太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 スタッフブログ

カテゴリ: メディア掲載

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 旧富士山測候所内で撮影中の加藤俊吾・首都大学東京准教授(左)とソニー技術者の西出葵嘉さん(右)

今週9月11日(水)に放送された静岡第一テレビの夕方のニュース番組『news every. しずおか』。この特集で『富士山頂で未来の通信研究』と題して「この夏、日本一の富士山とスカイツリーを結ぶある通信技術の研究が行われていた」と富士山測候所を活用する会の研究が取り上げられました。

旧富士山測候所は当時は職員が常駐する世界一高い観測所といわれていたが、有人観測が2004年幕を下ろした。現在は富士山測候所を活用する会が気象庁から借り受け、全国からひと夏で400人の研究者が訪れ、富士山頂でしか得られないデータを観測している。

実は、今年気象庁のアメダスは障害で4月12日から75日間もデータが停止していたが、NPOの雲の上の研究所には昨年夏から気温を測定したデータを1年間送り続けていた機器…ソニーが開発した新しい通信規格ELTRESの送信機…があった。

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(上)測候所の窓に取り付けられていたELTRESの送信機(下)取り外して動作を確認

ELTRESの電源として使用されていたのは単1サイズのリチウム一次電池わずか6本だけ。これまでの常識を覆す低消費電力である。送信できるデータ量が少ない代わりに、省電力・長距離通信の特長をもつ新しい通信規格で注目されている。

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同じ測候所内で、地球温暖化の指標となる二酸化炭素の通年観測データを衛星で送る装置には100個ものバッテリーが使われている。


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「バッテリーのことをあまり気にせずデータを送り、ちゃんとしたデータがとれる夢のような端末だ。昔は人が常駐していたが、いまは常駐しなくとも環境問題などの社会の大事なデータを観測できる。ELTRESは我々の研究を大きく変えようとしている」(鴨川仁・事務局長/静岡県立大学特任准教授)

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今年は火山ガスを観測するセンサーが取り付けられた。「富士山はいつ噴火してもおかしくない。リアルタイムモニタリングでいち早く危険を察知することができたらと思っている」(加藤俊吾准教授)

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「携帯電話でつながっているエリアは世界の半分だけ。残り半分をELTRESでつなげていきたい」(ソニー荒島さん)

最後にコメンテーターが「子供の頃の技術は新幹線とレドームだったが、富士山測候所はその役目を終えたいま新たな進化を遂げているのを感じる。自然界の富士山と人類の未来への調和が見えてくるのが楽しみ」と締めくくりました。

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(上)小野澤記者と撮影前の打ち合わせ(中)カメラに囲まれてやや緊張気味の加藤先生(下)撮影終了後

とてもわかりやすい番組構成で私たちの研究をご紹介していただきました。静岡第一テレビの関係者の皆さまに感謝申し上げます。

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  撮影終了後、旧富士山測候所の前で
(広報委員会)

R06 富士山頂における一酸化炭素, オゾン, 二酸化硫黄の夏季の長期測定
※WNI気象文化大賞助成
加藤俊吾(首都大学東京) 大気化学/ 継続
富士山頂の測候所に一酸化炭素(CO)計、オゾン(O3)計、二酸化硫黄(SO2)計を設置し、大気中濃度の連続測定を行う。COは汚染大気輸送の指標となる。O3は汚染大気の光化学反応の進行度合いにつての指標となり、実際に大気環境に悪影響を与える物質である。また二酸化硫黄(SO2)は化石燃料燃焼以外にも火山から放出され、噴煙の影響をとらえることができるため、防災の観点から通年観測が望まれる。小型小電力のセンサーによるこれらのガス測定テストも行い、商用電源が利用できない期間での観測を目指す。

U12 ELTRESを用いた富士山頂通年科学計測
加藤俊吾(富士山測候所を活用する会)通信/ 継続
SONY社のELTRESを活用し火山噴火に資する科学データを越冬で取得し通信実験を行う。
本実験は前年度の代表者・荒島謙治(SONY)のELTRES通年通信実験を拡大させたものである。

