太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 スタッフブログ

2011年09月


氏 名: 土器屋由紀子 Yukiko Dokiya     
所 属:  NPO法人富士山測候所を活用する会 NPO Valid Utilization of Mt. Fuji Weather Station

共同研究者氏名・所属:

兼保直樹、加藤俊吾、保田浩志(NPO法人富士山測候所を活用する会)、佐々木一哉、安本勝(東京大学)

Naoki Kaneyasu,  Shungo Kato,  Hiroshi Yasuda (NPO Valid Utilization of Mt. Fuji Weather Station),  Kazuya Sasaki,  Masaru Yasumoto(the University of Tokyo)


研究テーマ:
通年オキシダントデータの無線LANを用いた国際ネットワーク配信に関する研究(*)新技術振興渡辺記念会受託研究

Research on the International distribution of trans-boundary oxidant concentration through wireless LAN from Mt. Fuji



研究結果:

2010年度の調査研究により、富士山測候所屋外、水槽上に設置した4枚の太陽光パネルにオゾン計を接続して、連続観測を成功させたが、そのデータを無線LANで送信するには、雷被害を受けない形で屋内と接続する必要がある。このため、本年は富士山測候所接地系のについて安全な接続を追及するための調査を行った。その結果、富士山測候所避雷上の特徴と問題点として、①接地状態と落雷電流路 ②ファラデーケージ(FC)の破れ、③電源設備の状況が明らかになり、特にFC破れ箇所のサージ電圧対策が重要であることが模擬体系を用いた実験から明らかになった。今後の現地での対応として、(1)FC破れ箇所のサージ電圧対策、(2)建屋外ケーブルの雷対策が必要であるため、本年行った調査を踏まえて具体的な方策を提案する。

また、通年観測の可能性を追求するため、フレキシブル太陽電池を接着剤で固定して発電量のモニターを開始している。





英文:



In the research performed in 2010, a long term oxidant measurement by an independent power supply utilizing 4 solar panels were proved to be successful. However, for the connection with the indoor wireless LAN for the purpose of international distribution of real time data of oxidant, the protection of lightning strikes for the outside experimental instruments are necessary. Thus in this year, investigations were performed to clarify the earthing systems of the weather station and the characteristics of electric phenomena at Mt. Fuji. As the results, the following characteristics and problems are found: ① The electric current path of lightning and the earthing system, ② The damage of Faraday Cage, ③ The situation of electrical installation. Especially electromagnetic shielding at the Faraday Cage damage is important, which has been clarified from experiments. For the further operation at the summit, some practical suggestions will be proposed on the basis of the investigation of this summer.

 At the same time, a test for an year round monitoring power generation using an flexible solar panel has been started.

 

研究成果の公表:

(1)安本勝,佐々木一哉,高橋浩之,中村安良,大胡田智寿,土器屋由紀子:「富士山測候所のための落雷対策方法の評価」,平成23年電気学会基礎・材料・共通部門大会,Ⅷ-1,200-205(2011年9月).

(2)電気学会投稿中

(参考)プロジェクト計画:

通年越境オキシダントの無線LANを用いた国際ネットワーク配信に関する研究


昨年度までの研究成果を踏まえて、三井物産環境基金を中心に富士山頂において独立電源として太陽光を利用したオキシダント通年観測のためのシステムを設置する。この研究に協力し得られたデータの、無線LANを用いて国内外に配信する。特に国際ネットワーク地点を増強し、データの検証を行い、富士山頂の観測地点としての有用性を明らかにする。





374c8f91.gif


左から田中章裕さん(東京学芸大学教育学部4年)鴨川仁助教、片倉翔さん(同4年)




富士山測候所での夏期観測には、昨年は過去最高の延べ476人が、また、今年は昨年より20%も少なくなりましたが延べ373人が参加しました。この中には大学の先生と一緒に参加する研究室の学生も多数含まれており、その成果を学会等で発表されています。昨年と今年の参加者の中から、栄えある賞を受賞されたといううれしい知らせが届いていますのでご紹介します。


