太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2019年12月


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 本NPOの鴨川理事と加藤理事の写真も交えて研究を紹介


『トランジスタ技術』(実用性を重視したエレクトロニクス技術の専門月刊誌)の臨時増刊としてCQ出版社から2019年12月1日発行の 『エレキジャックIOT』に 
~サブGHzデータ通信 導入事例 その1、ELTRES富士山頂から3分毎に24時間データ送信~
と題して、本NPOを活用した事例の記事が取り上げられています。



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ITUジャーナル2019年10月号 に掲載された論文


また同じ通信技術の活用として
ITUジャーナル(電気通信・放送の世界基準(ITU勧告)の制定動向、ITU関係諸会合報告の解説記事などを中心に、最近の話題などを載せる月刊誌、日本ITU協会発行)2019年10月号に論文が掲載されました。


(lでもご紹介いたしましたので詳細はそちらをご覧ください。)

「子供の頃の技術は新幹線とレドームだったが、
富士山測候所はその役目を終えたいま新たな進化を遂げているのを感じる。
自然界の富士山と人類の未来への調和が見えてくるのが楽しみ」のフレーズが
着々と実現化している証拠でもある論文です。


興味あるかたは、是非雑誌をご覧ください。


(広報委員会)


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   東京理科大ポルタ7階で行われたデータ検討会

東京理科大学の総合研究院大気科学研究部門と
当NPOが主催する「富士山大気観測2019データ検討会」が
12月14日(土)に神楽坂のPORTA会議室で行われました。 

このデータ検討会は、NPOが富士山頂の夏季観測を始めて以来の年末の恒例行事になっています。
初期の頃には「夏の間に苦労してとりためたデータを整理して、卒論、修論などにまとめる一歩手前の検討段階でお互いに議論しあう」のが主要な目的、ということでした。

当時気象研究所の五十嵐先生(現京都大学)が科研費基盤研究Aの一つの行事としてスタートし、
理科大の三浦先生の山岳大気科学研究部門(当時)によって引き継がれました。

最近では長年の蓄積の上にまとまった内容が濃い発表も目立つようになって、
非常に聴きごたえのある講演も増えています。

早稲田大・大河内教授は、徳島大・竹内教授と熊本大・戸田教授の研究を併せて紹介されましたが、
今後各々の学会で発表される内容のものでした。

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2019データ検討会プログラム

データ討論会の参加者は38名。発表者はベテランの先生から大学4年生まで、幅広い研究者で構成されていました。1人の持ち時間は、発表と質疑応答合わせて15分。13:00から始まり5時間開催されました。

「5時間も?・・・長そう」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、なんと予定では45分間取る予定のコーヒーブレイクも、30分に時間を削ってまで行っていました!!  白熱した “アッ”という間の充実した討論会でした。

その討論会の内容をホンの少しだけお伝えします。
2019年7月23日に発生した停電(御殿場落雷による山頂の停電)については、こんなやりとりがありました。

この停電の直後にCO2濃度が急増したことを首都大の辰巳さんが話すと、座長の帝京科学大の和田先生から「実はNOy濃度もこの頃上がってます」とコメント。早稲田大の山脇さんも「VOCs濃度も上がっている」・・・と、次々に声が上がります。

最終的に本件については、この日の不安定な気象条件のなかで「何か」あったのだろう、これから検討しようということになりました。富士山を足場にいろいろな角度から観測している本NPOならではの議論の特色です。

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 データ討論会の様子、会場は活気で溢れていました

最後に、理科大の三浦先生が総合討論で、今年の夏の特徴を関係者の意見を聞きながら
まとめてゆきました。
・3号庁舎のインレットのコンタミ?ポータブルセンサーとの比較(8/9)
 感度が低い
・7/23停電(雷活動)以後、化学成分濃度の日較差が大きい
・7/26  ゾンデ。ドローン
   山頂  7時、11時 新粒子生成(金沢大、理大とも)
   太郎坊
         光学的厚さ 太郎坊なし、山頂
・経年変化
   粒子濃度 
   雲水 
       大気中VOCs
   

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三浦先生が、入力されるたびに会場から声が上がり、話題についての花が咲きました。
データ討論会の最後の総合討論は、富士山頂での各研究のデータを照らし合わせて、どのような事象が起こっているのか話ができる貴重な時間。

富士山頂の測候所という同じフィールドにおいて様々な分野研究がなされ、そのデータを研究者同士で共有、意見交換できるという点がとても印象深いものでした。学会の発表とは異なり、まさにこのデータ討論会の醍醐味だと思いました。

富士山測候所は、研究環境だけでなく、研究者のヒト同士の繋がりを広げてくれる場所でもあるのだ、と今回のデータ討論会に参加させていただき発見した次第です。

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記念写真をパシャリ!

