この度の石川県能登地方を震源とする地震により犠牲となられた方々におくやみを申し上げるとともに、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。


1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」(気象庁が1日に命名)の記事が新聞のトップを埋め、TVでも毎日報道されています。
その中で、1月4日放送のテレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル:震度7、元旦から襲った地震と津波、震災から3日目・・・被災地は、能登の地震メカニズム」
に長尾年恭理事がゲスト解説で出演しました。
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 1月4日放送 テレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」より
刻々と変わる被害状況の実況の合間での放送で、がれきの山の中の現場と交互に、キャスターやアナウンサー、コメンテーターからの質問にスタジオで以下の2つのポイントについて長尾理事が答えます。
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 1月4日放送 テレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」より
ポイント1 日本海側で起きた最大級規模の地震について、発生原因は地下深くの液体か?
ポイント2 石川県で34000人近くの避難者が 避難所に今必要なものは?

Q:今回の地震は日本海側で最大級と言われます。その特徴は? 原因として、群発地震があったのでしょうか?
長尾:能登半島北部では群発地震活動が数年前から開始していました。能登地方では、2020年12月から2023年2月までに506回の、震度1以上の有感地震が起きていました。また、有感地震は約500回ですが、それ以外に無感地震は14000回以上も起きていたのです。
2007年3月に能登半島の西側沖でマグニチュード7クラスの地震が起りました。その東側が割れ残っていたのです。今回そこで、群発地震が起きてそれが引きがねになったと思われます。東日本大震災はプレートの沈み込みによる地震ですが、今回の地震はプレート内部の断層のずれ(逆断層型)と思われます。能登半島周辺は、日本海東縁のプレート境界に近く、活断層も多く、ひずみを留めやすいといわれています。
2014年には、日本海での地震断層について、国交省有識者会議で議論されていましたが、今回はその中で想定されていた断層全体が破壊し、最悪のシナリオと思われていたことが起こったということができます。
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 1月4日放送 テレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」より
Q:その断層は専門家に知られていた断層でしょうか? また、地下水などが関係したというのは本当でしょうか?
長尾:この海底活断層は専門家の間では良く知られていました。また、群発地震には地下水が関係している事も観測から分かっていました。ちなみに研究者は地下水と言わずに「流体」と言います。これは、地下水といっても400℃といった高温であること、もしかしたらマグマである可能性もあるからです。
流体が断層に入ると、断層の摩擦係数が下がって滑りやすくなります。
断層は非常に長く、連動して動くことが有識者会議でも心配されていましたが、今回約150km(能登半島から佐渡島の近くまで)という推定されていた断層の全域が破壊されたようです。

Q:群発地震は長く続くのでしょうか? 長野の例として松代群発地震がありますが、6万回あり5年以上長く続きました。能登半島もこれから続くのでしょうか? 
長尾:これまでも3年続いていますが、終わりそうもありません。年単位で続くと思われます。
これまで最大の地震は、昨年5月に、マグニチュード6.5が起きています。
今回はM7.6なのでエネルギーで言うと30倍以上で、これまで内陸の活断層型の地震で最大だった1891年の濃尾地震に次ぎ、100何年ぶりとも言えます。

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 1800年から2023年までのマグニチュード7.6以上の全ての地震
いずれも皆様がご存じの被害地震となっています

Q:群発地震は外国では火山と関係があると言われますが、その点はいかがでしょう?
長尾:日本海側には火山がないと言われますが、隠岐島や八郎潟付近など、火山の跡はあります。松代群発地震は「水噴火」と呼ばれており、やはり流体が関与していた事がわかっています。

これは完全な仮説ですが、1000年後くらいには能登半島に立派な火山が出来るかもしれないとさえ考えられるのです。

Q:2014年のシナリオがあるのにもっと深刻に考えるべきだったのではないでしょうか? 準備ができていないのはなぜですか?
長尾:最近耐震技術は非常に進んでいて、100万円もあれば1軒の耐震対応が可能です。寝室だけなら70万くらいで出来ます。しかし、高齢者の住居を中心に耐震化は進んでいません。なぜ耐震化が進まないのか、それは「危機感がない」からとも言えます。

また加えて、阪神・淡路大震災後に地震や地殻変動の観測網が劇的に増えました。しかし海域は増えていなかったので、日本海側に次の海底地震・津波観測ケーブルが計画されていました。ところが東日本大震災で日本海側での観測が後回しにされてしまい、太平洋側に海底ケーブル観測網が設置されたのです。日本的な予算の使い方の悪い部分が出てしまったのだと思います。
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 1月4日放送 テレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」より
Q:南海トラフ巨大地震との関係はありますか?
長尾:能登半島地震は、たとえば30年後の人からは「南海トラフ地震の前兆だった」と言われるでしょう。
南海トラフ巨大地震はフィリピン海プレートが本州の下に沈み込む事で歪が溜まり発生します。本州(=内陸)にひずみが溜まってくると、南海トラフ巨大地震の20−30年前から内陸で活断層型の地震が発生する事が昭和の南海トラフ地震前も、安政の南海トラフ地震の前にも確認されています。将来、能登半島地震は(30年以内にほぼ必ず起こると言われている)「南海トラフ巨大地震」の前兆だったと言われるようになるのではと考えています。

日本の経済高度成長は昭和南海トラフ地震の後の比較的穏やかな時期(40年ほど)と一致しています。しかし、現在はその時期は終わっていると考えられています。

Q:今一番やらなければいけないことは何でしょうか?
長尾:今やるべきことは「家を壊さない=耐震補強をする」の意識をもつことです。高齢者の方の中には貯金は少ないが、土地持ち、家屋持ちの方が多くいらっしゃいます。そのような方にはリバースモーゲージといった融資のしくみを使うなどを考える必要があります。特に、1980年以前の旧耐震の家屋(能登半島には多い)は極めて危険です。また、将来的には海の近くに住まない地域計画も必要でしょう。

Q:今回、大津波情報がでました。日本海側の津波の特徴は何でしょう?
長尾:東日本大地震の場合、津波が海岸に到達したのは地震から最低でも20数分かかりましたが、日本側では数分です。これは震源地が海岸から近いからです。

Q:給水、留守宅の治安の問題などもあります。これから、避難所の生活が長くなった場合どう言う点に注意する必要があるでしょうか?
長尾:現在は水が足りないとも言われていますが、トイレに行かないために水を飲むのを控えると体力(免疫力)が落ちます。この季節は感染症対策も重要です。コメンテーターの方の仰るとおり、心理的なケアも必要になると思います。


以上、途中で緊急地震速報が出る緊迫した状況で行われた長尾理事の解説でした。

番組放送から3日経ちましたが、まだ余震は収まっていません。1月6日の時点で有感地震はすでに700回を超えているとのこと、その中で、死者は120名を超え、行方不明者の捜索が懸命に行われていますが、電気も水もない避難生活が続き、道路が壊滅状態で孤立状態の集落の方々もあります。雪も迫っています。

被災地の一日でも早い復興と被災された皆様が平穏な生活に戻られますことを心よりお祈り申し上げます。

(広報委員会)


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