認定NPO法人富士山測候所を活用する会は、ご存知の通り、研究者、教育関係者などに旧測候所を研究、教育の場として提供するために設立されており、すでに10年を超える実績を残しています。
今年の山頂の観測活動への参加グループ数は、活動開始当初の3倍を超えるところまできており、その活動は年々拡大し、活発になってきています。「インフラを提供すること」が活動の目的であったNPO法人から、「自ら研究・教育も行う機関」へと変身を遂げようとしています。
教育機関としての実例を示しますと、2017年度は成蹊中学・高校宮下敦教諭(現・成蹊大学理工学部教授)と地学部生徒との山頂・成蹊高校インタラクティブレクチャー、社会に向けた環境科学の最前線レクチャーYouTube動画配信など着々と実績をあげており、今年もこれらの企画は予定されています。立教新座中学校・高校の古田豊先生(現ガリレオ工房)の長年に渡る教材開発は、2015年度笹川科学研究奨励賞など実績は外部においても評価されています。
2017年度成果報告会での古田先生の成果発表。データ解析した高校生5人も発表に参加
先日、日本地球惑星連合2018年大会(JpGU2018)の前日となる5月19 日に、全国の高校有志から構成される高高度発光放電現象(スプライト、エルブス、巨大ジェットなど)の研究会が、高知工科大学東京教室で開催されました。10年以上にも渡るこの研究会は、数多くの卒業生を輩出しており、開催場所が東京であったためOB・OGの参加もあり、大いに盛り上がりました。
静岡県立磐田南高校の斎須さんの発表。次の日のJpGU高校生ポスター発表に向けた発表でした
そのOBの一人として、富士山でのスプライト成果を元にJpGU2017で高校生によるポスター発表優秀賞を受賞した橋本恵一さん(当時静岡県立磐田南高校生。現在東京大学1年生)も参加していました。
研究会での橋本さんの後輩へ向けたスピーチ
その話とは別に、東京理科大学三浦和彦教授(本NPO事務局長)のJST高校生受け入れプログラムに参加し、太郎坊データでの研究成果を日本大気電気学会で発表し、国際地学オリンピックにおいても銀メダルを受賞した海城高校生の越田勇気さんも橋本さんと同じ東京大学で肩を並べて勉学に励んでいます。
越田さんの日本大気電気学会での発表
このように本NPOは、高等学校とは異なる新たな教育機関としての役割も果たし始めたことを示していると思います。
もうひとつご紹介したいことがあります。上記研究会には磐田南高校からもう一人、OGの伊藤有羽さんが参加していました。
研究会では伊藤さんも後輩へ向けてスピーチ
彼女は高校時代にエルブスの縞構造などをテーマに研究し、 JpGUにて発表しています。 また、スプライトのハローのテーマでは海外の学会でも発表し、それをきっかけに今はカナダのブリティシュ・ コロンビア大学で学んでいます。
今は大学生最後の夏休み、大好きな富士山の近くで何かがしたいと、地元の富士に戻り、お洒落な宿泊施設「ふじロッジ」の運営を始めたとのこと。
ふじロッジは、もともと会社の保養所だった建物を使ってオープンした民泊
彼女は、今年も何回か富士山に登るとのこと。学芸大スプライトサブチームは、 彼女がテーマとしていたエルブスのリングの縞模様を観測するプロ ジェクトを今年度から始めることもあり、彼女も観測に参加を希望しています。
こういったところの縁ができるのも「富士山」を介した人と人との繋がりと、そして、共に成長できる教育機関の一面も有するようになった「富士山測候所を活用する会」の魅力ではないでしょうか。次々と若い世代が育っていきます。