太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2012年02月

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子供たちのお目当てはダンボールの模型。富士山測候所との”触れ合い”をおもいっきり楽しんでもらった。

「富士山の日」制定趣旨

国民の財産であり、日本のシンボルである富士山は、その類まれなる美しい自然景観により、人の心を打ち、芸術や信仰を生み出してきました。こうし た偉大な る富士山を抱く静岡県において、すべての県民が富士山について学び、考え、想いを寄せ、富士山憲章の理念に基づき、後世に引き継ぐことを期する日として、 2月23日を「富士山の日」とする条例を制定しました。
(静岡県公式ホームページより)

「富士山の日」に合わせ、静岡県内の自治体ではそれぞれに独自のイベントを競って開催している。ここ富士市においては、2月18日(土)、19日(日)の両日「なんでも富士山2012」が開催され、富士山測候所を活用する会からも初めて出展した。

「なんでも富士山」は、富士山関連の水、菓子、茶、工芸など物産販売から学習資料の展示まで、富士山に関係するものは何でもあり、といったイベント。「学びのゾーン」には、国土交通省富士砂防事務所、山梨県環境科学研究所、気象実験クラブ、静岡県、それにNPO法人富士山測候所を活用する会の5団体がブースを構えた。

2日間の入場者は主催者発表で1万人弱。当会のブースにも沢山の地元の方々に立ち寄っていただいた。富士山測候所のレドームが撤去された後もその他の施設は残っていて様々な研究などに使われているということについては、ほとんどの方がご存じなかった。

今回の出展で富士山測候所を利用したNPOの活動をいくらかでも知ってもらい、そしてそのことで富士山の日の制定趣旨にある「すべての県民が富士山について学び、考え、想いを寄せる」ことへのささやかな一助になったらと思う。

(※)なお、2月23日(木)には、静岡県富士宮市において畠山史郎理事長が講演します。詳細はこちらから。

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新富士駅から徒歩5分、会場のふじさんめっせ。青空をバックに「白妙の富士の高嶺」が映える。地元の方のお話では、地上からも剣ヶ峰に測候所のレーダードームが光って見えたそうだ。

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用意した展示は三井物産環境基金によるポスターほか、「変わる富士山測候所」などの書籍、それに富士山測候所のジオラマ模型。

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となりのブースは静岡県。きれいどころの”ミスかぐや姫”も来て、文化遺産登録のための署名受け付けに華を添える。

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もう一方のとなりのブースには昨年の夏、富士山頂からライブ中継をやった気象実験クラブの佐藤元さんをリーダーとする気象予報士の面々。ペットボトルなどで工夫した手作りの実験教材を使って子供たちを楽しませた。

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間に挟まれた富士山測候所を活用する会は、説明員も一人だけとはちとさみしい。展示内容も専門的すぎたようだ。

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富士砂防事務所の富士山噴火時の溶岩流シミュレーションシステムは、地元の方の関心も特に高かった。

「第5回成果報告会」に参加された方から、メールが寄せられましたのでご紹介させていただきます。

件名: 有意義な報告会の開催、有難うございました(第5回成果報告会参加者)

(前文省略)
発表者の皆様、先生方におかれましては、大気、医学、宇宙線、教育と多岐に亘る分野での有意義なご講演・お話を賜り、有難うございました。

私は、科学教育や環境問題に関心を持っていまして、かねてから富士山測候所で市民活動の観測が継続していると聞き及んでいたところ、「サイエンス・ポータル」で報告会が開催されることを知り、特に中国からの越境汚染と森林被害が気になることの一つとしてあったことから、参加させていただいた次第です。

各発表の中で、シベリア森林火災の煙が大気に広がっている衛星写真、大気境界層に淀んでいる写真が特に印象に残り、地上から見れば厚いと錯覚している大気の薄さ・国境の無さを再認識するとともに、このような観測データを得ている富士山測候所での活動の貴重さを感じました。そして、富士山測候所は、大気だけでなく、報告会各分野に亘り、それこそ富士の裾野のように広く知の地平と社会が自然を見る目の「窓」を拓いていると感じました。


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活発に取り交わされた質疑応答はいずれも時間をオーバーし、途中で打ち切りとなることもしばしば。

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コーヒーブレイク中のポスター/写真展の会場

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小岩井大輔さん(富士山写真家)の18点の富士山の写真は会場に華を添えてくれました。

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福島原発事故の影響は富士山で見えたか?鳥居先生(右端後ろ姿)と鴨川先生(その左)のポスター発表

第5回成果報告会は黒岩監事のレポートその1にもあるとおり、盛況裡に終了しました。聴講された皆さまにアンケートをお願いしましたが、24名の方から回答(回収率24/58=41%)をいただきました。以下にその集計結果をご紹介しますとともに、今後の開催の参考にさせていただたいと思います。

(1)参加者数
主催側として、まず気になるのは参加者数。今回は108名、過去最高の2009年の成果報告会に並びました。
主催者側(当NPO法人の理事、発表者、事務局スタッフ)50名に対し、聴講者は58名。このうち、これまで1回以上参加いただいている常連(リピータ)の方が16名。一方、初めて来られた方が42名でした。
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第5回成果報告会の参加者内訳


(2)発表内容について(複数回答有) 
全般的には「非常にわかりやすい」、「わかりやすい」が80%を占めました。アンケートには以下のような概ね好意的な感想をいただいています。
・わかりやすい。全般的にわかりやすいプレゼン。
・全体におもしろかったです。ありがとうございました。
・研究の続行をお願いしたいと思います。
・またの機会を楽しみにしてます
・どの発表も、生活に密着したものが多く関心が持てた

