に改善が期待される部分を残している。観測を継続しながらデータの分析を行うと同時に、長期的観測を見越したシステムつくりを進めていく。測候所の開所中はボトルサンプリングによる大気採取も行い、測定装置により得られたデータとの比較を行う。




 

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御殿場基地事務所内で無線LANの設置調整にあたる放医研グループ。




 


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左はベランダに取り付けた電場計。上部にCDを一回り大きくしたような円盤状のものが高速回転しています。

右は富士山頂に向けた無線LANのアンテナ。細い透明のビニールチューブはCO2計に接続されています。



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押入れに設置されたCO2計。








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山頂に設置したカメラが捉えた映像です(7月22日午前5時30分撮影)


2011年7月22日4時30分発表 大型の台風6号は、22日3時には鳥島の東南東約180kmにあって、南東へ毎時15kmで進んでいます。

富士山は台風一過。

21日から研究班も登山を再開しました。






大型台風6号は時速20キロと自転車並みというゆっくりした速度で現在、東海地方の南の海上を東に進んでいます。21日明け方にかけて、関東から東北を中心に大雨や土砂災害に十分な警戒が必要とのこと。


山頂では18日から風雨。研究者も下山を1日早めるなどして18日からは山頂の滞在者もゼロ。登山者もほとんどなし。20日には、ついに庁舎の雨漏りが・・・。


19日、20日の予定はすべてキャンセルとなったため、御殿場基地ではその連絡調整の対応に追われました。すでに御殿場に到着した人や荷物もあり、最終的には延べ20人以上が影響を受けたことになります。しかし、ほとんどのグループは、21日(木)から予定をスライド調整して、登山の再挑戦が始まります。


山頂班の業務日誌は、この間の山頂の様子を的確に伝えてくれました。


 



7月17日(日)







本日は4時頃から夕方まで、測候所下の階段は終始途切れることなく行列でした。

雲もなく快適な登山日和。

明日から天候は下り気味ですね。

7月18日(月)







夜半から風が出始め、昼過ぎから風雨。建物の外はゴーゴーいっています。さすがに昼過ぎ以降は登山者はほとんど無し。

滋賀県立大学の2人は一週間の滞在お疲れ様でした。

早稲田大学の3名は(台風接近のため)風雨のなか、1日早い下山になりました。

庁舎内は雨漏り対策に追われています。

なでしこジャパンのみなさんも、大変お疲れ様でした。

そして、おめでとうございます。




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(写真左)一週間滞在した滋賀県立大の2人 (写真右)予定を1日早めて下山した早稲田大のチーム



7月19日(火)


本日は終日暴風雨、外を確認するだけで、出る気にはなりません。

さすがに登山者はいない模様でした。


[19:30現在の庁舎内室温]

1号庁舎2階: 22℃ 2号庁舎1階: 11℃

肌寒い気温です。


終日風が強く、南風を直接受ける仮設庁舎は時折揺れるよう。風の音がかなりうるさいです。馬の背は雨の流水で溝ができ、削れています・・・。

7月20日(水)


庁舎内も雨漏りが多くなってきました。

夕方までは風雨ともに強かったのですが、一時小康状態になりました。

しかし、夜になり風向きが東寄りに変わり、ふたたび強風です。

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7月20日には、ついに1号庁舎1階は雨漏り。



[関連プロジェクト]
富士山を観測タワーとした大気中水銀の長距離輸送に係わる計測・動態・制御に関する研究
富士山体を利用した自由対流圏高度におけるエアロゾルー雲ー降水相互作用の観測








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太郎坊での荷物の積み込み(7月11日)

 



名古屋地方気象台が7月9日(土)静岡県内の梅雨明けを発表。

昨年よりも10日早く、平年に比べると13日も早いという。

 

7月11日(月)、この梅雨明けをまっていたかのように、富士山測候所は開所しました。

梅雨が明けてからの開所はおそらく初めて?昨年は暴風雨の悪天候の中で開所を迎えたのがウソのようです。

 

翌12日(火)から研究班の観測機材の荷上げがはじまり、いよいよ今年の夏期研究観測も本格的に幕開け。

この一週間は最も活気づく期間です。

 

そして、山頂班から続々と下山の写真がメールで届いています。

 

「山頂は梅雨明けから実に穏やかで、今のところ雷も来ていません。無風快晴で暑いくらいですが、ニュースで聞く下界の暑さに比べれば、とても快適です。」

 

今日から始まる54日間の夏期研究観測2011。

山頂での活動が安全で、実り多いものでありますように。

 

 

 



 


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 首都大東京チームと早稲田大チーム(7月13日下山開始前)


  

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早稲田大チーム(7月14日下山開始前)


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東京理科大チーム(7月15日下山開始前)



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東京学芸大チーム(7月15日下山)



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KDDIチーム(7月16日下山)


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早稲田大学チーム(7月16日下山)









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