太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 スタッフブログ

2018年07月

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 東京学芸大学が雷観測のために1号庁舎屋根に設置している大気電場計

今夏から、山頂のさまざまな観測データがホームページ上でリアルタイムで見れるようになりました。2年前から公開している二酸化硫黄(SO2)に加えて、雷・雷雲(大気電場)、一酸化炭素(CO)、オゾン(O3)などの観測データが新たにリアルタイムで配信されるようになりました。

リアルタイムデータの「見える化」により、研究者は測定器の動作状態を容易に知ることができるだけでなく、一般の方にもそのデータの恩恵があります。例えば、大気電場のデータは雷雲による静電気によって山頂での雷活動を知ることができます。

雷観測を行っている東京学芸大学・鴨川准教授は今夏からデータの公開を始めました。
今朝、関係者で交わしたチャットをご紹介しましょう。

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この緑色とバラ色の丸い図やそれぞれのグラフは何を示しているのでしょう?
上段は低感度の大気電場センサーのデータ(活動が活発な雷雲がくると変動する)、
下段は好感度の大気電場センサーのデータ(通常は、雲海や宇宙と大地の間の微小電場変動を示す)です。
上の図は昨日から今日にかけてのものですが、下の赤い線をよく見てください。12:00の近くに下向きの2本の線が見えるでしょうか?
今日はお昼に大気電場の変動を確認すると、確かに謎の負のパルスが2つあります。
雷放電があればこのようなパルスがみられることがありますが、それもないことは確認済み。となるとこれは人工的なもの、つまり測定器の側を人が通ったということがわかるのです。人間には衣服などのこすれることによって静電気が溜まっていますので、近くを通ると測定機が反応します。

鴨川さんが山頂班岩崎班長に問い合わせました。
誰か1号庁舎屋根に登りましたか?
台風養生(台風に備えて建物を補強する作業)でインレットを保護するため登っていました。
以上のやりとりが、鴨川さんから今日(7月27日)入ったチャットです。われわれはこのように人的要因による変動も丁寧に記録をとっており、文書化して後々のデータ解析に役に立てています。

この例が示すように、研究者は山頂班と緊密に連絡を取りながら観測を行っていますが、そもそもこの観測が始まったきっかけも、山頂で雷予報に神経を使って電源の保守を行っている岩崎山頂班長が、鴨川さんに
何か目に見えるデータがあるといいですね
と提案して、リアルタイムモニタリングの構想がふくらんだと聞いています。山頂班もここ数年、メンバーの世代交代が進んでいますが、「見える化」により、これまでの経験・ノウハウをキッチリ伝えることが可能になると期待されています。

今年は異常気象続きで雷も多いことが期待(心配)されているので、これからのデータが楽しみです。

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(広報委員会)



山頂にいると、富士山が火山であることがよくわかります
というのは、今夏も富士山測候所で活躍されている山頂班の澤田実さんです。
彼は大学時代は火山学科出身です。下の写真はインスタにも入れましたが、最近の山頂から送られた写真です。

富士山頂には火口が2つあります。

大内院

大きい方は大内院、直径600m、深さ250m位です。

小内院

もう一つは小内院、大内院の北にあり直径100m、深さ50mくらいです。

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山頂の地図です。大内院と小内院が見られるでしょうか?

澤田さんは昨年も山頂の「火山噴火の足跡」を見つけてはインスタ用の写真で送ってくださっていましたが、それを2017年11月の行われた国際シンポジウムACPM2017の会場、スライドショーの一部として流したところ、大変面白いという反響がありましたのでその部分を下に再現します。

火山噴火の足跡は多くの火山弾に見られます。まず、火山弾の定義は火口から放出された未固結のマグマが、空中あるいは水中を飛行して、表面が冷えながら着地したものをいいます。地面に衝突痕や火山弾自体が変形したり、割れたりしていますが、冷えた岩塊が飛んだ場合は投出岩塊などと呼び区別します。

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パン皮状火山弾。これも飛び散った溶岩ですが、先に固まった表面を中の柔らかい溶岩が割るため、パンの表面のようにひび割れができます。



83 マグマの足跡

リボン状火山弾または溶岩流がはがれたものです。(これは典型的なものではありません)


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紡錘状火山弾
。噴火で溶岩が飛び散る時にちぎれ飛んで固まった岩塊です。

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溶岩流の流れた断面図: 火山の痕跡、上部の横に繋がっているグレーの岩の帯が一枚の溶岩流。その上下が赤くなっているのは、流出後空気に触れて酸化した部分。クリンカーといいます。(2017年、8月撮影)


なお、英文ホームページ入れたパワーポイントにも、上の写真の説明が英文で示されています。用語については澤田さんが友人の火山地質の専門家である産総研地質調査総合センターの古川竜太博士に確認してくださいました。記して御礼申し上げます。

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国際シンポジウムACPM2017の会場で流されたスライドショー


