太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2017年03月

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東京理科大学総合研究院の大気科学研究部門では、都市・海洋・山岳大気における観測により、大気汚染、気候変動について研究を行っている。3月28日(火)、その成果報告会が東京理科大学で開催された。富士山測候所を活用する会は後援を行っている。

つい先だって3月5日(日)には富士山測候所を活用する会の成果報告会があり、このときはNPOと東京理科大学大気科学研究部門が共催した。まぎらわしいかもしれないが、東京理科大学の大気科学研究部門とは共通の観測の場として富士山を利用している関係で、緊密な連携をとらせていただいている。

口頭発表は山岳・遠隔大気と都市大気の2セッションに分けて行われたが、山岳・遠隔大気では8件の発表中、富士山における観測にもとづく発表が5件を占めた。ポスター発表は35件中、富士山関係が7件であった。
 
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昨年までこの集会は山岳大気中心であったが、今期からは都市大気も加わり、「人間活動に、より密着したテーマも増えて広がりを見せている」とコメンテーターの発言にもあったが、富士山発の研究がいろいろの広がりを見せているのはよろこばしいことである。


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 エクステンション講座が開かれたさくらWorksの会場

横浜市立大学が、市民の学習意欲に応えるため、さまざまな学習機会を提供しているエクステンション講座。平成28年度講座に(小・中学生の親子向け)「自然は嘘をつかない―海、山、川、自然の深層から、環境を知る。―」がある。

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3月18日(土)その講座の3回目として「富士山測候所は知っている。大気の健康」と題して、土器屋由紀子理事が講師を担当した。

通常の講演と違って相手は小学生。しかも、学齢も1年生から6年制まで幅がある。「飽きる子どもも想定されるので、お話全体の流れや、途中クイズを挟む、何かを考えて記述させる、動画を視聴等、ご一考頂ければと思います。アトラクション的な仕立てをお考えでしたら、準備する資材等もご相談下さい」など、事前準備依頼のメールも微細にわたっている。

スライドの中の漢字という漢字にはすべてルビを振ったり、3択クイズの問題を捻り出したり、直径70㌢ほどの地球の風船を山梨大学の小林先生から取り寄せたり、それを膨らませるための空気入れを手配したり、・・・。考えようによっては、専門家を相手にするよりは、子供目線で伝えることのほうがずーっと難しいことかもしれない。

本日、横浜市立大エクステンション講座「小中学生の親子対象」 自然はうそをつかない~海、山、川、自然の深層から、 環境を知る~第3回「富士山は知っている。大気の健康」 の講義を無事終了しました。

9時半にさくらWorksの会場に行ったら、市大・研究基盤課・ 地域貢献担当の斉藤亜紀子さんが一人で風船と空気入れで格闘して おられました。そのうち、 大賀さんが現れて一緒に膨らませて下さり、 10時にはインターネットもつながって無事開催、 親子連れは8組、小学生は10名程度でした。

ちょっと難しい話かな・・と心配したのですが、 皆さん寝ないで何とか最後まで付き合ってくださって、「 山頂のお風呂やトイレはどうしているのですか?」とか「食べ物は?」など、質問も多くて、 結構わかっていただけたようです。

当日、お土産用に配ったレーダードームのペーパークラフトはことのほか好評で、講義を聞きながら、はさみを出して切り抜いている男子生徒(多分高学年)もいました。ペットボトルのへこみ方について、ちゃんと「空気の圧力ですか?」と答えてくれたり、元気な生徒さんでした。

最後に6年生(?) の女子生徒さんが「(富士山測候所に)遊びに行けますか?」 と聞いてくれたのですが、「見学会の時はよいのですが、 突然では難しい。事前に保護者と一緒に相談してください」 というような返事をしておきました。

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講義が終わった後で、 風船をつぶすのを手伝ってくれた兄妹。 お礼に富士山シールを沢山あげました。子供たちは風船を気に入ったようで結構遊んでくれました。
教育は地道な活動ではあるが、研究活動と並んで主要事業の柱として位置づけているものである。今回の講義をきっかけに、講演スライドを始め、ホームページ、教材、ノベルティグッズなどで、未来を担う子どもたちに科学への興味関心を持ってもらうようなコンテンツづくりも心がけていきたいものである。

※本講座は、横浜市立大学がヨコハマ・エコ・スクール(YES)と協働パートナーとして実施しているものである。昨年は、YESからの依頼で、横浜市の温暖化対策に関わる啓発事業としてのFMヨコハマの番組コーナーで7月8日、15日の2回、富士山測候所の活用の現状や二酸化炭素測定などについて、土器屋理事がインタビュー出演している。

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日経ナショナルジオグラフィック2015年11月号(左)と今回届けられた三井物産環境基金コミュニケーションリポート(右)


