太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2016年06月

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毎年5月、7月の開所を1カ月前に控えて、富士山測候所に送電している架空線の点検が行われる。5月25日気象庁で点検に行ったときに、#70-#71間に雪融け水による大量の土砂が堆積し電線高が相対的に低下して危険な状況にまでなっているため緊急の対応が必要との連絡を受けた。

6月1日(金)から基地事務所設営のため、御殿場入りしていたついでに、2日(土)9:30太郎坊で関電工と待ち合わせ、架空送電線の(電線高が低下している)現場へ確認に。

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現地は太郎坊から先の御殿場口五合目から徒歩約30分程度。73本ある架空送電線柱の終点に#71、#72、#73の3本があり、ここからは埋設ケーブルで山頂に向かっている。土砂が堆積している現場は#70と#71の間でスパン長は100㍍もあり、数年前には架空線が風の微振動で切断事故を起こしている場所でもある。

想像をはるかに上回る大量の土砂。手を伸ばせば、あと少しで架線に届くほどの高さである。入山者がステッキで触れようものなら感電はまぬかれない。ちなみに電気設備基準では5㍍高を確保することとなっている。

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土砂の撤去整備工事は、陸上自衛隊富士学校、御殿場市役所環境課、静岡県自然保護課などに必用な手続きを取り、6月14日から20日まで5日間をかけて実施、架空線高は6.5㍍を確保。富士山測候所はその後、6月27日(月)に商用電源の通電試験を行い、7月1日(金)には無事開所を迎えることができた。少なくとも埋設ケーブル事故で開所が一週間遅れとなった昨年の二の舞は避けることができた。

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それにしても富士山では風雪害、雷、小動物、さらにはここ2年間は重機による人為的事故などと、ありとあらゆる種類の電源事故が毎年のように発生している。土砂の堆積により架空送電線が危険な状態になったというのは、電気主任技術者の大胡田さんによると、この10年間では初めてのことだそうである。

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 日本大気電気学会総会で学生発表賞を受賞した吉末百花さん(左端)と高橋周作さん(右端)


NPOの学生会員である東京学芸大学・鴨川研 の高橋周作さんと 東京理科大学・三浦研の吉末百花さんが5月23日に行われた日本大気電気学会 総会で学生発表賞を受賞しました。 いずれも富士山観測を生かした研究であり、当会員の学生の研究が認められたことはとても喜ばしいことです。

日本大気電気学会第94回研究発表会(2016年1月千葉大学)

高エネルギー放射線検知時の冬季雷雲内電荷領域の推定
高橋周作(学芸大), Gregory Bowers, David Smith(UC Santa Cruz), 松木篤(金沢大), 鴨川仁(学芸大)

西経170度線南北縦断航海で得られた海洋性 エアロゾルの個別粒子分析
吉末百花,岩本洋子(東理大・理),足立光司(気象研),三浦和彦(東理 大・理),植松光夫(東大・大気海洋研)


また、富士山関連の研究ではないのですが、早稲田大学・大河内研究室M1の西村寿々美さんが6月8日-10日まで新潟(朱鷺メッセ)で行われた第25回環境化学討論会において、英国王立化学賞(ポスター)を受賞しました.

発表内容は丹沢大山の渓流水中微量金属元素に関するものですが、富士山で得られた雲水観測結果からヒントを得て解析が進んだところとのこと。

今年の富士山の観測も2週間後の7月1日に迫りました。昨年から始めた学生による自主的調査研究活動を対象とした学生公募にも応募があるなど、今年の夏も各大学の学生のたち活躍が期待されています。

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