太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 スタッフブログ

カテゴリ: 研究速報


氏 名: 大河内 博 Hiroshi Okochi
所 属: 早稲田大学 理工学術院 School of Science and Engineering, Waseda University


共同研究者氏名・所属:


緒方裕子(早稲田大学 理工学術院)

皆巳幸也(石川県立大学 生物資源環境学部)

米持真一(埼玉県環境科学国際センター)

竹内政樹(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)

香村一夫(早稲田大学 理工学術院)

Hiroko Ogata (School of Science and Engineering, Waseda University)

Yukiya Minami (Faculty of Bioscience and Environmental Science, Ishikawa Prefectural University)

Shin-ichi Yonemochi (Center for Environmental Science in Saitama)

Masaki Takeuchi (Institute of Health Biosciences, The University of Tokushima Graduate School)

Kazuo Kamura (School of Science and Engineering, Waseda University)

    
研究テーマ:

富士山体を利用した自由対流圏高度におけるエアロゾル-雲-降水相互作用の観測

Observation of aerosol-cloud-precipitation interaction in the free troposphere using Mt. Fuji

研究結果:

自由対流圏高度に位置する富士山頂で2012年7月14日から8月24日までエアロゾル(水溶性成分,多環芳香族炭化水素,フミン様物質),ガス(酸性ガス、揮発性有機化合物),雲水,雨水の観測を行い,日本上空のバックグランド濃度の測定を行った.さらに,今年度は新たに構築した酸性ガス自動モニタを用いて,富士山頂および富士山南東麓太郎坊における酸性ガス(塩化水素,亜硝酸,硝酸,二酸化硫黄)の連続観測を試みた.

図1に,2012年7月30日から8月6日までの約1週間,富士南東麓太郎坊における酸性ガス濃度を30分毎に自動分析した結果を示す.酸性ガス濃度は,二酸化硫黄 > 硝酸 > 亜硝酸 > 塩化水素の順に高く,いずれの酸性ガスも日中に高濃度になる傾向がみられた。現在,自動モニタとフィルターパック法で採取された酸性ガス濃度のクロスチェックを行うとともに,この他に得られた試料の分析とデータ解析を行っている.


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英語表記:

We simultaneously collected aerosol, gases, and cloud water at the summit of Mt. Fuji, which is located in the free troposphere, from 14 July to 24 August 2012.  Our objectives were to elucidate background concentration levels of gases (acidic gases and volatile organic compounds), aerosol (water-soluble components, polycyclic aromatic hydrocarbons, humic-like substances), cloud water and rainwater in the free troposphere over Japan, to make clear the characteristics of background pollution in the air mass by the long-range transportation or upslope wind from the base of the mountain during the daytime in the summer, and to ascertain aerosol-cloud-precipitation interactions.  Chemical analyses of the collected samples are now ongoing. We are also analyzing the observation data.


研究成果の公表:


<学会発表>

小林由典,大河内博,緒方裕子:有害大気汚染物質の動態解析と降水洗浄機構(10)-大気中PAHsおよびOPAHsの存在状態と地域特性,第53回大気環境学会年会,2012.9.12-14(横浜)

藤田雅俊,大河内博,緒方裕子:大気中多環芳香族炭化水素の降水洗浄機構と森林樹冠への乾性沈着量の推計(2),第53回大気環境学会年会,2012.9.12-14(横浜)

田原大祐,大河内博,緒方裕子,皆巳幸也:富士山体を利用した雲水科学特性とその濃度支配要因の解明(4),第53回大気環境学会年会,2012.9.12-14(横浜)

磯部貴陽,大河内博,緒方裕子,田原大祐,丸山祥平,皆巳幸也:富士山体を利用した自由対流圏大気中酸性ガスおよびエアロゾルの観測(2),第53回大気環境学会年会,2012.9.12-14(横浜)

宮崎祐樹,磯部貴陽,大河内博,緒方裕子,田中秀治,竹内政樹:富士山頂と富士山南東麓における大気中酸性ガスの連続観測,第50回フローインジェクション分析講演会,2012.11.16(徳島)

【参考プロジェクト計画:

富士山体を利用した自由対流圏高度におけるエアロゾル―雲―降水相互作用の観測

雲はエアロゾルを凝結核として生成し,その成長過程で水溶性ガスを吸収する.雲粒径が臨界直径より小さければ,雲粒は消失して気相にエアロゾルを放出するが,この過程を通じてエアロゾル径を増加させるとともに,水溶性成分を増加させる.雲粒径が臨界直径より大きければ,雲粒はさらに液滴成長して併合衝突により雨滴となって地上に落下する.このエアロゾルー雲ー降水相互作用は,地球温暖化とその環境影響の将来予測の観点から注目されている.本研究では富士山測候所を活用し,様々な大気汚染物質のバックグランド濃度を解明するともに,バックグランド汚染の実態解明を行い,エアロゾルー雲ー降水相互作用の解明を試みる.