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もちろん検討会の締めくくりは懇親会!!

(リポーター:ボランティアスタッフ 小林千夏) 



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 鴨川先生から送られた長尾教授撮影の三保半島からの富士山

12月13日、東海大学海洋研究所長の長尾年恭理事から素敵な写真が送られて来たのでブログに上げさせていただきました。(Instagram“インスタグラム”にもありますのでご覧ください。)

富士山の素晴らしい写真や野中到や千代子の情報など
皆様の温かい思いやりと色々なご支援で本NPOは成り立っているのだと
再認識させて頂いております。

12月に入りいよいよ今年もあと僅かとなりました。
令和元年となり、本NPOも設立から13年目、沢山の試練もありましたが
沢山のご協力を得て測候所を活用した研究者も5000人を無事達成することができました。
 
残すところ今年も後わずかですが、
年末までには会員の皆様に
会報誌の『芙蓉の新風 No14』をお届けしたいと思っておりますので
もうしばらくお待ちください。

(広報委員会)

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  大学女性協会の奨学生として司会者から紹介を受ける鈴木さん

2011年から2015年の間夏の富士山で活躍した東京学芸大学 (当時)の鈴木裕子さんを覚えている方は多いと思います、彼女は大学院修了後、第58次南極地域観測隊の越冬隊員として、南極観測に参加し2018年3月に帰国後は情報・システム研究機構国立極地研究所の広報室に特任専門員として勤務しています。

メーリングリストでもご連絡しましたが、鈴木さんの帰国後の報告会の一つが11月13日、津田塾大学千駄ヶ谷キャンパス会議室で大学女性協会東京支部講演会として行われました。

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「南極観測の重要性を一般の方々に知らせる」ために極地研の広報室にいる彼女の話は大変分かりやすく楽しいものでした。
 
南極の夏(12月から次の年の2月まで)は100人以上が昭和基地に滞在していますが、3月以降になると夜がだんだん長くなり、鈴木さんの属していた「宙空圏」グループの観測が本番を迎えます。第58次の越冬隊員は33名、それぞれの専門は違いますが女性は6名、過去最多だったそうです。

富士山で雷やスプライトの研究をしていた鈴木さんにとって、「雷の発生が少ない」とされていた南極で、実はそうではないのではないかということが知られるようになり、その調査を含めたプロジェクトへの参加でした。HFレーダー観測や、光学観測によるオーロラの観測が中心だったそうです。

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 講演中オーロラの色について説明する鈴木さん

当日の話題は、南極観測一般にわたり、夏の間だけしか船が接岸できないために越冬隊が必要なこと、南極大陸の地理、南極観測の歴史に始まり、昭和基地の生活、白夜から極夜に至る変化、ドームふじ(3800㍍)への小旅行。お湯をまくと一瞬に氷ができて花火のように広がって輝く話。蜃気楼、ペンギンやアザラシの子育ての話、消火訓練や極夜でLEDの光で育てたイチゴの話など、1時間半の講演が短すぎると感じるほどでした。

長めにとってあった質問時間には、物理学者による「ファインマン教科書の間違い」に関するものもあり、良く勉強していることがわかる応答で、富士山で仕事をしていたころの高校出たての可愛い鈴木さんが、いつの間にかすっかりしっかりした社会人に成長していることがわかりました。講演の中でも触れられていましたが、厳しい自然条件にもめげずに富士山頂を利用した経験がこのような進路に結び付いたことは、旧測候所の利活用を続けているNPOにとっても大変嬉しいことです。

富士山を経験した若い人たちが、新しい分野で益々活躍されることを祈っています。

(広報委員会)

【関連記事】鈴木裕子さんは富士山頂でブラタモリに出演されています・・・





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