太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 スタッフブログ

カテゴリ: 研究速報

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 レポートを送ってくれた遠藤周さん(東京大学農学部溝口研究室4年)

今日から10月。富士山測候所の夏期観測が終了して1ヶ月になり、地上はめっきり秋らしくなった。気象庁の富士山頂アメダスによる気温データは、もう0度以下となる時間が多くなってきた。

ところで、富士山測候所の中の室温はいまは何度であろうか?実は、山頂庁舎内で気温、湿度などを測定し、今年の夏の観測が終了したあとも山頂からデータを送り続けているプロジェクトがある。その責任者の遠藤さんからレポートが届いた。

はじめまして!
東京大学農学部溝口研究室4年の遠藤周(えんどうあまね)と申します。

この度は学生公募*として富士山測候所を活用する会のみなさまにご協力いただき、富士山測候所で実験をさせていただきました。遅くなってしまったのですが、今回のレポートを書かせていただきます。

今回は、当研究室が協力して開発している簡易モニタリング機器を使用し、越冬観測に使用することが可能か試験させていただいております。こちらが成功すれば、今後の観測に大いに役立つと考えています。

都会から離れていたり、海外にあるような農地では、通信機能のないロガーを用いてデータを集めることがまだまだ多い。そうした環境では、データを得ることができるのが1年越しだったり、時には途中でトラブルがあってデータが取得できなくなっていることに回収まで気づけないようなことがあり得ます。

富士山測候所でも同様に、通信機器の無いロガーでデータを取ることも多い状況です。そして、冬季には測候所に立ち入ることは出来ません。そうした際に、様々な通信機器と接続できる簡便なロガーがあれば、非常に研究の幅が広がると思います。

こちらの機器「HALKA」は、農業を含め各種観測に使用できる、リアルタイム通信が可能なロガーです。当研究室が企業と共同開発しております。単三電池3本で(最大)1年間稼働し、データの保管とリアルタイム通信を行います。送られたデータはクラウドに送信され、いつでも確認することができます。通信の間隔は1時間ごとから24時間ごとまで自由に設定できます。

センサー接続用の規格,SDI-12に対応しているので、農業関係のセンサーだけでなく様々なセンサーに使うことができます。今回は初めての観測ということで、きちんとHALKAが越冬できるかを精査して、次につなげていこうということになりました。

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 富士山測候所では、外光を取り入れることができる窓は貴重な資源となっている

現状は写真のように、2台のセンサーと2台のHALKAで測候所内の温湿度や気圧の観測を行っています。

集めたデータは以下のサイトで確認することができます。
http://fewls.x-ability.jp/static/chart.html?imei=860585002581923&sensor=VP-4&after=2017-07-24
こちらのHALKAは電池で駆動させています。そこに、METER社のVP-4センサーを取り付けています。1号庁舎2階の中の、気温、湿度、気圧を計測しています。
http://fewls.x-ability.jp/static/chart2.html?imei=860585003206389&after=2017-08-10&sensor=ATM41

atmos41

こちらは、充電池に加え0.3W(7cm x 4cm)の太陽電池を取り付けており、METER社のウェザーステーションATMOS41を取り付けています。こちらは、1号庁舎2階の中の、気温、湿度、気圧に加えて近接している雷を計測しています(雷センサのデータは所得できていますがまだ反映されていません)。

私自身は富士山山頂に行くのは初めてだったのですが、東京学芸大学の鴨川先生をはじめ、富士山測候所を活用する会の方々のご協力の結果無事に機材を設置することができました。

初めての富士山山頂、富士山測候所は非常に新鮮でした。
この度は、こうした機会をいただきまして、本当にありがとうございました。

10周年となった今年の夏期観測は、夏だけでなく通年で観測するプロジェクトが増えたのが特筆された。いわば "第2次越冬観測ブームの到来" の様相を呈している。ご承知のとおり富士山頂に通電しているのは、山頂開所期間中の7月、8月の2ヶ月間だけである。通年観測をする場合は、冬の間、その電源をいかに確保するかが課題となっている。

これまで山頂で行われてきた国立環境研究所による二酸化炭素の観測は、越冬期間中は100個ものバッテリーをその電源として使用するという大掛かりなもの。一方、今回ご紹介したプロジェクトで使用しているのは、わずか単三電池3本だけで最大1年間稼働するという。