事務局に「三井物産環境基金コミュニケーションリポート」の冊子が届けられた 。

三井物産環境基金では2年前に、若い世代の方々にNPOの活動を体験し、自らの言葉で発信してくれる学生リポーターを募集し、3回にわたり日経ナショナルジオグラフィックに掲載した。当NPO法人の富士山測候所での活動については、その第1号として中村大輝さん(広島大学大学院)が山頂で取材し、2015年11月号にそのリポートを取り上げていただいている。

コミュニケーションレポートは、三井物産環境基金の多岐に亘る助成先の取り組みについて大学生たちが取材したリポートなどを、ナショナルジオグラフィック日本版とタイアップしてまとめたもの。全19ページの手ごろな厚さの美しい冊子である。当NPO法人は取り壊しの運命にあった富士山測候所を研究・教育拠点として甦らせるNPOとして紹介されている。

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 三井物産環境基金ライブラリー:コミュニケーションリポートのサイト


本広告は、2016年「ナショナルジオグラフィック日本版広告賞審査会」において、審査委員に深く感銘を与えた作品であるとして、「コシノヒロコ賞」及び「柳生博賞」をダブル受賞したとのこと。
三井物産コミュニケーションリポート発行について

「ナショナルジオグラフィック」 の記事はそれだけでも有難く、当NPOの活動についての説明の折などに何回か利用させていただいていたが、 このようなコンパクトな冊子になっているとさらに有難い。これも有効に活用させていただきたいものだ。

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口頭発表会場の212階段教室(東京理科大学)

NPО法人として富士山測候所で夏期観測を始めたのが2007年7月のこと。観測活動の成果は、毎年成果報告会を開催して発表してきたので、今回は第10回目の成果報告会になる。3月5日(日)、会場は初めて東京理科大学神楽坂キャンパスに移して行われた。

口頭発表会場は212教室。口頭発表件数を増やして午前10時からスタート。ほとんどの研究は何年も継続しているプロジェクトであり、いわば10年間の集大成とでもいえる発表内容が多く、それだけ充実していたと言えよう。

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島田幸次郎・東京農工大助教の「日台における国際共同研究」の発表と座長の小林拓・山梨大准教授。

健康影響が懸念されている越境大気汚染の実態解明をするため、東アジア諸国である台湾,香港,中国及び韓国と連携し、国際共同観測のネットワークを島嶼地域と山岳域に作った。その山岳地域の観測所の一つとして富士山旧測候所を活用し、台湾と共同して越境大気汚染の観測を行ってきた。

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兼保氏による年賀寄附金配分事業による測候所の保守と大気中水銀の通年観測の試行の発表

年賀寄附金配分事業で行った①山頂庁舎の軽微な傷みについての自主補修と合わせ、②測候所での通年観測の可能性を探るためのケーススタディとして、省電力型水銀濃度センサーを使って調査を行っている。本試験のノウハウをNPO内で共有することで新たな観測につなげていくことが期待される。

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京都市立芸術大学の松井教授の発表

富士山測候所の活用は他分野に広がりを見せているが、今回は初めて「芸術」の分野での発表もあり注目を集めた。京都市立芸術大学の松井教授の発表は、宇宙飛行士がガラスボトルに詰めて持ち帰った「宇宙?」を富士山頂に持参いただき、参加された方が各自手に取り、感じたことを書きとめ未来の人類に向けたメッセージとして伝えようというもの。


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ポスターセッションの冒頭で概要をプレゼンする桃井さん(東京理科大学)

ポスター発表は222教室で全12件の発表。新しい試みとしてコアタイムの冒頭、ポスタープレビュー(ポスター発表のポイントをスライド1,2枚を使って1分程度の短時間で紹介するもの)を行った。事務局の準備不足から直前になってお願いしたにもかかわらず、どの発表者もポイントを押さえてわかりやすく説明していただいた。その後の発表者と聞き手の間の密なコミュニケーションにつながり、良い企画だったのではなかろうか。

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卒業する学生にとっては学生生活最後のイベント。東京学芸大学の後輩に囲まれた東郷さん(右から2人目)は、4月から社会人として富士山で研究した経験も活かせる道に進まれるとか。


参加者は報道関係者、助成団体関係者などを含め99名であった。休日にもかかわらず、全国各地からご参加くださいました皆様に感謝申し上げます。また、運営スタッフとしてボランティアで手伝っていただいた東京理科大学、東京学芸大学の学生の皆様には大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

最後になりましたが、日本郵便株式会社トヨタ自動車株式会社「トヨタ環境活動助成プログラム」、NPO法人モバイル・コミュニケーション・ファンド公益財団法人粟井英朗環境財団(敬称略)の各助成団体には、開催にあたりご後援をたまわりましたことを報告させていただきます。


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