山頂にいると、富士山が火山であることがよくわかります
というのは、今夏も富士山測候所で活躍されている山頂班の澤田実さんです。
彼は大学時代は火山学科出身です。下の写真はインスタにも入れましたが、最近の山頂から送られた写真です。

富士山頂には火口が2つあります。

大内院

大きい方は大内院、直径600m、深さ250m位です。

小内院

もう一つは小内院、大内院の北にあり直径100m、深さ50mくらいです。

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山頂の地図です。大内院と小内院が見られるでしょうか?

澤田さんは昨年も山頂の「火山噴火の足跡」を見つけてはインスタ用の写真で送ってくださっていましたが、それを2017年11月の行われた国際シンポジウムACPM2017の会場、スライドショーの一部として流したところ、大変面白いという反響がありましたのでその部分を下に再現します。

火山噴火の足跡は多くの火山弾に見られます。まず、火山弾の定義は火口から放出された未固結のマグマが、空中あるいは水中を飛行して、表面が冷えながら着地したものをいいます。地面に衝突痕や火山弾自体が変形したり、割れたりしていますが、冷えた岩塊が飛んだ場合は投出岩塊などと呼び区別します。

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パン皮状火山弾。これも飛び散った溶岩ですが、先に固まった表面を中の柔らかい溶岩が割るため、パンの表面のようにひび割れができます。



83 マグマの足跡

リボン状火山弾または溶岩流がはがれたものです。(これは典型的なものではありません)


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紡錘状火山弾
。噴火で溶岩が飛び散る時にちぎれ飛んで固まった岩塊です。

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溶岩流の流れた断面図: 火山の痕跡、上部の横に繋がっているグレーの岩の帯が一枚の溶岩流。その上下が赤くなっているのは、流出後空気に触れて酸化した部分。クリンカーといいます。(2017年、8月撮影)


なお、英文ホームページ入れたパワーポイントにも、上の写真の説明が英文で示されています。用語については澤田さんが友人の火山地質の専門家である産総研地質調査総合センターの古川竜太博士に確認してくださいました。記して御礼申し上げます。

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国際シンポジウムACPM2017の会場で流されたスライドショー


その後、澤田さんによると

小内院と大内院については、小内院は爆裂火口と思われます。
大内院は私は陥没していると考えているのですが、以前に古川氏からは爆裂火口との説も聞いており、よく分かりません。産総研の資料では、大内院よりも小内院の方が先にあったと記述があり、また、産総研の研究者の中には小内院は火口ではないのではという意見もあるようです(2016年編集富士火山地質図)。
      https://www.gsj.jp/Muse/100mt/fujisan/fuji/index.htm 

一方、ブラタモリでおなじみの小山真人著、「富士山ー大自然への道案内」(岩波新書1437)(2013年刊)によると、山頂火口の「大内院」を覆う噴出物は約2200年前の噴火で降り積もった「湯船第2スコリア」であり、小内院は「2200年前以降に起きた水蒸気爆発の火口らしい」と書かれています。つまり2200年前の山頂噴火で大内院の火口地形ができ、その後起きた水蒸気爆発で小内院ができたのでしょうか。

小内院の形成理由や小内院と大内因の形成時期については、まだわかっていないことが多いのが現状のようです。

「富士火山」はこのように興味が尽きないフィールドです。

(広報委員会)