太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2017年07月

バッテリー交換
 今年の夏に取り換えのため太郎坊に運び込んだ50個のバッテリー。総重量は850㎏もある

7月11日-12日、国立環境研究所(以下「国環研」という)の野村先生一行が山頂へ。
今回の登山目的は、富士山頂での大気中CO2濃度の観測を開始した2009年に設置したバッテリーの取り換え。昨夏50個と今夏50個ずつ、合計100個のバッテリーを、2年がかりで新品と交換した。

これにより、現在行っている富士山頂での大気中CO2濃度の通年観測を長期間(20-30年)継続する体制が整った。

バッテリー交換
 今年の夏から始めた大気自動サンプリング用のボトル

今回の登山のもう一つの目的は、大気のボトルサンプリングを開始すること。
CO2以外の温室効果ガス濃度を現在、富士山頂で行っている大気中CO2濃度と同頻度で測定するためには、大量の電力を必要とする。現在の測候所の電力事情では困難なため、今年の夏から大気のボトルサンプリングを行うことにした。

自動で毎月大気を採取する装置を山頂に設置し、翌夏に大気を採取したボトルを回収し、実験室にて温室効果ガス(CO2、CH4、N2Oなど)を測定するというもの。これにより、富士山頂での温室効果ガス濃度観測がより一層強化されることになった。

今年の夏期観測では、大気の観測などで通年観測にチャレンジするプロジェクトが多いのも特徴だ。国環研が他に先駆けて通年観測を開始したのが、8年前の2009年。今年は温室効果ガス濃度観測も強化されたこともあり、ある意味 ”第2次通年観測ブーム” の到来と言えるかもしれない。


nomura
 2017年4月14日 国立研究開発法人 国立環境研究所の報道発表

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 イスララエル・テルアビブ大学・Yoav Yair教授の発表

今年のJpGUは米国地球物理学連合AGUとの合同大会ということもあり、海外からそうそうたる面々の研究者が来日した。スプライトの名を一気に世に広めたNHKスペシャル「宇宙の渚」にて活躍したイスララエル・テルアビブ大学・Yoav Yair教授もその一人である。

Yair教授は大気電気の専門家でもあるが、地球の大気電気だけでなく、惑星の大気電気も専門。火星に雷があるか否かは科学者の間では注目の的であり、日本も含めた各国の宇宙先進国が競ってその存在を探している最中という。

雷放電のきっかけになる電気は、地球だと積乱雲であるが、火星では砂塵嵐ではないかと予想されている(もちろんもし存在するならば、であるが)。地球でも砂塵嵐はあり、イスラエルでは砂塵嵐が発生することから、大気電場の測定で、仮想火星環境としての研究が進んでいる。

テルアビブ大学が所有するヘルモン山の山岳大気電場観測データ、砂漠地域の大気電場観測観測データで得られた結果から、砂塵嵐内がどのような電気の分布になっているか、Yair教授らは悩んでいた。

たまたま、Yair教授富士山での山岳大気電場観測の結果(鴨川、三浦、大河内3グループの共同研究で米国地球物理学連合レター誌に発表)を目にしたとき、まさに富士山で得られた結果とその解釈が役に立つと直感し、今回JpGUでの発表となった。

富士山の山岳大気電場観測は、かねて三浦教授の師匠でもあった関川理科大教授が、その不思議さを1960年代に発表し、世界でも山岳大気電場は地表での測定と異なる、と大きく話題になっていたマイナーながら難題でもあった。

それをNPOの共同研究で解明し、発表したわけであるが、50年以上にわたって未解明だったこの問題。いまこのことを直接興味を持つ人はあまりいない。しかし、火星の雷の基礎研究に富士山での研究が役に立つとは、当時の研究者は夢にも思わなかったであろう。


insta


7月1日に開所した富士山測候所。その後、連日山頂班から山頂の素晴らしい風景写真が届けられているが、これまではブログなどにその一部は紹介するも、もったいないことにその全てをお見せすることはできなかった。

今回、写真の投稿・共有を中心とする手段として「Instagram」(インスタグラム)を使うことになった。

写真を簡単にドンドン上げていく、というのを基本に作られているインスタグラムは、文字だけで近況をアップすることはできないという決まりがあるだけに、いま友だちが「どこでなにを見ているのか」という、その人の「目」を通した風景を、離れていても楽しむことができるのがほかのSNSとの違い

