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宮城公博「外道クライマー」集英社インターナショナル2016.3.30

近頃の若いものは冒険心が足りないなどという人には読んでもらいたい本である。冒険(「ムチャ」と仮名を振りたくなるものもある)、それも並大抵なものではない。死とギリギリの場所に自分を置きたい欲望がギラギラした激語(「悪絶」とか「悶絶」とか)で飾られているが、それでも読ませてしまうのは、昨年度開高健ノンフィクション賞の候補に最後まで残った文章力の故だろうか?主題の「タイのジャングル46日間の沢登り」が3章に分けて、途中に間奏曲のような日本や台湾の沢が出てくる構成の妙だろうか?

読みながら、我が「NPO法人富士山測候所を活用する会」はとんでもない「沢ヤ」(どうやら登山家にはいろいろ種類があって「最低」と云っているが、最もマニアックな部に属する「沢昇りと下り、荷物を浮かせて泳いだり、滝を登ったり、ぐちゃぐちゃの泥沼を何日も歩いたり、大蛇をのこぎりで切って食べたりすることも含まれる」人種がいるらしい)にお願いしていることに気が付いた。昨年の御殿場班は長期間、彼が引き受けたが、部屋はいつもきれいに整頓され、余計なものはすべて片づけてあった。300gのカラビナを荷物に入れておくかどうかで、生死を分けるような「研ぎ澄まされた」感覚が時々頭をかすめたのだろうか?

タイトルを見た時にはとても「買いたい」とは思えない本で、本棚に置くのもためらったが、終わりまで読むと、なかなか良い本であることがわかる。「高柳」君(シャーロキアンにワトソン君のファンが多いように彼のファンになりそう)との人間関係、リーダーとしての反省、言葉の通じない世界での「ニコニコ作戦」など物語としても楽しく、地理的な説明などはきちんとした調査に裏付けられており、後味も悪くない。「富士山」本の隣に置いてもよいかな。と思う。

いや、いや待てよ。もしかして孫がやってきてこれを見つけたら・・・まだ体力も実行力もある孫たちの世代がこれを読んで中途半端に真似などされてはオソロシイ。絶対に孫の目には触れないように大人だけで楽しむことにしよう!!

(土器屋由紀子)