毎年5月、7月の開所を1カ月前に控えて、富士山測候所に送電している架空線の点検が行われる。5月25日気象庁で点検に行ったときに、#70-#71間に雪融け水による大量の土砂が堆積し電線高が相対的に低下して危険な状況にまでなっているため緊急の対応が必要との連絡を受けた。
6月1日(金)から基地事務所設営のため、御殿場入りしていたついでに、2日(土)9:30太郎坊で関電工と待ち合わせ、架空送電線の(電線高が低下している)現場へ確認に。
現地は太郎坊から先の御殿場口五合目から徒歩約30分程度。73本ある架空送電線柱の終点に#71、#72、#73の3本があり、ここからは埋設ケーブルで山頂に向かっている。土砂が堆積している現場は#70と#71の間でスパン長は100㍍もあり、数年前には架空線が風の微振動で切断事故を起こしている場所でもある。
想像をはるかに上回る大量の土砂。手を伸ばせば、あと少しで架線に届くほどの高さである。入山者がステッキで触れようものなら感電はまぬかれない。ちなみに電気設備基準では5㍍高を確保することとなっている。
土砂の撤去整備工事は、陸上自衛隊富士学校、御殿場市役所環境課、静岡県自然保護課などに必用な手続きを取り、6月14日から20日まで5日間をかけて実施、架空線高は6.5㍍を確保。富士山測候所はその後、6月27日(月)に商用電源の通電試験を行い、7月1日(金)には無事開所を迎えることができた。少なくとも埋設ケーブル事故で開所が一週間遅れとなった昨年の二の舞は避けることができた。
それにしても富士山では風雪害、雷、小動物、さらにはここ2年間は重機による人為的事故などと、ありとあらゆる種類の電源事故が毎年のように発生している。土砂の堆積により架空送電線が危険な状態になったというのは、電気主任技術者の大胡田さんによると、この10年間では初めてのことだそうである。
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