氏 名: 池田 敦 Atsushi Ikeda
所 属:  筑波大学生命環境系 Faculty of Life and Environmental Sciences, University of Tsukuba

共同研究者氏名・所属:

岩花 剛(Go Iwahana)

アラスカ大学フェアバンクス校 国際北極圏研究センター(International Arctic Research Center, University of Alaska-Fairbanks)

末吉哲雄(Tetsuo Sueyoshi)

海洋研究開発機構 地球環境変動領域 (Research Institute for Global Change, JAMSTEC)

    
研究テーマ:  富士山の永久凍土研究:研究の第二段階

Permafrost study on Mt. Fuji: the second phase of a research project

研究結果:

本研究の目的は,富士山山頂の永久凍土の現状を解明し,その地温変化をモニタリングすることで,将来,気候変化と火山活動の影響評価につなげることである。2012年は,これまでに山頂域に設置済みの地温および微気象観測システムをメンテナンスし観測を継続した。観測初年度に落雷により冬季のデータが欠落した10m深観測孔に関しては,2年度目にして約1年間分の永久凍土の地温変動を示すデータが得られた。同時に探査深度を30 mまで拡張した電気探査を実施し,掘削孔が及ばなかった深度の永久凍土も調査した。その他のデータも概ね無事に回収することができ,今後,解析する予定である。また,1969年まで火山性地熱活動が地表面において特定できた地点で,新たに深さ3.6 mの観測孔を掘削し,その地点では地熱活動が明らかでなくなった最近約40年以内に永久凍土が発達したことを確認した。さらに詳細な測量を実施し,山頂部における今後の地形変化を観測するための地形図を作成した。

英語表記:

This research is a part of our interdisciplinary research project to understand permafrost on Mt. Fuji. In 2012, we continued to maintain the monitoring systems of soil temperatures and micrometeorological parameters in the summit area. Permafrost temperatures in the 10 m-deep borehole were successfully monitored through the second year, although the data logger failed in the first winter by lightning. Electrical resistivity survey was applied to visualize permafrost below the borehole. The other recorded data were also successfully retrieved and will be analyzed. We dug a new 3.6 m-deep borehole at the site where volcanic heat had been detected at the surface until 1969. The borehole revealed recent permafrost development at the site. In addition, large-scale topographic maps were drawn to monitor topographic changes in the summit area.


研究成果の公表:


学会発表

池田 敦・岩花 剛・福井幸太郎・末吉哲雄・斉藤和之・原田鉱一郎・澤田結基 (2012): 富士山頂の凍土観測(2010~2012 年).雪氷研究大会(2012・福山),福山市立大学,2012.9.26.


【参考】プロジェクト計画:
富士山の永久凍土研究:研究の第二段階

富士山山頂の永久凍土の現状を解明し,その地温変化をモニタリングすることで,将来,気候変化と火山活動の評価につなげることを目的とした研究の一環として,2010年に永久凍土をモニタリングしうる深さ約10 mの観測孔を設置した.2012年度はその観測データや山頂一帯の浅層地温観測データを回収・分析する.さらに凍土分布を明らかにするための物理探査と,山頂部の地形変化のモニタリングのための測量を開始する.






氏名: 三浦和彦 Kazuhiko Miura
所属: 東京理科大学理学部 Faculty of Science, Tokyo University of Science

共同研究者:永野勝裕(東京理科大学理工学部)、小林 拓(山梨大学)、芳原容英(電気通信大学)

Katsuhiro Nagano (Faculty of Science and Technology, Tokyo University of Science)

Hiroshi Kobayashi (University of Yamanashi)

Yasuhide Hobara (The University of Electro-Communications)

研究テーマ:富士山頂におけるエアロゾル粒子と雲凝結核の測定

Measurements of aerosol particles and cloud condensation nuclei at the summit and a base of Mt. Fuji

研究結果:

