イスララエル・テルアビブ大学・Yoav Yair教授の発表
今年のは米国地球物理学連合AGUとの合同大会ということもあり、海外からそうそうたる面々の研究者が来日した。スプライトの名を一気に世に広めたNHKスペシャル「宇宙の渚」にて活躍したイスララエル・テルアビブ大学・Yoav Yair教授もその一人である。
Yair教授は大気電気の専門家でもあるが、地球の大気電気だけでなく、惑星の大気電気も専門。火星に雷があるか否かは科学者の間では注目の的であり、日本も含めた各国の宇宙先進国が競ってその存在を探している最中という。
雷放電のきっかけになる電気は、地球だと積乱雲であるが、火星では砂塵嵐ではないかと予想されている(もちろんもし存在するならば、であるが)。地球でも砂塵嵐はあり、イスラエルでは砂塵嵐が発生することから、大気電場の測定で、仮想火星環境としての研究が進んでいる。
テルアビブ大学が所有するヘルモン山の山岳大気電場観測データ、砂漠地域の大気電場観測観測データで得られた結果から、砂塵嵐内がどのような電気の分布になっているか、Yair教授らは悩んでいた。
たまたま、Yair教授が富士山での山岳大気電場観測の結果(鴨川、三浦、大河内3グループの共同研究で米国地球物理学連合レター誌に発表)を目にしたとき、まさに富士山で得られた結果とその解釈が役に立つと直感し、今回JpGUでの発表となった。
富士山の山岳大気電場観測は、かねて三浦教授の師匠でもあった関川理科大教授が、その不思議さを1960年代に発表し、世界でも山岳大気電場は地表での測定と異なる、と大きく話題になっていたマイナーながら難題でもあった。
それをNPOの共同研究で解明し、発表したわけであるが、50年以上にわたって未解明だったこの問題。いまこのことを直接興味を持つ人はあまりいない。しかし、火星の雷の基礎研究に富士山での研究が役に立つとは、当時の研究者は夢にも思わなかったであろう。
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