その後、澤田さんによると

小内院と大内院については、小内院は爆裂火口と思われます。
大内院は私は陥没していると考えているのですが、以前に古川氏からは爆裂火口との説も聞いており、よく分かりません。産総研の資料では、大内院よりも小内院の方が先にあったと記述があり、また、産総研の研究者の中には小内院は火口ではないのではという意見もあるようです(2016年編集富士火山地質図)。
      https://www.gsj.jp/Muse/100mt/fujisan/fuji/index.htm 

一方、ブラタモリでおなじみの小山真人著、「富士山ー大自然への道案内」(岩波新書1437)(2013年刊)によると、山頂火口の「大内院」を覆う噴出物は約2200年前の噴火で降り積もった「湯船第2スコリア」であり、小内院は「2200年前以降に起きた水蒸気爆発の火口らしい」と書かれています。つまり2200年前の山頂噴火で大内院の火口地形ができ、その後起きた水蒸気爆発で小内院ができたのでしょうか。

小内院の形成理由や小内院と大内因の形成時期については、まだわかっていないことが多いのが現状のようです。

「富士火山」はこのように興味が尽きないフィールドです。

(広報委員会)




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 故障したO3計のポンプを持参した別のポンプに交換する首都大学東京の学生

今年は、ライブカメラの多点化に加えて、微量ガスのリアルタイムデータの公表にも力を入れていますが、今回は首都大学東京の加藤俊吾准教授と学生さんの仕事をご紹介します。

加藤俊吾・准教授は2007年から、オキシダントなどの微量気体のモニタリングを行っており、そのデータは山頂の大気化学観測の基本的なものとして、12年間の観測研究に貢献しています。今年も、7月7日の霧と強風の中で最初の荷上げ、13日に調整に登って、7月14日から測定が開始され、順調にCO,O3のデータが、ホームページに(1日遅れの準リアルアイム)で公表されていました。

ところが、7月16日に、「オゾン計おかしいですよ」という連絡がはいり、加藤先生と学生は19日に急遽日帰り登山で調整しました。


その結果下の図の上の画面が下のように改善されました。

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 2018年7月18日(上)と19日のCO, O3のグラフ(下)・・・O3の測定は19日の9時から回復している

山頂の観測は、このような思いがけないトラブルが避けられません。

なお、加藤先生のグループは2015年から東京学芸大学鴨川研究室の協力を得てシステム構築を行い、SO2の10分ごとのリアルタイムデータを公開しています。

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 二酸化硫黄(SO2)リアルタイムモニタリングの画面


二酸化硫黄(SO2)ガスは、主に石炭燃焼が発生源で、汚染大気が運ばれてくると濃度が高くなります。夏の富士山頂では、SO2濃度が増加するほどの汚染大気の輸送イベントはあまりおこらないので、通常はほとんど濃度はゼロになりますが、遠方の火山噴火検知や富士山噴火の事前検知に貢献することが期待されています。

また、昨年からは、富士山頂の多くの地点でのSO2濃度の調査を行うために、移動式のガスセンサーを試作し、背負って歩く試験も始めています。

トリミング
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  ポータブルのガスセンサーを山頂で準備し(上)、背負って下山しながら大気を測定(下)・・・キティちゃんの袋のなかに測器がはいっています

大気汚染の研究者として、排気ガスなど、人為起源のSO2の測定を行っていた加藤先生は、2013年の山頂のデータの中に、桜島など火山噴火の影響を発見しました。SO2は火山噴火によっても放出されますが、はっきり桜島の影響であるをすぐ判定できたのは、COや、O3を同時に測定している加藤先生だからできたことです。

一酸化炭素(CO)は化石燃料などの燃焼から放出されます。富士山頂では近くに発生源がないため、汚染大気が発生源地域から輸送されてきているときにはCOが高濃度になります。オゾン(O3)は地表に近い対流圏では汚染大気が光化学反応をすることによって生成します。これらの微量気体の相互関係や、風のデータから、桜島の影響が判定されたのです。

このような背景があったため、最初に書いたような火山ガスの検出の仕事が始まっています。測定結果にはこれからも目を離せません。

(広報委員会)




live
 矢印で囲まれた部分は、3台のライブカメラがそれぞれの方角でカバーしている範囲(画角:54度)を示します
ライブカメラ稼働
From:        鴨川 仁
2018/7/15, Sun 13:45

みなさま

みなさまのお力添えでライブカメラが実稼働しました。
http://npo.fuji3776.net/
今年からは3方向(東西に加え南方向も)の画面となっております。
http://npo.fuji3776.net/info/livecamera.html
10分に1枚中画質
http://npo.fuji3776.net/cug/livecamera_cug.html
1分に1枚 高画質 会員のみ  日付ファイル名でデータはサーバーに保管

また、すべての画像は、1秒間30フレームの動画としても別途記録されております。

昨日から山頂で奮闘していた鴨川先生から待望の「ライブカメラ稼働」のメールが届いたのは13時45分のこと。今朝の10:30頃から外作業に入って約3時間。遂にライブ画像送信が始まりました。