7月20日から8月23日まで、山頂において、エアロゾルの粒径分布、雲凝結核濃度、ラドン濃度、イオン濃度の連続測定を行った。例として光散乱式粒子計数器(RION KR12)で測定した直径0.3?m以上、1μm以上、5μm以上の粒子数濃度の時間変化を図1に示す。5μm以上の粒子は例年同様、登山客の影響を受け日中高い値を示している。今後、他の要素と比較検討する。

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図1 富士山頂で測定した0.3μm以上、1μ以上、5μm以上の粒子数濃度の時間変化



英文表記:
Size distribution of aerosol particles, cloud condensation nuclei concentration, radon concentration, and ion concentration was measured continuously at the summit during July 20 and Aug. 23, 2012. Figure 1 shows the time variations of concentration of particles larger than, 0.3?m 1?m, 5?m in diameter measured with an optical particle counter (RION KR12).  Concentration of particles larger than 5?m showed high values in daytime by local influence.  More detailed discussion will be done comparing with other elements.

研究成果の公表:

口頭発表

三浦、府川、長岡:気象学会2012年秋季大会、北海道大学、2012.10.3-5

東京理科大学総合研究機構シンポジウム 2012年11月26日 東京理科大学野田校舎(予定)

日本大気電気学会第88回研究発表会 2012年1月9-10日 東京理科大学(予定)

NPO法人富士山測候所を活用する会成果報告会 2013年1月27日 小柴記念ホール(予定)

東京理科大学総合研究機構山岳大気研究部門成果報告会 2013年3月 東京理科大学(予定)

気象学会2013年春季大会 2013年5月15-18日 青少年センター(予定)

地球惑星連合2013年大会 幕張メッセ(予定)

【参考】プロジェクト計画:
富士山頂におけるエアロゾル粒子と雲凝結核の測定
基礎生産性の高い海域から放出される生物起源気体は、海洋エアロゾル粒子の重要な起源である。粒子数が増加することにより、雲は大気の負の放射強制力を増すが、大気境界層には海塩粒子が存在するので新粒子生成は起こりにくく、自由対流圏で生成されると思われる。富士山山頂は年間を通して自由対流圏内に位置することが多いが、大気境界層内の影響を無視する事ができない。そこで、山頂および太郎坊において同時に、エアロゾル粒子の粒径分布、雲凝結核数、小イオン濃度、ラドン濃度の測定、個々の粒子の元素分析を行い、それらの関係について調べる。今年度は新たに山頂におけるAC電磁界の観測を行い、富士山頂付近の雷放電関連現象および世界雷活動、世界電気回路に関する調査を行う。またGPS観測網を用いて富士山頂・周辺の水蒸気量の解析を行う。







氏名: 古田 豊 Yutaka FURUTA
所属: 
学校法人立教学院 立教新座中学校・高等学校  Rikkyo Junior & Senior High School

共同研究者氏名・所属:
古田ゆかり Yukari HURUTA

学校法人立教学院 立教大学 Rikkyo University

研究テーマ:

「理科準備室へようこそ」-富士山頂での教材開発

研究結果:

測候所の状況を把握し、小・中学校、高等学校の教材開発を想定した本活用計画を進めるための事前調査を行った。富士山頂の自然の振る舞いに応じた実験を想定し、理科実験器具等を山頂に運び、空気、放射線、風、雨、雷、光、音など、観察し得る対象の確認、また観測、利用する予備実験を行い、富士山を理解する教材開発の方法と範囲につき可能性を探った。器具類の動作確認と調整、実験操作環境、実験場所の選定、データ取得等を通じ、より体感でき、より定量的な教材開発を進める見通しをつけた。主に次の4項目の実験を行った。


(1) 富士山頂の大気の圧力が平地の約3分の2で空気が薄いことを調べた。

 (a)プロペラで浮上する装置が運べる重量を計り、平地と比較した。

 (b)軽い紙製カップの落下時間を計り、平地での落下時間と比較した。

 (c)空気入りボールを落下させ、弾んだ高さを測り、弾む高さを平地と比較した。

 (d)ヘアドライヤーからの空気の流れの中に浮かしたピンポン球の高さを平地と比較した。

 (e)山頂で袋に詰めた空気の体積が、低地でどの程度変わるかを調べた。

(2) 霧箱内を通る放射線の飛跡を記録した。

(3) 空気の動きを探る仕掛けを工夫した。

(4) 実験の記録方法を複数試みた。 

研究成果の公表

NPO法人ガリレオ工房例会での口頭発表と通信(月刊)への掲載。

本校紀要、物理教育学会等への論文投稿を予定している。

【参考】プロジェクト計画:
「理科準備室へようこそ」―富士山頂での教材開発
富士山頂における自然環境を描写し、教材開発に取り組む。特に、自然現象と理科実験装置とを繋げ、気圧、風、日照、紫外線、放射線、身体計測、天文現象などの学びを促す理科実験教材を開発する。






