口頭発表会場の212階段教室(東京理科大学)
NPО法人として富士山測候所で夏期観測を始めたのが2007年7月のこと。観測活動の成果は、毎年成果報告会を開催して発表してきたので、今回は第10回目の成果報告会になる。3月5日(日)、会場は初めて東京理科大学神楽坂キャンパスに移して行われた。
口頭発表会場は212教室。口頭発表件数を増やして午前10時からスタート。ほとんどの研究は何年も継続しているプロジェクトであり、いわば10年間の集大成とでもいえる発表内容が多く、それだけ充実していたと言えよう。
島田幸次郎・東京農工大助教の「日台における国際共同研究」の発表と座長の小林拓・山梨大准教授。
健康影響が懸念されている越境大気汚染の実態解明をするため、東アジア諸国である台湾,香港,中国及び韓国と連携し、国際共同観測のネットワークを島嶼地域と山岳域に作った。その山岳地域の観測所の一つとして富士山旧測候所を活用し、台湾と共同して越境大気汚染の観測を行ってきた。
兼保氏による年賀寄附金配分事業による測候所の保守と大気中水銀の通年観測の試行の発表
年賀寄附金配分事業で行った①山頂庁舎の軽微な傷みについての自主補修と合わせ、②測候所での通年観測の可能性を探るためのケーススタディとして、省電力型水銀濃度センサーを使って調査を行っている。本試験のノウハウをNPO内で共有することで新たな観測につなげていくことが期待される。
京都市立芸術大学の松井教授の発表
富士山測候所の活用は他分野に広がりを見せているが、今回は初めて「芸術」の分野での発表もあり注目を集めた。京都市立芸術大学の松井教授の発表は、宇宙飛行士がガラスボトルに詰めて持ち帰った「宇宙?」を富士山頂に持参いただき、参加された方が各自手に取り、感じたことを書きとめ未来の人類に向けたメッセージとして伝えようというもの。
ポスターセッションの冒頭で概要をプレゼンする桃井さん(東京理科大学)
ポスター発表は222教室で全12件の発表。新しい試みとしてコアタイムの冒頭、ポスタープレビュー(ポスター発表のポイントをスライド1,2枚を使って1分程度の短時間で紹介するもの)を行った。事務局の準備不足から直前になってお願いしたにもかかわらず、どの発表者もポイントを押さえてわかりやすく説明していただいた。その後の発表者と聞き手の間の密なコミュニケーションにつながり、良い企画だったのではなかろうか。
卒業する学生にとっては学生生活最後のイベント。東京学芸大学の後輩に囲まれた東郷さん(右から2人目)は、4月から社会人として富士山で研究した経験も活かせる道に進まれるとか。
参加者は報道関係者、助成団体関係者などを含め99名であった。休日にもかかわらず、全国各地からご参加くださいました皆様に感謝申し上げます。また、運営スタッフとしてボランティアで手伝っていただいた東京理科大学、東京学芸大学の学生の皆様には大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。
最後になりましたが、日本郵便株式会社、トヨタ自動車株式会社「トヨタ環境活動助成プログラム」、NPO法人モバイル・コミュニケーション・ファンド、公益財団法人粟井英朗環境財団(敬称略)の各助成団体には、開催にあたりご後援をたまわりましたことを報告させていただきます。
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