澤田実さん(Facebook より)
まさか、というニュースが飛び込んできました。
ロシア・カムチャツカ半島の地元政府によると、同半島中部のカーメニ山(4575㍍)で17日、日本人男性1人が登山中に滑落し、死亡した。1968年生まれの「サワダ・ミノル」さんだとしているという朝日新聞デジタルニュース(5月18日、20:59)が事務局から送られてきました。
誤報であってほしいという、一縷の望みは絶たれ、本日(5月20日)の東京新聞にも「ロ極東滑落死は登山家・澤田さん」という記事が載り、悲しいニュースは確定されました。
山頂班員としての澤田実さんは2016年の夏季観測から富士山測候所に来られました。ベテランの山岳ガイドでもある澤田さんは、ご出身が火山学とのこと、北大で学生時代学ばれた「火山岩」の見分け方を、仕事の合間にインスタ用の写真として送って下さっていました。
紡錘状火山弾 (撮影:澤田実、2017.8.14)
ちょうど、事務局がPRのためにインスタグラムの入力を始めた2017年7月には、山頂から見事な「紡錘状火山弾」の画像を「噴火で溶岩が飛び散る時に、ちぎれ飛んで固まった岩塊です」という説明を付けて送って下さり、引き続いていろいろな火山岩の写真を頂きました。
パン皮状火山弾。これも飛び散った溶岩ですが、先に固まった表面を中の柔らかい溶岩が割るため、パンの表面のようにひび割れができます。(撮影+説明、澤田実 2017.8.14)
火山の痕跡。上部の横に繋がっているグレーの岩の帯が1枚の溶岩流。その上下が赤くなっているのは、流出後、空気に触れて酸化した部分。クリンカーと言います。(撮影+説明、澤田実、2017・8・13)
この夏の火山岩関係の写真3枚は、11月に行われた国際シンポジウムACPM2017(山岳大気化学・物理国際シンポジウム)において、富士山頂の観測環境の説明スライドとして使われ、高い評価を得ました。英文スライド作成に当たっては、出身の北大研究室の後輩である現役の火山学者に英語名のチェックを頼んで下さるという真面目な澤田さんには頭が下がりました。
また昨年2018年7月25日のブログでは「山頂には火口が2つ? …富士火山について」というタイトルで、大内院と小内院について解説をして下さいました。 澤田さんは、富士山測候所で観測する研究者やNPOの関係者にとって、高所の生活のお世話になるやさしくて頼もしい山頂班員としてだけでなく、火山を教えて下さる先生でもありました。
今回の事故でこのような有能な山頂班員を失ったことはNPO関係者一同、誠に悲しみに耐えません。
上の写真が載っているご本人のFacebookによると、5月9日にご家族に感謝を述べながら、「20年ぶりの海外遠征。ロシア・カムチャッカにあるカーメン峰に登りに行ってきます。帰国は6月1日の予定です」というメールを残しておられます。澤田さんのお帰りを待っておられたご家族の悲しみは察するに余りあります。
心からご冥福をお祈り申し上げます。
(広報委員会)
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