ライブカメラは、富士山測候所を活用する会が学術研究目的のために夏期のみ富士山測候所に設置し、雲や雷の映像などを記録しています。その記録画像は複数のグループが利用していますが、その研究の進展に伴い、今季から従来の東西方向に加えて南方向にもカメラを増設し、3台体制で記録することになったものです。

また、サンプリング間隔も、会員向けについては従来の2分間隔から60秒間隔に短縮。この結果、ホームページでもより広角で臨場感あふれる山頂の雲の動きも把握できるようになりました。8月下旬までの短い期間ですが、日本一高所(標高3,776㍍)のライブパノラマビューをお楽しみください。


先ほど、山頂班・横山班長からも写真を添えてメールがありました。
今シーズン最多の人出です。午後を過ぎても行列が途絶えることはなく、馬の背の下の方まで列が続いています。富士宮口側から来た人と反対側から来た人の間で、並ぶ順番に関して軽いいざこざも・・・

KIMG0905_R

地上は酷暑が続いています。せめて、山頂から送られてくるライブカメラの画像で涼気を感じてください。

なお、ライブカメラの設置・調整には、鴨川グループの鈴木智幸さん、遠藤周さん、村田浩太郎さん、伊藤有羽さんがあたり、山頂班の長門敬明班長、横山勝丘班長、宮城公博さん等が手伝ってくださいました。本当にお疲れ様でした。

(関連ニュースリリース)
2018/07/15  富士山頂ライブカメラの画像配信を開始しました
―よりワイドに, より臨場感あふれる山頂からのパノラマビューをご覧になれるようになりましたー
news_release_20180715

(広報委員会)

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 夏期観測の国際化に対応した英文ホームページのトップ画面

国際化といえば、つい半年前に御殿場市で国際シンポジウムを開催したばかりですが、今年の夏期観測プロジェクトにもその国際化の余波?が続いています。

今年度の夏期観測では以下の3件の国際研究課題が実施され、ネパール人、アメリカ人も富士山頂を目指します。

R03 日中韓同時観測による長距離輸送されたPM2.5/PM1の化学組成解明
Characterization of chemical components of long-range transported PM2.5/PM1.0 by simultaneous observation between Japan, China and South Korea.
(米持真一, 埼玉県環境科学国際センター) Shinichi Yonemochi, Yuichi Horii, Yusuke Fujii,  Shiro Hatakeyama (Center for Environmental Science in Saitama), Hiroshi Okochi (Waseda University), Ki-Ho Lee (Jeju National University)

U05 ネパール高所非電化農村地帯向け風力主体ハイブリッド発電機の実証実験
Demonstration experiment of wind power-based hybrid generator for non-electrified rural areas in Nepal
(HAWA-group、桐原 悦雄、産業技術大学院大学) Etsuo Kirihara, Murakoshi Hideki, Misawa Kazuhiro, Naganuma Hiroshi (Advanced Institute of Industrial Technology), Naresh Maharjan (Fujitsu Software Technologies Limited)

T06 地域資源・ハザードのモデル化と持続可能な管理ため統合的手法開発
Integrated methods for modeling and sustainable management of regional natural resources and hazards (Mt. Fuji, Japan)
Chris S. Renschler University at Buffalo (USA) / University of Tokyo、Taku Nishimura (University of Yokyo)


夏期観測に関する情報はこれまで日本語ページにしか示されていませんでしたが、外国人参加者のために今年から「安全の手引き」をまず英文化して「Safety Guidelines 2018」としてアップしました。2008年に金沢大の松木篤先生のご厚意で作っていただいたものを、現在のマニュアルに合わせてアップデートしたものです。(参加者の一人、Chris Renschler 教授も英語で手伝ってくださることになっています)

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(上)表紙(下)英語版でも図表、写真を多用し、より親しみやすくした


日程の問い合わせも多いので、グループ別の夏期観測日程表も英語版をUPしました。

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 英語表記にした夏期観測グループ別日程表は日本語日程表と同期をとって更新されています

また、昨年11月に御殿場市・時の栖で行われた国際シンポジウムACPM2017の懇親会でも使った山頂風景などのスライドを下記に入れました。山頂班の岩崎さん、澤田さん、千田さん等が普段眼にすることができないような珍しい動植物や風景などを撮影し送信、地上で広報が毎朝 Instagramで発信していた画像をスライドショーにしたものです。

daily
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 富士山測候所の周りで撮った珍しい光景を多数収録

最後になりましたが、7月中旬から配信開始する予定の山頂ライブカメラへもリンクを貼っています。

livecamera2018
 ライブカメラのカバー範囲を示す地図も英語主体。カメラは今年から1台増やして3台体制になり、初めて南方向(相模湾や伊豆半島)もカバーします

このほかにも、細かな改良が進行中です。ぜひご注目ください。そして、どんなことでも結構ですので、ご意見を頂けると有難いです。

(広報委員会)

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