太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2022年10月

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今年の9月に発売された、この本はまず
「本書は地震学の啓発書ではありません。」
で始まります。
副題はビックデータ活用で予測は可能だ!
です。

啓発書でなければ何でしょう?
5章からなる166ページの渾身の書下ろしは
読み始めたら止まらなくなります。

第1章 大地揺乱の時代
・・・日本は沈没するのでしょうか?
  答えは真逆です。・・・というと? 
第2章 過去の震災に学ぶ
・・・日本が世界でもダントツに地震の多い国であることが示され
   ショックを受けます。世界初の地震学会は日本でスタートしています。
第3章 ビッグデータ活用で地震は予測可能だ!
・・・東日本大震災は地震学者の自信を喪失させましたが、ビッグデータの利用
   を推進しました。 そして、「地下天気図」による予測は可能でしょうか?
第4章 はたして生き延びられるのだろうか
・・・関東大震災、神戸・淡路大震災、東日本大震災という近年の大震災について、
   それそれの死因の違いから始まり、実態を分析してゆくと、
   すべて電気仕掛けの現代社会の落とし穴も見えてきます。
   では具体的にどうすればよいのでしょう?
第5章 富士山は噴火するのか
・・・必ず噴火します。その時世界はどうなるでしょう?

この本は地震研究をいろいろな角度から探求した長尾理事のすべてが、
明快なデータ解析とともに詰め込まれた本と言えるでしょう。
「地震学の啓発書」の部分も各章にちゃんと解説されています(灰色ページ)。
ただ、それだけじゃないのがこの本です!

従って、色々な角度から読むことが可能です。

例えば、日本現代史を地震学者が書き直すと:
・関東大震災(1923年)が引き金になった昭和の大恐慌
・昭和19年(1944年)の東南海地震(大本営が隠したため国民に知らされませんでしたが)は日本の敗戦を早めたに違いない。
・日本が高度成長を遂げたのは、地震活動の静穏期つまり「地学的な平和」が続いた時期と一致する。

などと想像してみることもできます。

まずは、手に取って読んでみることをお勧めします。
購入はこちらから

(広報委員会)



認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは


2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いいたします。

本NPOは、認定NPO法人(認定NPO法人は全NPOの2%しかない)です。
ご寄付に関しては、控除もありますので詳しくはウェブサイトなどでご確認ください。


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     新浦安から(2022年10月8日、長尾理事撮影)
長い雨が降り急に寒くなった10月8日の朝、
長尾年恭理事から綺麗な富士山が届きました。
インスタにも載せています。

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山梨県富士見パノラマリゾートのスキーコースから撮影、2022年10月8日
さらに、山梨県富士見町にお住いの方からも、
今日は特別よく見えて
「富士見からしっかり富士山が見えたのは初めてです」
との情報を頂きました。


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長尾理事の地図によると今日は富士山は北西から北東へ方向ずっと見えていたようです。
先日(9月30日)、甲府地方気象台から報じられた初冠雪は、今回の大雨で洗い流されて
消えてしまったのでしょうか、秋空にくっきりと美しい姿です。

余談ですが、「富士見」という名前の地名は全国で300近くあるとか、しかし、北海道から長崎に及びご当地富士山も含まれているようです。「富士見」の地名からどれだけ富士山が見えたかわかりませんが、長い雨の後に秋空に映える富士山は特別ですね。

(広報委員会)



認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは


2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いいたします。

本NPOは、認定NPO法人(認定NPO法人は全NPOの2%しかない)です。
ご寄付に関しては、控除もありますので詳しくはウェブサイトなどでご確認ください。

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太郎坊ベースの観測装置全景

夏期観測には、富士山頂の測候所で行うプロジェクトと同時に、富士山の麓にある太郎坊ベースで行う観測があります。
1990年代より山頂との比較のため、主として気象庁の太郎坊避難所を利用して、観測が行われていましたが、新たに土地を借りて、太郎坊での通年屋外観測を始めたのは2005年早稲田大学の大河内博副理事長のグループで、夏期しか許されない山頂観測データを補完するのが一つの目的でした。
また、富士山体を4000mのタワーとして利用するという観点も取り入れた同時並行観測も行われていました。その後、2006年より、東京理科大学と電力中央研究所グループが参加。
現在では、山梨大学グループ、京都大学グループ、静岡理工科大学グループ、東京都立大学グループ、帝京科学大学グループ、静岡県立大学グループなど多くのグループが参加し、特に夏期にプロジェクトが増えています。


山梨大学の後藤聡教授グループの「宇宙線ミュオンによる富士山頂近辺の内部構造に関する探索」のように太郎坊が中心のプロジェクトもありますが、山体利用の観点から山頂観測と連動して観測を行っているものも多いです。

今回は、2022年は太郎坊を中心に夏期観測を行った三浦理事長の画像を中心に、太郎坊の観測をご紹介しましょう。

まず、設置されている装置の大半を占めている早稲田大学の観測システムの俯瞰写真です。
夏期集中観測のプロジェクトと通年観測のプロジェクトがあり、それぞれの目的の降水・霧水・エアロゾル、気体試料などの採取が行われています。(詳しいことは次回以降でご紹介します)