発表内容については以下のようなご提案もいただきました。
・富士山頂と会場を中継できると、親近感がもっともてて興味深いと思う
・富士山の爆発予想に関する研究も話題にしていただきたく思いました。
・これだけでも、十分意義があると思います。日本の象徴的存在でもある富士山を、さらに一般の人々の認識を広め、深めていく方法として(日本国内、外国に対し)セッションの中の1つに日本の古典文学(万葉集?)につづられてきた富士山についての記述報告など富士火山噴火とその時の地震の古文書にみる記述などを紹介できる人に発表してもらうということも考えられるかな、と思ったりしました。

さらに以下の手厳しいご指摘もありました。
・プレゼンの技術、レベルに大差ある。玉石混交、各自、事前準ビ練習を義務づけてほしい。

(3)時間配分について
3分の2(67%)の方が「半日が適当」との回答でした。
・開催回数が多いほうがありがたいが、成果を報告する立場からはそんなにデータがあるわけではないと思う
・パネル報告を増してほしい。

一方で「丸1日とすべき」意見には、割当時間が少ないといご指摘。
・各発表とも詰め込みすぎで、聴き手が理解不十分になりがち。もっと時間に余裕ある設定をしてほしい。
・割当時間が少なすぎて、かわいそう。
・質疑応答を充実してほしい。

(4)開催時期について
開催するときにいつも議論になるのが、時期をいつにするかということです。
主催者側(発表者側)は大学の先生方が多いのですが、ちょうどこの時期は受験シーズンの真っ只中で超多忙。また、学生も卒論で忙しく参加もままならないといった状況です。
「今の時期(1月)が良い」という方が70%でしたが、この日参加された方は都合がつかれた方で、(都合がつかず)参加できなかった方のご意見もお聞きしないとなんとも言えませんね。



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山頂の雪は多く、2号庁舎が氷で覆われていたとのことです。西島昇さん(元富士山測候所職員・熊谷気象台) 2012年5月13日撮影。


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山本正嘉先生(鹿屋体育大学)の発表「運動生理学から見た富士登山時の身体ストレスとその有効活用」

29日(日)は「富士山測候所を活用する会」主催の第5回成果報告会が、東大本郷の小柴ホールで行われました。

私は、このNPOの監事という役をいただいているのですが、もう一人の方にお任せしていて、私はほとんどめくら判だったのですが、去年、もう一人の方が辞めてしまわれたので、とっても心細く、後任を早く探してと言い続けていました。やっと後任が見つかって、この日顔合わせも兼ねて、上京したのでした。

成果発表会の前に、理事会があり、ここには、理事として橋本龍太郎さんの妻橋本久美子さんも参加されていて、成果報告会は、隣に並んで発表の合間におしゃべりを楽しみました。龍太郎さんは、日本山岳会の会員として、この富士山測候所については政治との架け橋をしてくださっていたようです。亡くなった後、地盤を引き継いだのは、二男さんですが、今は浪人中とのこと。

成果発表会は、小柴ホールがほとんど埋まるほどの参加者(100人以上)で、今までで最高です。発表が結構興味深くて、生活に直結するようなデータが、いろいろとありました。例えば、高山病というのは、酸素濃度の低下によって起こるのですが、十分な睡眠をとれば、改善されるのでは、というのが素人考えで、睡眠中は、もっと酸素濃度が低下してしまうという。だから、高山病については、直ちに降りるという改善策しかないというのでした。

福島原発の放射能が、富士山ではどうか、というのについては、福島からの放射能は、山頂では観察されなかったという。1300mあたりではほんのすこし、環境基準より低いCs-134が出ている。しかしこれは原発由来であることが確実な核種なので、低いところを輸送された証拠になるのではないかという。この点は三宅島の噴煙のSO2のときも、山頂よりは低いところを長野まで行ったので、大気化学的には面白いそうだ。静岡のお茶から検出されたというニュースについても、低いところだから被曝したということのようです。

一人の発表は、10分、そのあと、質疑があって、全部の持ち時間は15分。質問がどの発表に対しても必ずあるというところが、聴衆の意識の高さを表していると思いました。その質問というのが、結構、発表者と対等な議論になったりするのです。終わってから、懇親会があったのですが、その時に、司会者が「よく質問された方に発言していただきます」と言って、毎回のように質問をしていた、二人の方を指名しました。二人ともそれなりの方で、こういう時に、こんな指名の仕方をする、司会者はいいなと思いました。

私を乾杯の音頭に指名したのも、この司会者で、これもありがたかったのです。「雪深いにいがたの魚沼から来ました。監事とは名ばかりで何もできないのですが、乾杯の音頭なら取れるので、」ということができたのでした。ここで皆さんは笑ってくださり、「僕も新潟県出身です」と十日町の方が声をかけてくださったりしました。

富士山測候所を、夏の2か月間だけこのNPOが開いて、皆さんに貸し出して、これだけの研究ができていることを考えたら、こういうことにこそ、税金を投入して、行政が管理したらいいと思うのですが…、今のところ、気象庁も、文科省も行政はその気にならないようなのです。

☆ ☆ 黒岩秩子(ちづこ) ☆ ☆
      新潟県南魚沼市浦佐
 c-kuroiwa@mqc.biglobe.ne.jp
http://www5f.biglobe.ne.jp/~chizuko/(旧)
http://c-kuroiwa.at.webry.info/ (新)
(注)黒岩監事のホームページのブログから転載させていただきました。

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