様々な通信機器と接続できる安価で簡便なロガーは、富士山のような極地での研究の可能性を大きく広げることが期待できる。これからが楽しみなプロジェクトである。

*学生公募
当NPO法人当NPO法人は、設立趣旨として富士山測候所を学術研究・教育等の分野において広く開かれた施設として有効活用することを目的としています。学生公募助成は、特に教育的観点から、学生の自主的な運営による調査研究活動に対して助成を行うものです。
応募要項はこちらを参照ください。

氏名:向井人史 / Hitoshi Mukai
所属:国立環境研究所 / National institute for Environmental studies (NIES)
共同研究者氏名・所属:
野尻幸宏、寺尾有希夫、野村渉平 Yukihiro Nojiri, Yukio Terao and Shohei Nomura (NIES)
    
研究テーマ:
富士山頂における長期二酸化炭素濃度観測
Study on long-term CO2 observation at summit of Mt. Fuji

成果の概要:
(1) 目的

二酸化炭素濃度は、全球的に増加の一途を辿っている。その人為発生量や自然の吸収量は地域で異なることから、濃度の変動に地域性があることが知られている。研究の対象とした富士山は、日本列島のおおよそ中央に位置し、その山頂は、自由対流圏に突き出している。そのため、山頂において二酸化炭素濃度の長期観測を行うことは、北半球中緯度の日本やアジア域のバックグラウンド二酸化炭素濃度の変動の解明に寄与すると考えられる。一方、富士山頂は夏期(7-8月)のみ通電する通年観測が困難な場所である。このような地点において通年観測できるシステムを構築することは、今後、電力の整備が未発達な地域において応用できると考えられる。
このように、本研究では富士山頂において、省電力で観測可能な二酸化炭素濃度観測システムの構築をしながら、アジアの中緯度の二酸化炭素の長期観測を行うことを目的とした。

(2) 結果
①二酸化炭素濃度観測システムの構築

CO2計システムの雷対策の一つとして、イリジウム通信アンテナが設置してある3号庁舎北側に位置する貯水タンク基礎鉄骨、3号庁舎基礎鉄骨、2号庁舎基礎鉄骨を電気的に接続した。
②二酸化炭素濃度の長期観測
 2013年8月末から2014年7月末まで1年を通して、2013年夏期に充電した100個の鉛蓄電池から得た電気により、22~24時に富士山頂の二酸化炭素濃度を計測できた。2013年8月末から2014年7月末に計測された二酸化炭素濃度推移は、過去3年間観測された結果と同様であった。すなわち晩夏まで低下し、その後、初夏まで増加し、再び低下した。2014年に観測された最も高い濃度は約406ppmで、最も低い濃度は約396ppmであった。これは昨年の最高値(約403ppm)、最低値(約393ppm)より約3ppm、山頂で観測を開始した2010年の最高値(約396ppm)、最低値(約386ppm)より約10ppm高かった。
落雷の影響により、2014年8月1日から18日の間は、CO2計の観測が停止した。

(英語表記)
Long term atmospheric CO2 concentration measurement on the top of Mt. Fuji (3776m) has been operated by an automatic CO2 measurement system developed by NIES (National Institute for Environmental Studies) since August 2009. The system is designed for remote areas where the environmental condition is harsh from the observational point of view. Now because we concluded that the measurement system became stable and reliable enough, we shifted into a regular operation in summer, 2012.
 During summer, we operate maintenance including charging the 100 Pb batteries to have the system prepared for winter season when the ordinal electricity is not used.

研究成果の公表:

201410月 気象学会発表




研究テーマ:
富士山頂にお富士山頂における一酸化炭素,オゾン,二酸化硫黄の夏季の長期測定
Long term observation of carbon monoxide, ozone, and sulfur dioxide during summer at the summit of Ft. Fuji