SNSはこれまでは「Facebook」(フェイスブック)だけしか使っていなかったが、新たに加わったインスタグラムで情報発信力も強化された。

山頂には8月末まで2カ月間にわたり、山頂班が常駐している。これからはインスタグラムで山頂から送られる ”朝ドレ” の写真をお楽しみに。

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小型放射線測定器を手に、右が和田有希さん(東京大学)で、左が共著の榎戸輝揚さん(京都大学) 2016年夏撮影

JpGU-AGU Joint Meeting 2017(5月20日ー25日@幕張メッセ)で和田有希さん(東京大学)が学生優秀発表賞を受賞されました。

日本海側で冬に発生する雷を研究しているそうですが、雷雲に入ることが出来る富士山でも、昨年鴨川グループに参画して富士山測候所でガンマ線観測を行っています。


「雷雲ガンマ線の多地点観測プロジェクト: 可搬型検出器の開発と2016年度冬季の観測成果」ということで、雷雲の中に存在する強い電場によって加速された電 子が出すガンマ線を観測しています。

我々のグループではこの雷雲から放出されるガンマ線を雷雲の通り 道にばら撒いた放射線測定器で追跡することで、雷雲で電子が加速されるメカニズムや、その発達や衰退の様子を明らかにしようとしています。

主に日本海側で冬に発生する雷を研究していますが、雷雲の中に入 ることができる富士山の地の利も利用して、富士山測候所でのガンマ線観測を東京学芸大学鴨川仁グループに参画し、行っています。

従来のガンマ線検出器は大きくて重く、高価であったため、量産し てばらまくという用途に向きませんでしたが、我々のグループは装置を独自開発により小型化してこの課題を克服しました。さらに小型化によって設置作業や運搬にかかる労力も大幅に削減することが出来、厳しい環境の富士山測候所でも少ない労力で設置することが可能となりました。

wada@jpug
 JpUGでの発表

(和田有希 記)  


同じ大気水圏科学セクションでは、吉末百花さん(東京理科大学)も「 北太平洋とその縁辺海で採取された海洋性エアロゾルの個別粒子分析」で受賞されています。 吉末さんは、AAC2017(10th Asian Aerosol Conference)July.2-5 @韓国済州島でも
Excellent Poster賞を受賞

関係者の相次ぐ受賞の知らせは今年の夏期観測に弾みをつけてくれそうですね。
おめでとうございます。

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 夏期観測10周年記念ロゴ

10年前の7月10日、富士山頂には台風が近づいていました。

入念な点検の末に電源がつながり”開所”、NPOによる夏期2か月の山頂の管理運営を宣言し、オキシダントやエアロゾルの測定が再開されたときは、現場は興奮に包まれましたが、不安もいっぱいでした。何もかも初めての経験で、喜びよりも不安の方が大きかったかもしれません。

今日、10年後のこの日を迎えることができ、当初の関係者としては感無量です。若手の研究者が元気で、それなりの成果も上がり、今年は11月に畠山理事長をChair とする国際シンポジウムの主催も計画しています。2007年当時、10年続けられると予想できた人は何人もいなかったでしょう。

ここまで続けられたのは、何といっても観測研究サイトとしての「富士山頂の魅力」と研究者たちの熱意だったのではないでしょうか。ブルなどの地元や山頂管理の登山家たちの希望や協力もあり10年間無事故でやってきました。もちろん、それを資金的に支えた会員の会費や寄附をはじめ、JAMSTECなど共同研究グループ(前半)、後半を中心的に支えた三井物産環境基金や、新技術振興渡辺記念会、年賀寄附金を中心とする多くの助成金も忘れることが出来ません。気象庁によるご指導もありました。

これからは、老朽化した庁舎や送電線などのインフラ修理への負担が今まで以上に重くのしかかっています。せっかくここで育った若手の研究者や学生たちの夢を潰さないように、関心を持っていただける皆様のさらなるご支援とご協力をお願いしたいと思います。

夏期観測20070720
 ホームページのアーカイブに残っている2007年7月20日の速報記事

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