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 第58回大気環境学会年会で学生発表賞の賞状を受けとる早稲田大学・大河内研の中村恵さん

2017年9月6日ー8日、神戸市で開催された第58回大気環境学会年会。「大気環境をめぐる多くの分野の専門家が一堂に会し、日ごろの研究成果を発表するとともに、貴重な情報を交わす場」(年会長・島正之氏のごあいさつより引用) である。大気化学研究者は当NPO法人の主力を占めており、畠山理事長、大河内理事はじめ多数の関係者が参加した。

さて、まず初めに早稲田大学・大河内研の中村恵さんが、以下の発表で学生発表賞に輝いたことをご報告したい。
富士山体を利用した大気境界層及び自由対流圏の雲水化学特性の解明 (3)
〇中村恵、大河内博、島田幸治郎、勝見尚也、皆巳幸也、小林拓、三浦和彦、加藤俊吾、和田龍一
大気環境学会の学生発表は、大会初日の6日午後、5つの会場で1時間の学生セッションがあり、合計31件の発表があった。中村さんは、その中から選ばれて受賞したもの。富士山での研究の成果で受賞はよろこばしいことである。この学会の発表では毎年、富士山研究者の受賞があり、今年もその伝統を引き継いだことになる。

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 大河内教授を挟んで受賞者の中村恵さん(左)と真庭護さん(右)

早稲田大学大河内研の学生では、ほかに真庭護さんも学生発表賞を受賞した。フィールドは富士山ではなく丹沢と異なるが、山岳域という点では同じだ。
首都圏近郊山間部森林域における渓流水の化学特性と大気沈着の影響評価 (3)
〇真庭護1,大河内博1,島田幸治郎1,中野孝教1,井川学2
1早稲田大学大学院創造理工学研究科,2神奈川大学工学部
当会理事の兼保直樹先生は「現象解明型ーローカル汚染と長距離輸送と放射性エアロゾル」で今年の大気環境学会賞を受賞された。受賞内容は富士山の仕事とは直接は関係していないが、やはり、富士山仲間として嬉しい。他の会場では、和田龍一先生(帝京科学大)や米持真一先生(埼玉環境センター)の発表もあり、関係者の姿が目立った。

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  和田龍一先生(帝京科学大)の発表「山岳道路沿道における窒素酸化物濃度と変動要因の解明

最終日の8日特別集会では、早稲田大学の大河内先生と環境調査会社のグリーンブルー社が、この8月に太郎坊において高度別のPM2.5濃度を観測するため産業用ドローンを使って試験をした成果が発表された。この成果については、年会開催中の9月6日付け環境新聞に大きく取り上げられ、注目を集めていた。

富士山頂では測候所が無人になる夏季以外の季節は、これまではフィールドでの直接観測はできなかったが、ドローンによる鉛直観測で補完することで、より広域・立体的に汚染大気を把握することが可能となり、山頂の通年観測の意義も高まるということらしい。富士山を舞台にした如何にもスケールの大きい試みではなかろうか。いまから来年の本観測が楽しみである。

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 環境新聞(9月6日付)に取り上げられた大河内博・早稲田大学教授とグリーンブルー社の試験観測の記事(クリックで全紙面に拡大)


環境新聞(かんきょうしんぶん):東京都新宿区四谷に本社のある環境新聞社が発行している環境・公害関係に特化した専門紙。1965年11月に環衛公害新聞として創刊。その後、1971年に環境公害新聞に改称され、1993年から環境新聞となっている。毎週水曜日発行。 環境新聞社は、環境新聞を「わが国唯一の環境保全と公害対策の専門紙」であるといっており(実際には他にも環境問題を扱う専門紙は存在するため「唯一」ではない)、環境問題に関する幅広い内容が紙面でとりあげられている。(Wikipediaより)