日本科学技術振興財団の文部科学省委託事業「はかるくん」研究作品一般・教育部門で入選
東京学芸大学教育学部自然科学系物理科学分野 鴨川仁助教、自然環境科学専攻4年田中章裕さん、同専攻4年片倉翔さんの3名が、日本科学技術振興財団の文部科学省委託事業「はかるくん」研究作品一般・教育部門に 「富士山山頂で宇宙、大地、雷からの自然放射線を測定してみる」のテーマで入選しました。

http://www.u-gakugei.ac.jp/news/index2.html


日本大気電気学会第84回研究発表会で学生発表賞を受賞

東京学芸大学教育学部佐藤良衛さん(現在都立高校の教員です)が、日本大気電気学会第84回研究発表会で学生発表賞を受賞しました。佐藤良衛さんは同研究室の卒業生で、昨年度の夏期観測2010に参加、現在は都立高校の教員です。
佐藤良衛(東京学芸大)、木村嘉尚(極地研/東京学芸大)、阪井陸真(東京学芸大)、藤原博伸(女子聖学院高校)、稲崎弘次(NEC システムテクノロジー)、山本勲(岡山理科大)、鳥居建男(原研)、保田浩志(放医研)、鴨川仁(東京学芸大)フィールドミルによる晴天日大気電場計測の一考察


第52回大気環境学会でポスター発表優秀賞を受賞

早稲田大学理工学部田原大祐さんおよび小林由典さんが、9月14日長崎で開催された第52回大気環境学会年会でそれぞれポスター発表優秀賞を受賞しました。おふたりは今年度の夏期観測2011に参加されました。
田原大祐,大河内博,丸山祥平,皆巳幸也,緒方裕子(2011)富士山体を利用した雲水化学特性とその濃度支配要因の解明 ( 3 ),第52回大気環境学会年会(長崎県, 2011年9月14日).
小林由典,大河内博, 緒方裕子,皆巳幸也,名古屋俊士(2011)有害有機汚染物質の動態解析と降水洗浄機構 (9),第52回大気環境学会年会(長崎県, 2011年9月14日)






氏 名: 大河内 博   Hiroshi Okochi     
所 属: 早稲田大学 理工学術院 School of Science and Engineering, Waseda University 

共同研究者氏名・所属:

緒方裕子(早稲田大学 理工学術院)

皆巳幸也(石川県立大学 生物資源環境学部)

片山葉子(東京農工大学 農学研究院)

米持真一(埼玉県環境科学国際センター)

竹内政樹(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)

香村一夫(早稲田大学 理工学術院)

Hiroko Ogata (School of Science and Engineering, Waseda University)

Yukiya Minami (Faculty of Bioscience and Environmental Science, Ishikawa Prefectural University)

Yoko Katayama (Graduate School of Agriculture, Tokyo University of Agricultural and Technology)

Shin-ichi Yonemochi (Center for Environmental Science in Saitama)

Masaki Takeuchi (Institute of Health Biosciences, The University of Tokushima Graduate School)

Kazuo Kamura (School of Science and Engineering, Waseda University)

       

研究テーマ:
富士山体を利用した自由対流圏高度におけるエアロゾルー雲ー降水相互作用の観測

Observation of aerosol-cloud-precipitation interaction in the free troposphere using Mt. Fuji



研究結果:

自由対流圏高度に位置する富士山頂で2011年7月13日から8月25日までエアロゾル(水溶性成分,多環芳香族炭化水素,フミン様物質,球状炭化水素,黄砂),ガス(酸性ガス、揮発性有機化合物),雲水,雨水の観測を行い,日本上空のバックグランド濃度の測定を行った.また,昨年度,一昨年に引き続き、越境汚染あるいは夏季の斜面上昇流に伴う山麓の汚染気塊(国内汚染)の流入に伴うバックグランド大気汚染の特徴およびエアロゾルー雲ー降水相互作用をフィールド観測により検討した.また,自由対流圏高度におけるバイオエアロゾルの存在量,起源および挙動の解明を試みた.

