太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 スタッフブログ

2018年11月

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    シュネルさんの宿泊先ホテルの部屋へお迎えに行ったら「小さな図書館」が置かれていました

  10月26日に東京理科大大気科学研究部門主催の講演会で印象深い講演をされたラス・シュネルさんがもう一つのプレゼントを持ってこられました。お手製の「小さな図書館(Little Free Library)」です。「小さな図書館」は、米国ウィスコンシン州に始まる非営利活動で地元の人たちに小さな箱に収められた本を無料で貸し出すというものです。

 シュネルさんは、数年前、スラム街の子供たちのためにと、娘さんに頼まれて作ったのが第一作で、今回頂いたものよりもう少し大きめのもの。毎週50冊の本を入れていたら、近所の人たちも本を入れるようになったそうです。このようにして始まった小さな図書館作り、材料は木やプラスチックなどの廃材(Reclaimed Materials)を再利用しておられます。

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 シュネルさんと作品の「Little Free Libraries」(2018

 「友人の土器屋さんに『一つ作って上げようか?』と冗談を言ったら、彼女が『YES!』と言ったから持ってきたよ」と講演の後でエピソードを明かしてくれました。なんと、コロラドの自宅から、キャスターに乗せてはるばる運んできて下さったのでした。修理用のコーキング材付きで持ってきてくださり、それをホテルから会場まで大河内先生が運び、理科大から事務局の増田さんが受け取って、昨日東京事務所に到着しました。

  シュネルさんが作って設置されたのはアメリカ国内はもとより、カナダ、オーストラリアなど4か国21か所に上るとのこと、その21作目を頂いたことになります。東京事務所では富士山関係の本を収納して、雑然として殺風景だった事務所に彩を添えています。

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   現在は、富士山関係の本を入れてい東京事務所に仮置きしてあります

  来年は、出来れば富士山周辺にと思っていますが、世界遺産で国立公園内で特別名勝でもある山頂付近は許認可の問題でハードルが高く、どこにしようかと頭をひねっているところです。皆様のご意見を事務局へ寄せて頂けると有難いです。

(広報委員会)

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 津村書店が閉店の危機にあることを伝える読売新聞2018年11月13日の夕刊記事

 読売新聞2018年11月13日の夕刊に「書店の歴史 予報士演じる」という副題とともに、気象庁本庁の1階に60年以上にわたって間借している津村書店が、2年後の気象庁移転に伴って閉店の可能性が大きいことが報じられました。ここで、2代にわたるご主人に親身に本を探して頂いた気象予報士の有志が、先代ご夫婦をモデルにした「気象庁の本屋さんに」を演劇にするという記事ですが、本NPOにとっても、見過ごせない記事です。

 本ホームページでもバーチャル博物館の「富士山測候所を知るための施設」の一つとして津村書店をご紹介しています。これまでにも本を探すだけでなく、こちらの出版物を置いていただいてきました。また、出版物については同じくバーチャル博物館の「富士山測候所を知るための書籍」として掲載しています。

 2004年に「変わる富士山測候所」(江戸川大学・土器屋由紀子ゼミ編、春風社)を出したとき、気象関係の出版社ではないにもかかわらず置いて頂けて嬉しかったこと、その後、成山堂の「フィールドで学ぶ気象学」(土器屋・森島済編著、2010)、「よみがえる富士山測候所2005-2011」(土器屋・佐々木一哉編著、2012)と、NPO富士山測候所を活用する会関係の本を出版するたびに置いていただいたことなどを思い出します。

 気象庁の古い知り合いから「津村書店で横積みですよ!」と言われることが本を出した側にとっては何よりも嬉しい情報でした。年末に気象カレンダーを買いに行くたびに、「まだ売れてるよ」・・・とボソッと言ってくださった先代のご主人(2年前に亡くなったとのこと)や奥様が懐かしいです。測候所の活用運動にも陰ながら応援して下っていたと思っています。

  なお、予報士のみなさんの演劇は10月24、25日キーノート・シアター(荒川区、連絡03-3555-9364)とのことです。

(広報委員会)


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 花粉粒子候補第一号!?