氏名: 矢島 千秋 Kazuaki Yajima
所属: 
独立行政法人放射線医学総合研究所 National Institute of Radiological Sciences

共同研究者氏名・所属:

保田 浩志 (独)放射線医学総合研究所 h_yasuda@nirs.go.jp

松澤 孝男 (独)放射線医学総合研究所 matsuzawa_2000@yahoo.co.jp

徳丸 宗利 名古屋大学太陽地球環境研究所 tokumaru@stelab.nagoya-u.ac.jp

東又 厚  三樹工業株式会社  sanki@chiba.email.ne.jp

Hiroshi YASUDA, National Institute of Radiological Sciences

Takao MATSUZAWA, National Institute of Radiological Sciences

Munetoshi TOKUMARU, Solar and Terrestrial Environmental Laboratory, Nagoya University

Atsushi HIGASHIMATA, Sanki Kogyo Co. Ltd.

研究テーマ:

宇宙線被ばく線量評価の信頼性向上を目的とした富士山頂での放射線測定

Radiation Measurements at the Summit of Mount Fuji to Improve the Reliability of Cosmic Radiation Exposure Assessment

研究結果:

我々のチームでは、航空機乗務員の宇宙線被ばく線量評価研究の一環として、富士山測候所における宇宙線モニタリングシステムの整備を進めている。本システムは、エネルギー拡張型の中性子レムカウンタ、特注のデータロガー、長距離無線LANユニット、電源ユニットから構成されている。測定データは長距離無線LANにより富士山測候所から富士山麓の施設のパーソナルコンピュータ(PC)へ転送される。富士山麓施設のPCはインターネットにも接続されているため、我々は千葉(放医研)から測定データを取得することが可能である。本年は、新しいバッテリーを電源ユニットに追加した後、8月27日より連続宇宙線モニタリングを開始した。8月27日から10月12日までに得られたレムカウンタ計数率(カウント/時:3時間平均値)をFig. 1に示す。9月中旬以降に得られた値に比べて測定開始直後数日間の計数率のレベルは2倍以上になっている。現時点では、この計数率レベルの差異は、物理的な要因ではなく、ノイズ等が原因ではないかと推察している。今後も数ヶ月間はモニタリングとデータ解析を続ける予定である。

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Fig. 富士山測候所での宇宙線中性子モニタリング結果(8/27-10/12)



3時間毎の計数値平均から求めた計数率(カウント/時)を示す。



表記:

As a part of study on the cosmic radiation exposure assessment for aircraft crew, we have started to develop a system for continuous monitoring of cosmic radiation at the top of Mt. Fuji. The system consists of an extended energy-range rem meter, a custom-made data logger, a wireless local area network (WLAN) unit, and a power-supply unit. The measured data is transferred from the data logger at the Mt. Fuji Weather Station to the host PC at a facility built at a foot of Mt. Fuji via the WLAN unit. Because the host PC is also connected to the Internet, we can acquire the data measured at the top of Mt. Fuji from Chiba (National Institute of Radiological Sciences). In this year, after having added new batteries to the power-supply unit, we started continuous monitoring of cosmic radiation from August 27. The rem meter count rates in count per hour averaged for three hours from August 27 to October 12 are shown in Fig. 1. The level of count rate obtained during several days just after start of the measurement is two times higher or more than that obtained after the middle of September. At the moment, we guess that it is not a physical factor but a noise which caused the discrepancy in level of count rate. Monitoring and the data analysis are going to last several months in future.

研究成果の公表:

次年度開催の日本保健物理学会、あるいは日本放射線安全管理学会等での発表を予定している。

【参考】プロジェクト計画:
宇宙線被ばく線量評価の信頼性向上を目的とした富士山頂での放射線測定

我が国で実施されている航空機乗務員の被ばく線量評価の信頼性を高めるため、日本最高峰に位置する富士山測候所において宇宙線を常時監視する体制を構築し、そのデータから上空の線量を迅速かつ正確に推定できるようにする。本年度は、昨年度の試験運用で5カ月の連続データ取得に成功した経験を踏まえ、ソーラーシステムの導入など電源部の改良を図ることで通年観測の実現を目指す。






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