図1には,2006年から2011年までの夏季集中観測期間中に富士山頂で採取された雲水中化学成分総イオン濃度とその組成,pHおよびNO3-/nss SO42-(以下,N/S比)比の経時変化を示す。総イオン濃度は2009年から2011年まで200 ?eq/L以下を推移しており,平均組成も類似していることから,夏季の富士山頂における雲水の総イオン平均濃度と平均組成と考えることができる. 2007年以降,N/S比は0.75を推移しており,雲水の酸性化には硫酸の寄与が大きいことを示唆している.現在,この他に得られた試料の分析とデータ解析を行っている.



ceb4acf8.jpg





英文:



  We simultaneously collected aerosol, gases, and cloud water at the summit of Mt. Fuji, which is located in the free troposphere, from 13 July to 25 August 2011.  Our objectives were to elucidate background concentration levels of gases (acidic gases and volatile organic compounds), aerosol (water-soluble components, polycyclic aromatic hydrocarbons, humic-like substances, spheroidal carbonaceous particle, yellow sand), cloud water and rainwater in the free troposphere over Japan, to make clear the characteristics of background pollution in the air mass by the long-range transportation or upslope wind from the base of the mountain during the daytime in the summer, and to ascertain aerosol-cloud-precipitation interactions.  In addition, the concentrations of bioaerosol were also determined in the ambient air at the summit of and on the foot of Mt. Fuji and their sources were discussed.  Chemical and biological analyses of the collected samples are now ongoing. We are also analyzing the observation data.


研究成果の公表:

<口頭発表>
田原大祐,大河内博,丸山祥平,皆巳幸也,緒方裕子(2011)富士山体を利用した雲水化学特性とその濃度支配要因の解明 ( 3 ),第52回大気環境学会年会(長崎県, 2011年9月14日).(*)田原大祐氏はポスター発表で優秀賞を受賞しました.
小林由典,大河内博, 緒方裕子,皆巳幸也,名古屋俊士(2011)有害有機汚染物質の動態解析と降水洗浄機構 (9),第52回大気環境学会年会(長崎県, 2011年9月14日).(*)小林由典氏はポスター発表で優秀賞を受賞しました.

大河内博,皆巳幸也(2011)富士山の雲自由対流圏高度におけるガス-エアロゾル-雲相互作用の観測,第52回大気環境学会年会(長崎県, 2011年9月14日).

内野友徳,大河内博,緒方裕子,名古屋俊士(2011)富士山における大気中多環芳香族炭化水素の動態とその濃度支配要因(2),第52回大気環境学会年会(長崎県, 2011年9月14日).

米持真一, 梅沢夏実,王効挙,大河内博,名古屋俊士,小島雄紀(2011)サブミクロン粒子の特徴と磁気的性質を利用した新たな分析手法の検討,第52回大気環境学会年会(長崎県, 2011年9月14日).

関係報告

竹内政樹(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)富士山御殿場口太郎坊における酸性ガスの連続分析

(参考)プロジェクト計画:
富士山体を利用した自由対流圏高度におけるエアロゾルー雲ー降水相互作用の観測

雲はエアロゾルを凝結核として生成し,その成長過程で水溶性ガスを吸収する.雲粒径が臨界直径より小さければ,雲粒は消失して気相にエアロゾルを放出するが,この過程を通じてエアロゾル径を増加させるとともに,水溶性成分を増加させる.雲粒径が臨界直径より大きければ,雲粒はさらに液滴成長して併合衝突により雨滴となって地上に落下する.このエアロゾルー雲ー降水相互作用は,地球温暖化とその環境影響の将来予測の観点から注目されている.本研究では富士山測候所を活用し,様々な大気汚染物質のバックグランド濃度を解明するともに,バックグランド汚染の実態解明を行い,エアロゾルー雲ー降水相互作用の解明を試みる.






