太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2013年07月


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東京都からの仮認定通知書


7月29日午後3時頃、東京都から電話がはいった。
「仮認定申請の認定が決まりましたのでお知らせします。ついては、認定日はいつにしましょうか?」
迷わず、「今日中にできるでしょうか?」と返事し、夕方5時過ぎに都庁へ。急きょ決裁していただいた通知書を手渡された。

表題は「仮認定特定非営利活動法人」と漢字12文字も並び、さらに「仮認定した旨の通知書」とつづく。「仮」が2箇所にもあり、重複語のようにも思え、いかにも「本当のもの、本来のものではないこと」の印象を受ける。後者の「仮」はなくもがなと思われるが、役所の文書課がチェックしているはずだから、これでいいのだろう。

NPO法人は全国で約4万7千強あるといわれているが、仮認定を含む認定NPO法人の数は489法人(平成25年7月26日現在)であるから、約1パーセントに相当することになる。2013年7月29日をもって富士山測候所を活用する会もこのひと握りの「認定NPO法人」の仲間入りを果たした。「仮」がついているとはいえ、これからの3年間は法律上は「認定NPO法人」とその効力はほとんど同じである。

何といっても、一番大きいのは税の優遇措置である。① 個人が認定NPO法人に寄付をした場合に寄付金控除(所得控除または税額控除)が受けられる② 法人が認定NPO法人に寄付をした場合に損金に算入される枠が広がる。 つまり、NPO法人にとっては、寄附を集めやすくする環境ができたということになる。

もうひとつは、公的機関から認定を受けることにより社会的信用・認知度の高まりを期待できること。認定を受けたことは当NPO法人の事業活動、組織運営、経理、情報公開など全般にわたって一定の基準をクリアしたことを意味しているからだ。

来年2014年度には、2012年度、2013年度の2年間の実績判定期間をもって、「認定NPO法人」の申請をし、早ければ年内取得を目指すことが次の目標になった。こんどは「認定特定非営利活動法人として認定した旨の通知」をもらえるように。

取り急ぎ、ブログで紹介させていただきましたが、関係の皆さまには引き続きご支援をたまわりますよう、この場をお借りしてお願いする次第です。

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早速、名刺にも「仮認定特定非営利活動法人」の名称を入れて印刷。


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観測機材の搬入。手前の荷物は首都大東京の観測機材など

18日は、研究グループの大量機材荷上げのピーク。山梨大、首都大東京、早稲田大、東京理科大、東京学芸大の各大学が、あらかじめ割り振られた場所に機材を設置・据え付け・調整し、連続測定に入った。

首都大学東京は新設されたインレット使用するため、従来の1号庁舎のほかに3号庁舎にも観測装置を設置した。加藤先生から、翌19日朝には早々にコメントとともに、CO,O3の測定結果が届いた。

放医研の矢島先生によると、ことしは通信回線をモバイル端末から光ケーブルに変更したという。それが功を奏してネットインフラ環境が改善され、通信も順調なすべり出しである。

観測は8月下旬までつづく。停電や大きなトラブルがなく、連続したデータがとれることを祈りたい。

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午後から測器の設置。まだ不安定な動作のようだが、夕方にオゾンが70ppbを超える高い濃度で観測されている。


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観測データの速報はこのような形式で準リアルタイムに配信される(※)配信は会員限定ページのみ

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SO2計ことしから3号庁舎に設置し、新設されたインレットを使用する

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CO,O3計はこれまでどおり1号庁舎に設置


(参考)R-01 富士山頂における一酸化炭素およびオゾンの夏季の長期測定
富士山頂は自由対流圏に位置しており長距離越境汚染の影響を観測するのに適していると考えられるため、一酸化炭素(CO)計およびオゾン(O3)濃度の連続測定を行う。COは汚染大気が輸送されてきているかどうかを判断する良い指標となる。O3は、汚染大気が光化学反応を起こすことで生成され(光化学オキシダント)、高濃度のO3は人や植生に悪影を及ぼす。改善の見られない日本での光化学オキシダント注意報発令件数と汚染大気長距離輸送との関係などについて検討を行う。




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学術研究目的で設置しているライブカメラは今年から2台となり、より広範囲に山頂の様子を捉えられるようになった。1台は昨年までと同じ東方面、もう1台は西方面をそれぞれ撮影した画像データは、5分間隔でサーバーにとり込み保存している。