富士山測候所を活用する会では山頂の施設を開かれた研究・教育の拠点として広く一般に開放していますが、2015年度からは学生だけを対象にして、教育的観点から学生の自主的な運営による調査研究活動に助成を行う「学生公募」も行っています。

2018年度の学生公募で応募し採択された京都大学農学研究科の三木健司さんから、京都大学の学内のレポート宇宙総合学研究ユニット NEWS 2018 年 11 月号に掲載した寄稿文が送られてきました。ご本人曰く「かなりカジュアルな研究紹介」ということですが、とても面白い読み物となっていますので、ご本人の了解を得て以下にご紹介させていただきます。


富士山と宇宙を花粉でつなぐ

三木 健司
京都大学農学研究科 博士課程
日本学術振興会 特別研究員 (DC2)

生物圏は地上からどの程度離れたところまで広がっているのか?その縦方向の生物圏の広がりを知るために、1970年代ごろからロシア(ソ連)やアメリカを筆頭に、高高度(主に対流圏上部から成層圏下部)における微生物をはじめとした生物粒子の存在を調べる研究がはじまった(Wainwrightら(2006)*1)。これらの研究は、惑星間を微生物が移動しているとする“パンスペルミア説”を研究する宇宙生物学者らにより始められた研究であるが、最近では高高度に上昇した生物粒子が越境長距離輸送にも関係していることが判明したため、地球科学者、特に大気生物学者らにも注目され始めている。

日本でも成層圏下部における生物粒子のサンプリングは行われてきている。その結果、納豆菌などが中国大陸からの黄砂に付着して日本まで辿りつくという研究結果が広く知られるようになり、書籍*2や黄砂により飛来した納豆菌から作った納豆*3なども販売されている。

しかし、現状では、高高度に生物粒子が存在していることが分かっているだけに留まっており、なぜそこまでの高度まで飛散できるのか、どのようなものが飛散しているのかはまだわかっていない。また、このような研究の調査は非常に難しく、どのようにして高い高度から生物粒子を取得するのか(飛行機実験は予算が高い!気球実験は気象や条件により実験機会がかなり限定的!) という問題がある。そこで、これらの問題の解決策の可能性の一つとして、『大気生物学的調査のための富士山山頂における花粉採取実験 (POSTMANプロジェクト)』を立ち上げた。

POSTMANでは富士山山頂に設立された富士山測候所において花粉粒子を取得し、花粉粒子の高高度上昇を捉えることを最終目的としている。富士山山頂は海抜3,776 mであるため、高度に関しては先行研究に比べてかなり低いが、家屋で安定した実験が長時間にわたり行うことが可能であり、かつ富士山は成層火山であることから周囲環境が均一であるため、実験環境としては非常に優秀であると考えられる。採取対象として花粉を選んだ理由は、研究代表者の三木が花粉飛散を専門としているからであるが、他にも以下の理由がある。
  • 花粉は植物が存在しない限り飛散しないので、森林限界以高において採取された花粉は全て高高度への上昇過程にあるといえる。
  • 花粉は捕集した個体を溶液に溶かすことなく識別・カウントできるため、どのような種類が飛散しているのかを花粉の物理的特徴から複合的に解析が可能。
  • 花粉はバイオエアロゾルのなかでも最大の粒径を持っているため、花粉を宿主とした細菌やウイルスが多数花粉粒子に感染している可能性がある。このため、一粒の花粉粒子が多数の細菌やウイルスを“飛行船”のように運搬する可能性があり、細菌・ウイルスの複雑な生態系(ウイルスは生物ではないが)を解明する可能性がある。
  • 上述のように、花粉は最大のバイオエアロゾルである。この大きさから、花粉粒子は長距離飛散することはなく、飛散後すぐに沈着すると考えられている。このため、花粉の高高度飛散を集中的に扱った研究はほとんどないため、新たな花粉飛散の研究を開拓できる可能性を持つ(失敗する可能性も同時に持つ!)
第一回のPOSTMANの実験は、予備実験として2018年9月6日午前11時から翌日7日午前7時までの20時間にわたって行われた。実験方法は、富士山山頂で大気から空気を吸引し、運搬された粒子を粘着性のプレパラートに吹き付け、細胞壁に反応して青紫色の着色反応を起こす溶液とともに封入することにより行った。この実験により、着色反応や形状から判断して、花粉の可能性がある粒子を数粒捕集することに成功した(写真1)。これらが花粉粒子である場合、目視で確認できる形としては(恐らくそして願わくば)初めて、富士山山頂で花粉粒子と思われる粒子の採取に成功したことになる(写真2)。

miki1miki2(写真1) 花粉粒子候補第一号 (写真2)実験メンバーと富士山測候所の岩崎山頂班長

本実験結果の速報は認定NPO法人富士山測候所を利用する会のホームページ上に公開されている。URL:https://npofuji3776.jimdo.com/研究速報2018/研究速報-7-三木健司-京都大学/
今後、この予備実験の経験をもとに、より建設的な実験を行えるよう計画する予定である。

