2月5日(月)
本州の南岸を進む低気圧(南岸低気圧)の影響で、関東甲信では平地でも雪が強まり、午後8時には積雪が6センチに増え、東京23区全域をはじめ関東甲信の広い範囲に大雪警報が発表されました。
東京都心で1センチ以上の雪が積もったのは2022年(2月11日に2センチを観測)以来2年ぶりで、東京23区に大雪警報が出たのは去年2月10日以来でした。

午後10時前後にかけて関東南部を中心に落雷が多く発生しました。

雷の研究をしている本NPO鴨川先生もX(旧Twitter)に以下のポストをしています。

東京都を中心にいま冬季雷が発生している。
研究者が一般的に言うような冬季雷は北陸などで発生する。
この冬季雷とよく知られる夏季雷には落雷の特徴が異なるが、今日の落雷がいわゆる冬季雷の性質を示しているかは興味があるので調べてみたい。

昨晩の東京都を中心とした冬季雷と思われる現象。
2000年以降の気象庁雷日数(雷鳴が観測された1ヶ月あたりの総日数)データを見ると1916年以降、2月に雷日数が1となる年は11回あった。
それゆえ、昨晩のはざっくり10年に1回の現象と言っても良いであろう。

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降雪とカミナリが同時に発生するのは世界的に珍しい現象だということで、多くのニュース番組などで取り上げられました。



2月6日のスーパーJチャンネル 気象予報士の今村涼子さんに解説によると

雪と雷…雪雲が夏の積乱雲なみに発達
5日のレーダーで振り返っていきたいと思います。雪や雨のレーダーで、雪がピークになった5日午後9時ごろからですが、×印(落雷)が多数あります。午後10時前後にかけて関東南部を中心に落雷が多く発生したということが分かるかと思います。紫色の雪エリアと×印が同時に表示されることは、なかなかないことで珍しい現象といえます。

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なぜ5日はこれだけ雷が発生したかというと、雪雲が夏の積乱雲なみに発達したためです。では、なぜ積乱雲なみに発達したかというと、南岸低気圧のピークが関東沖に最接近した時に重なったためです。
そこでこんなデータがあります。3Dで風の流れを表したもので見ると、関東沖の低気圧に向かって風が集まり、それが強い上昇気流になっていることを表しています。上昇気流が強いほど雲は発達します。5日の雪雲は雲頂高度1万メートル以上と、夏の積乱雲なみに発達したということになります。

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もう一つは去年から続いているのですが、海水温が高いことも水蒸気量が多くなったので、雪雲発達のエネルギーになったということが言えます。

「冬の雷」夏に比べて威力100倍の場合も
この日本海側の冬の雷、実は、夏の雷よりも怖い面があります。夏の雷と冬の雷で特徴を比較してみます。夏の雷雲と冬の雷雲を表すと、こんなに違いがあります。冬の雷雲の方が夏に比べて小さいですし、背の高さも低いです。このため、落雷の回数も冬の方が夏より少なくなります。

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ただ、この「背が低い」「落雷回数が少ない」ことが実は問題となります。
まず「背が低い」と雲の底も低いので、それだけ地面に近いわけです。そうすると落雷した時に影響が大きくなります。
「落雷の回数が少ない」と何が起きるかというと、一度雷が発生した時に、その1回にエネルギーが集中してしまいます。ですので、冬の雷というのは「一発雷(いっぱつらい)」とも呼ばれたりして、夏の雷の100倍以上にもエネルギーが達することもあります。
過去にも飛行機事故が起きたり、火災が発生したりしています。ですから冬の雷は侮れない、そういう一面があるわけです。
スーパーJチャンネル「newsのハテナ」2024年2月6日放送より

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上記のニュースの情報によれば、雲頂高度が10 km程度になっており、冬季雷を生じさせる雷雲にしては、高度が高く、さながら夏季の雷雲のようだ。
また発生領域も、冬季雷を生じさせる雷雲のような広域さはなく、夏季雷雲のサイズ程度といってもよいであろう。
いまある情報から推察すると、夏季と冬季の落雷の性質が混在したような特徴を持つと予想される。
今後、落雷データ、レーダーデータで詳細な解析をすれば、この予想は示すことができると思われる。



(広報委員会)
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