(一財)WNI気象文化大賞(第11回)に選ばれた富士山環境研究センター安本勝研究員
今年の山頂観測は、9月3日をもって終了しました。65日間に26のプロジェクトが実施されたなかで、今回は雷による電流を富士山頂で測る研究について紹介します。このプロジェクトは、落雷の際に山頂の旧測候所と山麓をつなぐ送電線内の接地線(アース)に流れる電流を、分割形ロゴウスキーコイルを用いて計測することで、雷現象を観測するものです。
接地線の長さが7km以上もあり、しかも周辺に他の送電線がなくノイズが少ないことから、
他に類を見ない非常に高い感度で雷に起因する電流を観測できます。
山頂で観測中の安本研究員設計の装置
2012年に研究を始めた当初は測候所への直撃雷電流の測定を目的としていましたが、その後、直撃ではなくても、遠方雷、誘導雷、上向き雷放電などの雷現象によるシグナルが捉えられることが分かってきました。なかでも、上向きの雷放電はごく珍しいとされ、夏季の落雷全体の1%に満たないと考えられています。しかし、この発生率は、未だによくわかっていません。
(一財)WNI気象文化創造センターによる2021年度気象文化大賞に選ばれ、
その助成を受けて実施されました。
2021年の夏季観測において、8月18日に負極性上向き雷の直撃雷が測定できました(下図)。
全体で測定は1万回以上できていますが、マニュアル処理出来る量ではないため、
高高度発光現象やLLS情報から絞り込んで解析を進めます。
全体で測定は1万回以上できていますが、マニュアル処理出来る量ではないため、
高高度発光現象やLLS情報から絞り込んで解析を進めます。
今後の解析によって、上向き雷放電を始めとした現象の多角的な理解が進むと期待されます。成果は2022年3月開催予定の第15回成果報告会で発表される予定です。
安本研究員のユニークな手法の研究のこれからにご注目ください。
2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。
また
富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かかるのです。
しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。
そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いたします。
(広報委員会)
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