新海誠監督の最新作に『すずめの戸締まり』というアニメ作品があります。実は新海監督のアニメにはカタストロフを扱ったものも多く、例えば『君の名は。』は彗星(小惑星)の衝突、『天気の子』では異常気象を取り上げています。
 この『すずめの戸締まり』は地震を扱っており、特に2011年の東日本大震災がテーマとなっています。津波による被害の状況なども描かれており、新海監督は震災から10年以上が経過し、今なら公開できると考えたのかもしれません。
 物語は地震とその地震を抑える”要岩”についての伝説が元になっています。題名の「戸締まり」は地震を抑えるための”しかけ”の戸締りを意味している事だけお伝えしておきます。

 以下の民俗学的な考証のページは面白く読む事ができました。


東日本大震災から12年
 2023年3月11日で、東日本大震災発生から満12年となりました。月日の流れるのは早いものです。地震そのものの名前は「東北地方太平洋沖地震」というのが正式名称です。この地震は14時46分に発生。三陸沖の宮城県牡鹿半島の東南東130km付近の深さ約24kmを震源(破壊開始点)とする地震でした。マグニチュード(M)は、1952年のカムチャッカ地震と同じ9.0。これは、日本国内観測史上最大のものでした。
 この地震では、岩手、宮城、福島県を中心とした太平洋沿岸部を巨大な津波が襲いました。 各地を襲った津波の高さは、気象庁検潮所の記録では福島県相馬では9m 以上、岩手県宮古で8m 以上、大船渡で8m以上、宮城県石巻市鮎川で7m以上などとなっています。津波の高さをどのように測定するかと言いますと、公式の値は海岸部におかれた海面と連動した井戸の中に浮きを浮かべて、その上下動を観測して津波の高さを観測します。吊り下げ装置の高さ以上の津波がくると観測が出来なくなってしまいます。そのため、巨大津波の高さは、その後の建物や樹木などに残っている津波の痕跡から求める事になります。ちなみに台風による洪水の記録も同様に浸水の痕跡から求めています。
 また、遡上高(陸地の斜面を駆け上がった津波の高さ)については、宮古市・姉吉地区で国内観測史上最大となる40.5mが記録されています。さらに国土地理院が公開した浸水範囲概況図によれば、今回の津波が、仙台平野等では海岸線から約5km内陸まで浸水していたことが確認されています。
 災害を忘れないためにも、この震災については多くの映像記録が残っていますので、それらを活用しながら、記憶を風化させてはならないと考えています。

3.11はまだ終わっていない
 東北地方太平洋沖地震では、岩手県沖、宮城県沖、福島県沖、茨城県沖で破壊(プレート間の滑り)が発生し、その結果巨大津波が発生しました。現在の状況はこの地震で滑った(破壊した)場所の外側では、より歪が蓄積していると考えられるのです。これは、東北日本という大きなプレートを1枚のテーブルクロスとすると、その真ん中の岩手県沖、宮城県沖、福島県沖、茨城県沖の部分だけを引っ張った事に相当するのです。その結果、テーブルクロスが動かなかった青森県沖や千葉県沖の所には皺が出来ていると考えられます。そのため、近い将来、青森県沖や千葉県沖(房総半島沖)でマグニチュード8クラスの巨大地震が発生すると考えられています。
 2021年12月に内閣府が青森沖の巨大地震の切迫性を指摘したのには、このような背景があるのです。さらに日本海溝の外側(アウターライズと地球科学では呼ばれている領域)の地域でも、巨大地震発生が危惧されています。ちなみにアウターライズとは、海のプレートが折れ曲がって海溝から沈み込む際にできる少し地形的に高い部分(隆起帯)の事で、その部分を震源域とする地震を「アウターライズ地震」と呼んでいます。
 東北地方太平洋沖地震のような巨大地震が発生すると、それと隣接する海溝の外側(=アウターライズ)で、ペアとなる巨大地震が発生することが知られているのです。実際、1896年に発生した明治三陸地震(マグニチュード8.5程度、死者・行方不明者およそ22,000人)と、その37年後に発生した昭和三陸地震(マグニチュード8.1, 死者・行方不明者およそ3,000人)はペアの関係にあり、明治三陸地震とアウターライズ地震の昭和三陸地震で一組なのです。そして東北地方太平洋沖地震に対応するマグニチュード8クラスのアウターライズ地震はまだ発生していないのです。


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地震で数多くの火山が活発化
 さらにこの巨大地震は日本列島全域で火山活動を活発化させました。具体的には浅間山、草津白根山、箱根山、焼岳、乗鞍岳、白山など20個ほどの火山の地下では、地震発生直後から小規模の火山性地震が急増したのです。
 富士山は地震の直後には活動は活発化しなかったのですが、地震の4日後に富士宮市で震度6強を観測した「静岡県東部地震」が発生しました。この地震は富士山の山体崩壊を引き起こす危険性すら存在したのです。
 私の知己の火山学者は最初に何をしたかというと、静岡の自宅から「まだ富士山がそこにあるか」を確認したそうです。富士山はこれまで何度も山体崩壊を引き起こしており、最も最近の崩壊は、およそ2900年前に発生しており、「御殿場岩屑(がんせつ)なだれ」と呼ばれています。最近の研究では、宝永噴火の際にも地下のマグマの「突き上げ」による宝永山の隆起が起き、山体崩壊の一歩手前まで行ったことが明らかになっているのだそうです。

 次の図は3・11の前後でどれくら地震活動が変化したかを示しています。全国的にも非常に多くの地震が誘発された事がわかります。

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富士山周辺の拡大図
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 将来発生が確実な南海トラフの巨大地震は富士山噴火を誘発する可能性が存在する事をぜひ理解して頂きたいと思います。

 (文責:長尾年恭)
(広報委員会)



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