氏名:加藤俊吾 Shungo KATO
所属:
首都大学東京 Tokyo Metropolitan University

研究結果の概要:
富士山頂において大気中の一酸化炭素(CO)、オゾン(O3)、二酸化硫黄(SO2)の連続測定を行い、714日~825日にかけて観測データを得た。COは車の排気ガスや工場など燃焼により発生するため、汚染大気が輸送されてきている指標となる。2014年夏季は、CO60ppb程度と低濃度であることが多く、太平洋からの清浄な大気の影響を受けている期間が長くみられた。7月中、8月中ごろにCOが高くなる期間は汚染大気が輸送されてきたと考えられる。O3は汚染大気が日射にあたることで化学反応を起こして生成するため、COO3の濃度は全体としては同じような変動をする。しかし、728-30日、87日、13日などはO3だけ高濃度となっており、O3濃度が高濃度で存在する高い高度の大気(成層圏)の影響を受けていたと考えられる。また、813日にはSO2が上昇し、桜島の噴煙が輸送されて富士山に到達したものであると考えられる。
(英文表記)

Atmospheric carbon monoxide (CO), ozone (O3), and sulfur dioxide (SO2) were measured at the top of Mt. Fuji during summer in 2014. CO can work as an indicator of transport of polluted air. In most of cases, CO and O3 show similar concentration change. Around July 28-30, and August 7 and 13, only O3 was high concentration. During these periods, air at high altitude containing high O3 transported to Mt. Fuji. High SO2 concentration was observed on August 13. This high SO2 was expected to be transported from eruption of Mt. Sakura-jima.

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研究成果の公表:
20153月 日本化学会発表予定


氏 名: 坂本強 Sakamoto Tsuyoshi
所 属: 日本スペースガード協会 Japan Spaceguard Association


共同研究者:


浦川聖太郎 Urakawa Seitarou 日本スペースガード協会 Japan Spaceguard Association  

吉川  真 Yoshikawa Makoto   宇宙航空研究開発機構 Japan Aerospace Exploration Agency

   
研究テーマ:  富士山測候所のスカイコンディション調査

Night sky at Mt. Fuji Weather Station

研究結果:

富士山山頂は高度3700mと高所にあるので、地球大気による星の光の吸収や散乱は低いと期待される。しかし、夜間の晴天率は未だ不明であり、天体観測として適したサイトであるか否か不明であった。本研究では、約1ヶ月間全天の雲を監視するカメラを山頂に設置し、夜間の晴天率を調査した。プレリミナリーな結果であるが、天頂付近の晴天率は30%程度であることがわかった。これは同時期の日本国内の天文台における典型的な晴天率よりも高い。 






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写真 1号庁舎屋根に取り付けたスカイモニタ(左)とシステム構成(右)





英語表記:


Mt. Fuji has an altitude of 3776 meters, and at its top the scattering and absorption by the earth atmosphere is expected to be low. However, the investigation on the sky condition has not yet been performed. We present the sky condition of the top of Mt. Fuji, based on the all-sky camera that monitors the clouds. The number of the photometric nights at the zenith are 30% in the nights with available datasets, although it is the preliminary result.

研究成果の公表:

「太陽系小天体への再挑戦」研究会で発表する。来年度以降の結果と合わせて論文にまとめたい。

(参考)プロジェクト計画:
富士山測候所のスカイコンディション調査

天体(恒星や銀河)の構造やこれらの形成進化、さらに天文現象を理解するためには、様々な波長域においていろいろな観測量の時間変化を追跡することが基本である。近年、サイト調査が実施され、マウナケア(ハワイ)やアタカマ(チリ)など、低地では閉じられた大気の窓での観測でさえ可能な場所が発見されてきた。しかし、これらのサイトは特定の地域に集中しており、特定の天体を連続的に観測することは不可能である。特に、ハワイの次に夜がくるのは日本であるにもかかわらず、日本では観測困難な波長域がある。富士山山頂は超高所であるので、低湿度かつ青い光の散乱の少ない地域である。そこで我々は本年度、富士山山頂のサイト調査を行い、現場を見て可視赤外線域での観測を実施するための準備を行いたい。







氏 名: 大河内 博 Hiroshi Okochi
所 属: 早稲田大学 理工学術院 School of Science and Engineering, Waseda University


共同研究者氏名・所属:


緒方裕子(早稲田大学 理工学術院)

皆巳幸也(石川県立大学 生物資源環境学部)

米持真一(埼玉県環境科学国際センター)

竹内政樹(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)

香村一夫(早稲田大学 理工学術院)

Hiroko Ogata (School of Science and Engineering, Waseda University)

Yukiya Minami (Faculty of Bioscience and Environmental Science, Ishikawa Prefectural University)

