太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

 2023年02月02日のブログで初代気象庁長官の和達清夫博士らによる「深発地震面の発見」についてお知らせしました。

 この深発地震は、今では沈み込むプレートの内部で発生する地震である事が解っています。ただ、沈み込んでいるプレートは、周囲のマントルより重たく、さらに硬いため、地震波が相対的に減衰しにくいという性質を持っています。

 そのため、深発地震面が存在する事により、地震学的に”異常震域”と呼ばれる現象が発生します。常識的に地震が発生すれば震源地の近くで大きな揺れが観測され、遠くになるに従って、揺れは小さくなります。言い換えれば、多くの地震は震源地から同心円状に揺れの強い地域が分布します。

 ところが、深発地震の場合にはそうはならない事があるのです。今回のブログでは、この”異常震域”という現象について説明したいと思います。

異常震域の例

 2007年7月16日に発生した地震では、震源地は日本海中部ですが、日本海沿岸ではほとんど揺れを観測していません。それに対し、太平洋側、特に関東から東北地方で大きな揺れを観測しています。
この地震は深さ約370kmという極めて深い所で発生した地震(深発地震)で、沈み込む太平洋プレートの中で発生しています。地震波は次の図のように選択的に(効率的に)太平洋プレートの中を伝わったのです。
たとえば紀伊半島沖で深発地震が発生しますと、東海地方や紀伊半島ではほとんど揺れを観測せず、この例のようにやはり関東地方や東北地方の太平洋側で大きな揺れが観測される場合がほとんどです。

 ちなみに異常震域や深発地震というものは、決して珍しいものでは無いのですが、時に深発地震がその近傍のプレート沈み込みの浅部延長地域で大地震を誘発するという仮説が存在します。
この仮説を提唱されたのが、東京大学地震研究所教授で、地震予知連絡会会長や東海地震の判定会会長等を歴任された茂木清夫博士(2021年6月に91歳で逝去)だった事から、決して無視できない仮説と考えられています。これは原理的にも深発地震が浅部での大地震の本質的な予兆として理論的に理解することが可能なためです。

異常震域ポンチ絵
プレート内部を効率的に地震波が伝わる模式図。
このような地下構造が異常震域の原因となっている。
(文責:長尾年恭)

長尾理事のブログ(23-10)をお届けしました。
今後も長尾理事ブログは続きますが「シリーズ」として、通し番号は省略させて頂きます。

(広報委員会)




認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは


2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が主体となって立ち上げたNPO法人です。

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