1月1日、能登半島で極めて大きな地震が発生してしまいました。お亡くなりになった方のご冥福を祈るとともに、被災された方の速やかな復興を願うばかりです。

この地震、実は日本で発生した活断層型の地震としては、観測史上最大であったようです。

地震のエネルギーはマグニチュードで表しますが、このマグニチュードには沢山の種類(およそ10種類)があり、気象庁が用いているマグニチュードは「気象庁マグニチュード」と呼ばれています(Mjと表記します。jは気象庁(Japan Meteorological Agencyの頭文字)のjを意味します)。

それに対し、客観的に地震のエネルギーを表すにはモーメントマグニチュード(Mw)というものを使用します。モーメントマグニチュードとは、断層面の大きさと、それがどれくらいずれたかに依存します。別の言い方をしますと、ずれ動いた部分の面積×ずれた量×岩石の硬さ(剛性率)で計算します。岩石の硬さはほぼ一定と見做せるので、基本的にどれだけ大きな面積がどれだけずれたかで決める事が出来るのです。

モーメントマグニチュードは物理的な意味が明確で、大きな地震に対しても有効である事がわかっています。このモーメントマグニチュードは、1977年に日本の地震学者、金森博雄教授により考案されました。

ちなみに金森先生は長尾の指導教官であった故・上田誠也教授が、東京大学理学部で助教授を務められていた時の助手であったそうです。当時、その研究室の教授は竹内均先生(1973年の小松左京原作映画『日本沈没』にも地球物理学者役で出演)で、助教授が上田先生、助手が金森先生というまさにCenter of Excellence を地でいくものであったと考えています。

このモーメントマグニチュードで、過去に発生した日本の地震について比較してみますと、1月1日の地震は1891年の濃尾地震とほぼ同じ規模の、内陸地震としては、過去最大級であった事がわかりました。実はとんでも無い規模の内陸地震(=直下型地震)が発生していたのです。

次の図は過去に日本で発生した地震の大きさ(エネルギー)を比較したものです。プレート沈み込みに伴う巨大地震には東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震や関東大震災を引き起こした大正関東地震があります。今後発生が予想される南海トラフの巨大地震も同じカテゴリーの地震です。


内陸地震Mw大きさ比較修正版

 日本で過去に発生した地震のモーメントマグニチュードによる比較

令和6年能登半島地震は、内陸の活断層型の地震に分類されます。阪神大震災を引き起こした兵庫県南部地震も熊本地震も活断層の地震です。また1891年の濃尾地震は気象庁マグニチュードでは8.0という値ですが、モーメントマグニチュードは近年再決定されており、Mw7.5という値が広く認められています。

つまり1月1日の地震は、近代的な地震観測による記録が存在する中では、史上最大の内陸・活断層型の地震であったのです。

ここで地震学の基礎知識として、マグニチュードが1違うと、そのエネルギーはどれくらい違うかという事をまとめてみました。
非常に簡単に言いますと、マグニチュードが2違うとそのエネルギーは1,000倍違うというのがマグニチュードの定義です。
つまりマグニチュードが1違うとルート1,000という事になり、約32倍のエネルギーとなるのです。
マグニチュード5と7では1,000倍エネルギーが違い、マグニチュード6と8でも1,000倍の違いという事になります。次の図を参考にして頂ければ幸いです。

マグニチュードとエネルギー

(文責:長尾年恭)

(広報委員会)

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