太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

 5月以降、八丈島北西沖、新島・神津島・利島近海、そして6月19日には伊豆大島西方でまとまった地震活動が発生しました。いずれもフィリピン海プレート北部の火山活動に関係した群発地震活動です。

 特に5月14日をピークに発生した八丈島北西での活動は、マグニチュード5.9というかなりの規模の地震が複数発生しました。幸い陸から離れた所での発生であったため、観測された最大震度が3という事もあり大きなニュースにはなりませんでした。

 また5月22日から新島・利島近海でも群発地震活動が発生しました。こちらは利島で震度5弱を観測したため、ニュースでも大きく取り上げられました。実際は八丈島北西で発生した地震のほうがエネルギー的には8倍も大きかったのです。

 つまり社会にとっては観測された最大震度がいくつであったかが、話題の中心となりますが、地球科学的には八丈島北西での地震活動のほうが規模も大きくはるかに重要な意味を持っているのです。

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 伊豆諸島では、1980年代半ばから伊豆半島東方沖で繰り返し群発地震活動が発生し、特に1989年には伊東沖で海底噴火が発生し、手石海丘が形成されました。
 その後、毎年のように主なものだけで12回も発生していた伊豆半島東方沖(伊東沖)での群発地震活動ですが、2006年を最後に群発地震活動が停止したように見えます。

 2000年には、三宅島がおよそ3000年ぶりと思われる大噴火を引き起こし、現在も山頂に巨大な噴火口(カルデラ)が存在しています。この三宅島の噴火では、火口から放出される有毒ガスの噴出が止まらず、結果として4年半もの間、全島民が避難を余儀なくされました。

 さらに6月19日には伊豆大島西方海域で突然群発地震活動が開始しました。伊豆大島も前回の噴火(1986年)からすでに37年が経過しており、過去の活動履歴からは噴火がかなり近い事が予想されています。ただ今回の群発地震はほぼ一日で収束したようで、私としては少しほっとしています。

 地震の並び方を見ますと、伊豆大島の長手方向(割れ目噴火の方向)とほぼ一致している事がわかります。この方向にマグマが貫入しているのかもしれません。

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 そしてこのフィリピン海プレートの最北端には我らが富士山が位置しています。幸い現在の富士山に噴火の兆候はありませんが、富士山は人間で言うと二十歳ぐらいの極めて若い火山です。富士山がそれほど遠くない未来に噴火することは100%確実というのが火山学者のコンセンサスです。

 この地域は、かつては「富士火山帯」とも呼ばれていたのですが、現代では境界が曖昧なことや、マグマの発生の仕組みを考えるとあまり意味が無い分類という事から、「火山帯」の名前はほとんど使われなくなっており、中学や高校の教科書からも消えているのが実情です。


参考文献

田沢堅太郎, 広域応力場と伊豆大島の割れ目噴火との関係, 火山第 41巻 (1996) 第 5号 203-214頁

https://www.jstage.jst.go.jp/article/kazan/41/5/41_KJ00001052369/_pdf/-char/ja


(文責:長尾年恭)
(広報委員会)
認定NPO法人富士山測候所を活用する会とは

2004年に無人化され、いずれ取り壊しの運命にあった旧富士山測候所。
富士山測候所を活用する会は、この施設を国から借り受け研究・教育の
拠点にしようという構想で、2005年に大気化学や高所医学などの研究者が
主体となって立ち上げたNPO法人です。

また富士山頂という厳しい環境の中、その修理費・維持費や、運営費など
年間3000万円という莫大なコストが掛かるのです。

しかしながら、資金面に関しては、
公的補助もなく研究利用費だけで運営しております。

そこで、皆様からご支援、会員になっていただき未来へ
つなぐ研究の手助けをどうぞよろしくお願いいたします。

本NPOは、認定NPO法人(認定NPO法人は全NPOの2%しかない)です。
ご寄付に関しては、控除もありますので詳しくはウェブサイトなどでご確認ください。


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