氏 名: 加藤俊吾   Shungo Kato       
所 属: 首都大学東京   Tokyo Metropolitan University   
共同研究者氏名・所属:  Jeeranut Suthawaree, 梶井克純(Yoshizumi Kajii)

首都大学東京(Tokyo Metropolitan University)  

       

研究テーマ: 富士山頂における一酸化炭素およびオゾンの夏季の長期測定

Longtime observation of carbon monoxide and ozone during summer at summit of Ft. Fuji



研究結果:
富士山頂において大気中の一酸化炭素(CO)およびオゾン(O3)の連続測定を行った。COは車の排気ガスなど燃焼の際に発生するため、汚染大気が輸送されてきている指標となる。富士山頂では太平洋から清浄な大気が輸送されるときには70ppb程度の濃度であるが、汚染大気の影響を受けているときには200ppb程度になることがあった。一方、O3は汚染大気が日射にあたることで化学反応を起こして生成する。汚染大気の発生源から富士山に輸送されるまで通常は十分に光化学反応を起こす時間があるため、COとO3の濃度変動は似たものとなっている。しかし、たとえば8月20日あたりはCOだけ高濃度となっており、O3が生成する条件が整わなかったと考えられる。また、7月22日あたりは逆にO3だけ高濃度となっているが、大気上方のO3濃度が高い大気の影響を受けていたと考えられる。

英文:
Atmospheric carbon monoxide (CO) and ozone (O3) were measured at the top of Mt. Fuji during summer in 2011. In most of cases, CO and O3 show similar variation. Around July 22, only O3 was high concentration. During that time, air at high altitude containing high O3 transported to Mt. Fuji.





d7ccde29.jpg



画像右下の+をクリックすると拡大できます↑




関連プロジェクト計画:
富士山頂における一酸化炭素およびオゾンの夏季の長期測定

富士山頂の測候所に一酸化炭素(CO)計およびオゾン(O3)計を設置し、これらの大気中濃度の連続測定を行う。COは汚染大気が輸送されてきているかどうかの指標となり、O3は汚染大気の光化学反応の進行度合いにつての指標となる。昨年までも同様な測定を行っており、年ごとの違いや経年変化について比較を行う。




5c851f6e.jpg
1号庁舎2階をぐるりと張った安全帯のフックをかけるロープ。

台風12号の接近を受け、予定を一日早めて9月1日(木)に測候所を閉鎖し終了した今年の夏期観測。これまで最長の53日間となった夏期観測を支えたのは、研究者や学生によるボランティアの活躍であった。

兼保先生(産総研)から一号庁舎の雨漏り部分にコーキング材により補修しようとメールで呼びかけがあったのは7月末のこと。数人が賛同し手を上げた。作業予定日の8月22日から24日はあいにく山頂の天候は悪く、強風と霧、雨でほとんど外に出られなかったものの、下山日の24日の朝は晴天となり、下山までのわずか3時間ほどの間だったが、専門家の指導を受けながら滋賀県立大の学生2人と一緒に補修を実施。

もう一つボランティアが活躍したのは、御殿場基地(研究者の登下山をサポートすべく御殿場市内に期間中確保した事務所)の宿直である。昨年までは期間中ひとりで担当してもらっていたが、今年は研究者のボランティアが約50日間にわたって交代で務めあげた。

研究者はこれまでは御殿場基地班のサービスを受ける側であったが、逆の立場でサービスする側に回ったことになった。入念な引き継ぎにもかかわらずトラブル続きであったものの、走りながら修正を重ねて何とか全ての日を有人対応した。ボランティアは研究者にとっての負担は大きいが、人出不足を補うとともに経費節減のためにも、さらに”自力たちでできる範囲はどこまであるか”を考えていくことが必要であろう。

「これまで、庁舎の補修は業者に発注というのが気象庁時代からの文化。何の疑問もなく思い込んできたが、通常の山小屋のように自分たちで出来る範囲は自力でやらなければならないのでは」と兼保先生。5年間の夏期観測を終え、発想の転換が求められている。

3d7ee8a6.jpg
1号庁舎廊下の屋根部分。コーキングが切れている。

9f1b57b4.jpg
古いコーキングは、まず、カッターナイフで切って剥がす。


931454cf.jpg
マスキングテープの間に充填ガンを使って詰める。

このページのトップヘ