7月17日(水)。
研究グループの観測機材の荷上げ前日のこの日、各グループが共通で使用する設備の設置取り付けが行われた。

ライブカメラは昨年までも設置していたものの通信環境が思わしくなく、期待された品質の映像はほとんど得ることができなかった。今年は放医研さんの協力を得て、通信ルートを山梨県方面に変更。良好な画像が撮れそうだ。大気電気、大気化学、エアロゾルの研究にとって、雲の有無は重要な情報。また、大気化学観測や気象観測データの精度向上をはかるためには、気象状態の画像情報が極めて有効であるという。

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気象測器は、インレット同様に3号庁舎ダクトに取り付けられた。

気象測器は、温湿度、風向風速、雨量、気圧観測など、大気化学の研究グループが共通で使用する基本的なデータである。この日からは、無線LANも使用できるようになり、山頂とのインターネット通信も可能となった。

インフラは準備万端整い、あとは研究グループの観測機材の荷上げと観測の開始を待つばかりとなった。

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測候所に荷上げする荷物の積み込みに集合した学生。(東京理科大にて17日午前9時頃)

開所2日目。今日から研究グループの機材・食糧などの大量の荷上げが始まる。
午前8時30分、新宿区神楽坂にある東京理科大学では学生が集合し、トラックに積み込み。

荷物が標高1400㍍の太郎坊に到着したのは昼。大学や研究機関が集積している首都圏からのアクセスがいいのは、富士山測候所の強みだ。首都大東京、早稲田大、東京理科大、東京学芸大の都内各大学と山梨大から集まってきた荷物の総重量は1.5㌧にも上る。

大量の荷物に1台のブルで大丈夫かと心配されたが、学生を含む総勢20数名で伊倉さんらの指示に従って荷物を運び込み、2時間程度かかって何とか1台に収める。積み込みが完了したのは16時40分。

明日朝、山頂に運ばれたこれらの機材は、測候所内外に据え付けられ、8月下旬まで山頂で貴重なデータを採取し観測をつづける。この間、フィルター交換、サンプラーの回収などの人手を必要とする作業は各研究グループが交代であたるほか、山頂班も研究者と共同で作成したマニュアルに従って、運用業務を代行補助する。

今夏は、昨夏新設した3号庁舎のインレット(空気取り入れ口)も本格的な運用を開始する。従来のインレットは気象庁時代から使用してきたが、利用希望の増加に対応できなかったことなどから、昨年増設されたもの。

運用を含めて年々整備されてきた、富士山測候所の研究環境。その成果が期待される。

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ダンボールの荷物は、雨でも型くずれしないよう幾重にもラッピング

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手際よい積み込み作業でみるみる片づいていく荷物

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滋賀県立大G出発前、鈴木さん、岩崎さん

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計量を完了し、積み込みを待つばかり

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御殿場口五合目で見かけた真新しい看板。「登山計画書」用のポストや「やめよう弾丸登山」の表示もある。


7月16日(火) 午前11時4分。御殿場基地から山頂讃歌MLで第2報が届く。
「山頂から電話があり、10時05分に通電成功とのことです。」

山頂の測候所へ商用電気も届き、今年の夏季観測もいよいよスタートを切った。今日から8月30日までの46日間、山頂の富士山測候所では山頂班が常駐して研究活動のサポートにあたる。地上の御殿場基地では研究者がボランティアで交代しながらリレーする。

7回目となる今年の夏期観測では、PM2.5の越境汚染の監視に関する調査(大気化学)、大気電気現象および超高層大気の観測(大気電気)、山頂で貯蔵した農畜産物の品質変化の調査(食品科学)、歩行バランスに与える影響の調査(高所医学)などのプロジェクトで、延べ約400人の参加が見込まれている。

富士山世界遺産登録されてから初の夏期観測。登山者も多いというが、報道取材のほうも負けていない。今日一日だけで5社からの問い合わせ。登山計画の調整など、8月末までオペレーションは間断なくつづく。

かけがえのない富士山頂の夏。研究者、学生の皆さんには測候所を精一杯利用し、成果をあげていただきたいと思う。そして、ことしも無事に終了してくれることを祈っている。

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