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 2022年7月8日 早大観測システム


全体を水平に見ると下のようになります。

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 2022年7月8日 太郎坊基地

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 太郎坊コンテナ

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 2022年9月15日 太郎坊コンテナ

NPOの太郎坊コンテナの中には、東京理科大学の粒径分布測定装置(SMPS,OPC)の他に、青山シビルエンジニアリンググループの全天カメラ用ロガー、帝京科学大・和田龍一理事グループのNOx計、NOy計、東京都立大・加藤俊吾理事グループのSO2計、CO計、O3計も設置されています。

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夫々のシグナルはこちらから送られています。
また、鉄塔の側からみると、先方に倉庫が見えますが、ブル運搬組合から一部を借用しています。

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ご紹介した写真は太郎坊ベース観測サイトの一部ですが、階段を数段上がったところには、旧気象庁時代の施設の小屋が見られます。

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 倉庫(手前)と旧気象庁太郎坊避難所

以上、太郎坊ベースの観測サイトについて、三浦理事長の画像をもとにご紹介しました。
1942(昭和17)年、山頂勤務員の宿泊および荷扱い所として、太郎坊避難所が設置され、山頂勤務交代員の交代勤務のための避難所として活躍し、テレメーター化の地震計が置かれていたこともありました(1987-1995,「富士山頂、有人観測72年の歴史」より)。
太郎坊の利用の歴史も含めて、追々ご紹介しようと思います。


(広報委員会)


認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは


2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
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日本エアロゾル学会の機関誌「エアロゾル研究」に三浦理事長の研究室の査読付き論文が相次いで2件掲載されており、富士山頂の「新粒子」の新しい研究報告として注目されています。
今回は、三浦和彦理事長に執筆をお願いしました。
・9月20日、「エアロゾル研究」に
木村駿、五十嵐博己、三浦和彦、森樹大、岩本洋子、加藤俊吾、大河内博、和田龍一、夏季の富士山頂における新粒子の雲凝結核への成長、エアロゾル研究、37(3)202-211(2022)doi:10.11203/jar.37.202
が掲載されました。
この論文は3月20日に「エアロゾル研究」に掲載された
・五十嵐博己、森 樹大、三浦 和彦、岩本 洋子、大河内 博、和田 龍一、加藤 俊吾:夏季の富士山頂における粒子数濃度の経年変化、エアロゾル研究, 37(1), 36-44(2022)doi:10.11203/jar.37.36、
の続編です。

・東京理科大学のグループは2006年から2019年まで夏期のみですが旧富士山測候所においてエアロゾルの粒径分布を測定しました。前半の論文では直径15-470nmの粒子の粒径別数濃度の経年変化を報告しました(図1)。
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図1 粒径別粒子数濃度の経年変化(五十嵐ら(2022)Fig.3)。14年間に昼、夜ともに約3分の1に減少している。

この14年間に約3分の1に減少していました。特に気体が化学反応でできた(新粒子生成)微小粒子の減少が著しいこと、また、日中、夜間とも減少していることがわかりました。エアロゾルは太陽放射を直接散乱・吸収することで直接的に、また雲の種(雲凝結核)となることで間接的に気候へ影響します。二酸化炭素とは逆に地球を冷やす効果があります。エアロゾルが減少しているということはこれまで二酸化炭素による温室効果を相殺してきた分がなくなるので、より一層の温暖化対策をする必要があります。今後もエアロゾルの観測を継続することが重要です。

・エアロゾル粒子の全てが雲凝結核になるわけではありません。後半の論文では、爆発的に粒子濃度が増加する新粒子生成でできた微小粒子がどれだけ雲凝結核の大きさまで成長するかの報告です。2014年から2019年のデータについて調べたところ、新粒子生成イベントの約50%で雲凝結核が増加し、最大約7倍まで増加したことがわかりました(図2)。これらの原因についてイベント毎に考察しています。
画像2
図2 新粒子生成イベントがある時のエアロゾルの粒径分布の日変化(上)と雲凝結核数濃度(N80)の日変化の例。赤い箇所が濃度が高いことを示す。8時すぎに増加した小さい粒子が雲凝結核まで成長している。雲凝結核数濃度がイベント前の約7倍まで増加している。(木村ら(2022)Fig.2(a))

・これら二つの論文は東京理科大学の修論、卒論を発展させたものですが、本研究は多くの研究者・学生さんの協力を得て行われました。また、NPOを支えていただいている理事の皆様、山頂班・御殿場班の皆様にもご協力をいただきました。共著者は論文を完成する上で一緒に解析、議論したメンバーに限らせていただきましたが、この場をお借りして皆様にお礼申し上げます。

以上、三浦理事長の原稿を掲載させて頂きました。
(広報委員会)



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2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

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富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
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