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 ELTRESによるリアルタイムモニタリングデータはこちらで公開されている




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 旧富士山測候所での研究事例で紹介された 雷雲の静電気を測るためのの装置

『たっぷり静岡』(たっぷりしずおか)は、NHK静岡放送局が静岡県内向けに毎週月曜日から金曜日の18:10 - 18:59に放送しているローカルの情報・報道番組。気象予報士も毎回出演しています。

閉所を一週間後に控えた8月23日(金)の放送。高栁秀平キャスター、そして伊藤麻衣気象予報士が、その前に登山して見学してきた旧富士山測候所の話題をとりあげていました。

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 高栁 秀平キャスターと伊藤麻衣気象予報士

気象庁の気象観測の施設として日照時間を測る日照計や気温、湿度などを測るアメダスの三重系の設備などを紹介の後、測候所が気象庁の気象観測のほかに、企業や大学が研究で活用していることに触れました。

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 気象予報士の伊藤麻衣さんが山の日(8月11日)に剣ヶ峰で撮影したという写真

冒頭の写真は、静電気を計測して雷の危険性を知らせることをめざすため開発研究として紹介された音羽電機工業のLATOM(フィールドミル)で、「登山者の安全に資する開発ですね」とのコメントがありました。

そのほかの研究として日本最高峰のために大陸由来の黄砂、PM2.5の計測やスポーツの高所トレーニング研究や情報通信など、あわせて40のプロジェクトが進行中と。「(富士山測候所に)人が常駐しているのは夏の間だけ、残り一週間ですが事故なく終わって欲しい」と結んで放送は終わりました。

夏期観測はこの一週間後の8月31日(土)に無事終了したことは前回のブログでご紹介したとおりです。なお、放送中、何箇所か気がついた部分がありました。
  • ブログの読者はご存知の通り「富士山測候所」の現在の正式の名称は「富士山特別地域気象観測所」になります。「旧富士山測候所」と呼ぶこともあります。
  • 「現在は施設は気象庁のものでない」ということはなく「現在も施設は気象庁のもの」となっております。
  • NPO法人富士山測候所を活用する会のクレジットが番組中ないためわかりにくいですが、紹介された数々の研究は「NPOが気象庁から旧測候所を借り受けて企業や大学に研究・教育の場として提供している」ことで行われています。
(広報委員会)
R08-4 新型広帯域大気電場測定機器の実証実験 
工藤剛史 (音羽電機工業)  大気電気・気象
晴天静穏時の微弱電場と雷雲による強電場のどちらも同時測定できる計測器を音羽電機と東京学芸大学で共同開発した。その測定器の過酷環境下における実証実験を行う。

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 夏期観測の研究数が過去最多の42件となったことを伝える静岡新聞(2019.9.5)

7月1日(月)から富士山頂で行なってきた夏期観測2019は、8月31日(土)の富士山測候所の閉所をもって62日間にわたる活動を無事終了しました。
関係の皆様のご協力に感謝申し上げます。

13 年目の夏期観測となった今年は、当初36プロジェクトでスタートしましたが、その後期間中に増減があり最終的に42プロジェクト(対前年約40%増)を実施しました。そのうち新規案件は12プロジェクト(全体の約30%)を占め、プロジェクトの拡大傾向に年々拍車がかかっています。大気観測のみならず、医学、防災、通信など幅広い分野で、日本最高峰にある富士山測候所ならではの研究・活用ニーズの高まりを示しているといえます。

トピックスとしては、ライブカメラをストリーミングによるリアルタイム動画配信にしたことが挙げられます。その結果、雲や雷の研究面で飛躍的な進化を遂げたとともに、HP へのアクセス解析結果では富士山頂を目指す登山者の利用も非常に多いことがわかり、安全登山面でも寄与していることが実証できました。

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 今年から動画になったライブカメラは学術研究面で大いに寄与したほか登山者のスマホによる利用も多かった

また、火山活動の監視をするための研究として、微小電力による長距離通信の特長を生かし H2S と SO2の通年モニタリング結果をリアルタイムで配信することを試みており、その成果が期待されています。