Shin-ichi Yonemochi (Center for Environmental Science in Saitama)

Masaki Takeuchi (Institute of Health Biosciences, The University of Tokushima Graduate School)

Kazuo Kamura (School of Science and Engineering, Waseda University)

    
研究テーマ:

富士山体を利用した自由対流圏高度におけるエアロゾル-雲-降水相互作用の観測

Observation of aerosol-cloud-precipitation interaction in the free troposphere using Mt. Fuji

研究結果:

自由対流圏高度に位置する富士山頂で2012年7月14日から8月24日までエアロゾル(水溶性成分,多環芳香族炭化水素,フミン様物質),ガス(酸性ガス、揮発性有機化合物),雲水,雨水の観測を行い,日本上空のバックグランド濃度の測定を行った.さらに,今年度は新たに構築した酸性ガス自動モニタを用いて,富士山頂および富士山南東麓太郎坊における酸性ガス(塩化水素,亜硝酸,硝酸,二酸化硫黄)の連続観測を試みた.

図1に,2012年7月30日から8月6日までの約1週間,富士南東麓太郎坊における酸性ガス濃度を30分毎に自動分析した結果を示す.酸性ガス濃度は,二酸化硫黄 > 硝酸 > 亜硝酸 > 塩化水素の順に高く,いずれの酸性ガスも日中に高濃度になる傾向がみられた。現在,自動モニタとフィルターパック法で採取された酸性ガス濃度のクロスチェックを行うとともに,この他に得られた試料の分析とデータ解析を行っている.


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英語表記:

We simultaneously collected aerosol, gases, and cloud water at the summit of Mt. Fuji, which is located in the free troposphere, from 14 July to 24 August 2012.  Our objectives were to elucidate background concentration levels of gases (acidic gases and volatile organic compounds), aerosol (water-soluble components, polycyclic aromatic hydrocarbons, humic-like substances), cloud water and rainwater in the free troposphere over Japan, to make clear the characteristics of background pollution in the air mass by the long-range transportation or upslope wind from the base of the mountain during the daytime in the summer, and to ascertain aerosol-cloud-precipitation interactions.  Chemical analyses of the collected samples are now ongoing. We are also analyzing the observation data.


研究成果の公表:


<学会発表>

小林由典,大河内博,緒方裕子:有害大気汚染物質の動態解析と降水洗浄機構(10)-大気中PAHsおよびOPAHsの存在状態と地域特性,第53回大気環境学会年会,2012.9.12-14(横浜)

藤田雅俊,大河内博,緒方裕子:大気中多環芳香族炭化水素の降水洗浄機構と森林樹冠への乾性沈着量の推計(2),第53回大気環境学会年会,2012.9.12-14(横浜)

田原大祐,大河内博,緒方裕子,皆巳幸也:富士山体を利用した雲水科学特性とその濃度支配要因の解明(4),第53回大気環境学会年会,2012.9.12-14(横浜)

磯部貴陽,大河内博,緒方裕子,田原大祐,丸山祥平,皆巳幸也:富士山体を利用した自由対流圏大気中酸性ガスおよびエアロゾルの観測(2),第53回大気環境学会年会,2012.9.12-14(横浜)

宮崎祐樹,磯部貴陽,大河内博,緒方裕子,田中秀治,竹内政樹:富士山頂と富士山南東麓における大気中酸性ガスの連続観測,第50回フローインジェクション分析講演会,2012.11.16(徳島)

【参考プロジェクト計画:

富士山体を利用した自由対流圏高度におけるエアロゾル―雲―降水相互作用の観測

雲はエアロゾルを凝結核として生成し,その成長過程で水溶性ガスを吸収する.雲粒径が臨界直径より小さければ,雲粒は消失して気相にエアロゾルを放出するが,この過程を通じてエアロゾル径を増加させるとともに,水溶性成分を増加させる.雲粒径が臨界直径より大きければ,雲粒はさらに液滴成長して併合衝突により雨滴となって地上に落下する.このエアロゾルー雲ー降水相互作用は,地球温暖化とその環境影響の将来予測の観点から注目されている.本研究では富士山測候所を活用し,様々な大気汚染物質のバックグランド濃度を解明するともに,バックグランド汚染の実態解明を行い,エアロゾルー雲ー降水相互作用の解明を試みる.





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