「野中到・千代子資料館」のホームページ。背景写真は明治28年富士山頂剣ヶ峰に建設した観測所の木片で、「二代目所長藤村郁雄氏が本建築工事の折、地下より発見」のメモが残されている。なお、ロゴは野中到が設計した富士山観測所の計画図面から起こしたもの
昨日、ホームページのトップでニュースリリースしましたが、1895年(明治28年)野中到が富士山頂に私財を投じて日本最初の富士気象観測所を建設した日が8月30日で、本日は「富士山測候所の記念日」になります。
私たち「芙蓉日記の会」は本日、新しいホームページ「野中到・千代子資料館」を公開いたします。明治28年の冬期における観測資料、野中到・千代子の年表、写真など多数の未公開資料を、バーチャル博物館の一部に新たに加えて、再構築し全面リニューアルしています。
今回ぜひ見ていただきたいのは下記の、年表、観測資料や写真などの資料です。特に観測資料は、野中到の手書きのデータシートを発見したことはニュースです。データについて、メンバーによる学会発表(日本気象学会2019年度秋季大会、10月28-31日,福岡国際会議場)を予定しています。また、書籍、出版物についても大幅に更新しました。
年表 野中到・千代子の生涯の出来事を大森久雄編『野中至野中千代子「富士案内・芙蓉日記」』の情報などから作成し、富士山気象観測と世の中の動きを併記して時系列に整理してあり、本資料館のインデックスの役割も果たしています。なお、この調査の過程で、これまで新田次郎の小説の記載には事実と異なっているものが少なからずあることもわかりました。
資料 アーカイブは「資料」「書籍・出版物」に大別し、「資料」はさらに「器械・用具等」「文書」「写真」に分類してあります。これらの貴重な資料は野中勝様が所有されているもので、野中邸にお邪魔して撮影させていただいたものです。高精細なカラー画像をこれまでの調査に基づく簡単な説明などのメタ情報を付けて公開し、画像は拡大して見ることもできます。
気象観測資料 野中到・千代子が1895 年(明治28 年)10 月1 日から12 月22 日まで厳冬の富士山頂で2 時間毎に計測した気温、気圧、風速・風向などデータと考えられ、これまで存在が確認されていなかった資料です。大判の集計用紙に万年筆手書きで記入されています。本データを使った調査も進められており、その一部は10 月の気象学会秋季大会で発表される予定です。
写真 1886 年(明治19年)野中到が学生時代に撮った写真から晩年の1947年(昭和22年)頃までのこれまで未公開の写真を多数掲載しています。この写真は1914 年(大正3 年)頃、御殿場滝ケ原野中別宅で撮影されたものです。
資料のうち、書簡、手帳、ノートなどの直筆の文書はまだまだ多数あるのですが、今回のリリースには間に合いませんでした。引き続き翻字や解読作業を行なっていますので、逐次公開する予定です。書籍・出版物 「書籍・出版物」は「著作」「小説」「その他出版物」に分類、「著作」は『地學雜誌』,『氣象集誌』,『気象百年史』などに掲載された野中到・千代子の文献が中心で、J-STAGE や国立国会図書館のデジタルアーカイブの該当著作にリンクを貼り、PDF でご覧になれます。年表の拠り所とした『富士案内 芙蓉日記』(大森久雄編)もここに掲載しています。
このホームページをきっかけにして、一人でも多くの皆さまに高層大気観測の実践的先駆者 野中到・千代子夫妻ひいては富士山頂の観測の歴史を知っていただき、貴重な研究サイトとして富士山測候所の再認識していただければと思っております。
「芙蓉日記の会」
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