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 HPに新設した「観測データ」のページで越冬観測リアルタイム モニタリング データを公開している

その他、複数の高所医学研究グループ の参加があったほか、来年度利用に向けての現地調査などのトライアル利用も実施され、次年度のさらなる利用拡大につながるもの と想定されています。 

なお、研究環境としては 5 月に御殿場市街地に通年で事務所を開設し、業務運営の効率化と利用者の利便性の向上を図った ほか、山頂、太郎坊に次ぐ御殿場地区における第 3 の観測拠点としての活用も開始しました。

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 御殿場の活動拠点は今年から御殿場事務所の開設により大幅に活用範囲が広まった

夏期観測期間中の電源に関しては、大型台 風などの強風の影響で 7 月 23 日および 8 月 16 日の 2 度にわたり山頂庁舎が 6 時間以上停電となる事故が発生したほかは、特に大きな障害もなく安定供給が図られました。また、昨年来懸案となっていた山頂庁舎の補修工事も夏期観測と並行して実施され、 中長期的なインフラ施設の整備を図っています。

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 架空送電線#67号柱ー#66号柱間の補修(2019.8.16 山頂停電のため緊急出動した関電工撮影)

なお、参加者は延べ 425 人で、7月25日には2007年に夏期観測を開始以降の利用者数が延べ5千人を達成しました。研究成果は 2020 年 3 月開催予定の第 13 回成果報告会で発表する予定です。

最後になりましたが、今年度のプロジェクトの一部は、一般財団法人新技術振興渡辺記念会殿からの受託、および一般財団法人 WNI 気象文化創造 センター殿・気象文化大賞の助成により実施されたことをご報告いたします。
(広報委員会)

【関連サイト】
 



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 富士山頂でインタビューに応じる鴨川仁・事務局長

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  東京のスタジオには三浦雄一郎・副理事長(左)とプロスキーヤー登山家医学博士の三浦豪太氏(左)が出演

昨日のブログでは8月30日の「富士山測候所の記念日」から入ったので前後して恐縮ですが、さる8月11日(日)は「山の日」。この日の18:00-18:55、日テレの生放送報道番組『真相報道 バンキシャ!』に、当会の三浦雄一郎・副理事長と鴨川仁・事務局長がそれぞれ東京のスタジオと富士山頂から出演しました。

何しろ、ぶっつけ本番の生放送。当日の山頂の気象状況が悪天候の場合はどうするか?など、事前の調整も大変難しかったようですが、この日、富士山頂は見事に晴れ上がり、陽に光り輝く雲海が広がる絶好の撮影日和になったようです。

内容は地球温暖化が叫ばれているいま、富士山頂で起きている異変…60年前の山頂には8月でもまだ残雪がかなりあったのに、今の山頂ではほとんど見ることができないという現実を対比した衝撃的な映像。そして、それに対応するため富士山測候所で行なっている国立環境研究所の二酸化炭素の観測現場を案内しました。


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 8月の山頂における現在(上)と60年前の積雪状況(下)

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 国立環境研究所が行なっている二酸化炭素の通年観測装置

スタジオの三浦副理事長からは、標高を利用した高山病の研究なども行われていることを補足していただきました。「山の日」にあたり、富士山測候所を活用する会の活動がこのような形で紹介されたということは大変ありがたいことです。

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取り上げてくださいました日本テレビにお礼申し上げます。
ちなみにこの週 (8/5-8/11) の視聴率は教育・教養・実用【関東地区】のジャンルで4位(11.1%)という高視聴率でした。
真相報道バンキシャ! 日本テレビ 19/8/11(日) 18:00-55  11.1%
(広報委員会)

【関連記事】



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 8月5日(月)静岡新聞朝刊1面

富士山頂の旧測候所、活用着々 夏期研究最多へ、運営に好影響
3日午後、旧測候所の一室。山頂に到着したばかりの被験者に機器を取り付け、血液中の酸素濃度や心拍数を測定した上で、歩行時の体幹や骨盤の揺れ具合を調べるテストが行われた。日本登山医学会理事の井出里香医師と鹿屋体育大による高所医学・高所順応の共同研究で、今夏は滑落を引き起こす登山中のふらつきと急性高山病や疲労との相関性などを検証している。(以下省略)