謝辞

・本実験は認定NPO法人「富士山測候所を活用する会」が富士山頂の測候所施設の一部を気象庁から借用管理運営している期間に行われました。また、認定NPO法人「富士測候所を活用する会」から学生実験への資金支援をいただきました。
・本実験はJSPS科研費18J12315の助成を受けたものです。

注釈
*1 Wainwright, M., Alharbi, S., Wickramasinghe, N.C., How do microorganisms reach the stratosphere? (2006) International Journal of Astrobiology
*2 岩坂泰信, 空飛ぶ納豆菌, PHP サイエンスワールド
*3 そらなっとう, 金城納豆食品


なお、注釈にある岩坂泰信氏は当NPO法人の理事であり、2012年5月に開催された特別講演会で「3000m上空で見つかった納豆菌について思う:北東アジア域の大気監視・管理」と題して、大陸からはるか上空を渡って飛んでくるロマンいっぱいの納豆菌についてお話していただきました。

また、本実験の結果は2019年4月の国際学会 "The surface ocean - lower atmospheric study Open science conference"で発表予定とのことです。2019年度の富士山測候所夏期観測の公募は12月1日にHPで告示されます。読者の皆さまも、宇宙に一番近い研究所ー富士山測候所の利用をぜひご検討ください。
(学術科学委員会・広報委員会)





 
 富士山頂のご来光 2018年8月22日(土)早朝撮影 

まずはYoutubeの動画をご覧ください。再生時間は1時間以上もありますが、不思議と見ていても飽きません。今年の夏、山頂で試験的に新しいカメラでご来光を撮影したときのものです。真っ黒な雲の切れ目から太陽が少しずつ現れて、次第にまばゆいばかりに明るくなっていく様はまさに感動ものです。

さて、このブログの読者はすでにご存知だと思いますが、NPO富士山測候所を活用する会では有人観測を行っている夏の間は、山頂のライブカメラの静止画を一般公開しています。日本最高地点のライブカメラは富士山の気象などを知ってもらうアウトリーチプログラムとして活躍しているほか、主目的である学術的用途では富士山頂における大気電場の山岳効果の解明に決定打を与えたデータであり、火星の雷放電の研究に繋がる研究としてその成果は計り知れません。

そのカメラ、以前のブログ記事でも紹介したようにすでに販売終了しているカメラであり、入手困難かつ後継機種は上位機能であるものの、NPOの財政事情では複数台を購入するのは厳しい状況になりました。また、このような防犯カメラは地上の一般社会で使われることを目的としているため、山岳での設置や維持管理には手がかかり、次世代型のカメラを探し求めていました。

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 これまで使っていたライブカメラ。すでに製造は中止しており、故障になる度にネットオークションで取り寄せていた

そこへMORECAブランドで知られる防犯カメラの気鋭企業CHO & Company社との共同研究の話が今夏に持ち上がり、今年のライブカメラ運用終了後に、来年に向けて短時間ながら運用テストを行いました。耐久性などのテストはできませんが、画質の確認、設置の手間に関する確認はできました。

設置はきわめて簡便で、カメラの装着後、電源をコンセントを入れるだけで動作します。ピントや望遠、明るさの調整などは遠隔ですべてできてしまいます。従来のようにPCや専用端末が必要なく、カメラだけで設置がすむというのは我々山岳科学をやるものにとっては非常にありがたいお話です。家庭用や業務用として使用するならば、設置が楽というのは専門の業者に依頼しなくても設置できる魅力があるかと思われます。

今回のテストでは、設置したカメラによる動画の画質と他のデジカメで撮影された画質の比較なども同時に行い、高画質のデジカメと感度まで遜色がないことも確認できました。このような画像が昼夜問わず動画で得られるというのは驚愕というべきものでしょう。

  
富士山頂からの夜景(御殿場市方面を望む)。夜景ながら雲の動きが確認できます。2018年8月21日(金)夜撮影 

来年からこのカメラを使った継続的な長期実地試験を予定しています。連続した高画質映像による学術的な意義ははかりしれません。そして、皆さまにもどのようなライブ画像がお見せできるでしょうか?来年の夏をご期待ください。

(学術科学委員会)

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