ー8月5日(月)静岡新聞朝刊より  
8月5日、静岡新聞の「顔」をと云える1面トップを占めた井出先生の記事です。記事は、旧測候所2号庁舎で被験者と研究をする井出先生の写真とともに掲載されました。

耳鼻咽喉科が専門の井出先生は、急性高山病の症状であるめまいふらつきの原因について、登山中の滑落事故との関係に着目して長年、日本の最高峰である富士山頂で研究を続け、下山時に事故が多いことの原因の解明などを報告しています。これは、「平地の気圧の3分の2しかない低圧低酸素の環境のため、高所登山の心身への影響を調べる上では富士山が最適な研究サイト」であるためです。

「富士山は一般の観光客も数多く登る山。安全な富士登山の実現のためにも、研究成果を還元してゆく」ことを研究目的とする井出先生は、13年前にNPOが旧測候所の一部を気象庁から借用し管理運営を始めた当初から理事として参加していますが、医師で登山家としての経験から、「医学・医療委員長」として、NPO活動を支えています。

井出先生はまた、医師で登山家ということで、日本で唯一の登山医学に関する専門家の団体である日本登山医学会に所属し、その理事をされています。この学会の研究委員会は登山医学の研究をサポートするものですが、その中で現在3つのプロジェクトが進行中です。

その一つが「富士山測候所活用の推進」で、旧富士山測候所の高所医学研究・高所順応研究への活用を推進させるべく活動していますが、井出先生がそのリーダーを務めています。富士山測候所を活用する会のホームページと連携をとり、日本登山医学会のホームページから積極的に高所医学・高所順応の研究をご希望の方を募集しています。

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 日本登山医学会の研究委員会のページでは、もう来夏の研究計画の受付が始まっている

7月25日に、延べ5千人に達した富士山頂の旧測候所庁舎を利用する研究者。そのほとんどは「山」については素人で、富士山が初めて経験する高所登山となるため、ほぼ3人に一人は高山病などの症状になります。

山頂では、登山家である山頂班が判断して対応していますが、軽い症状の場合は安静や早めの下山をさせますが、重篤になると堀井先生や井出先生と連絡を取りながら、その指導の下に時には酸素吸入などの対応をしています。13年間、無事故で来られたことは、まさに「医学・医療委員会」の井出先生たちと山頂班の連携のお陰と言えます。

今年の夏季観測も中間点を過ぎました。個人情報との関係で具体的には書けませんが、既に井出先生のお世話になって事なきを得たケースもあり、「医学・医療委員会」は閉所するまで気の抜けない時間が続きます。

いつも影のサポーターとして、頑張ってこられた井出先生のご自身の山頂研究に関して今回スポットライトが当たったことを心から喜ぶとともに、今年も8月の終わりまで、無事に終わることを祈っています。

(広報委員会)

R13 富士山頂(3776m)における体幹2点歩行動揺計による歩行バランスの評価と簡易指標の検証
井出里香 (東京都立大塚病院)

平成29年度の研究ではファンクショナル・リーチテスト(FRT)は高度の上昇とともに低下し、動的バランス能力の低下を示した。主観的なふらつきも山頂で有意に高値を示していたことから、登山中のバランス機能のモニタリングや体調管理の簡易指標としてFRT、 主観的なふらつき感 (visual Analogue Scale=VAS)の有用性が示唆された。 

今年度の研究では富士山頂(3776m)における体幹2点歩行動揺計(3軸加速度・3軸角速度センサー)による歩行バランス機能とFRTおよび主観的なふらつき感による簡易評価法との相関を検証する。また歩行時のふらつきと急性高山病(AMS)の重症度との関連についても検討する。滑落事故の要因となる登山中のバランス機能のモニタリングや体調管理の簡易指標になれば、安全な登山にも貢献できるものと考えている。

(参考:登山医学関係プロジェクト2019)
■プロジェクト2019(高所医学)x







 
 

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