太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

阪神・淡路大震災から30年目に当たり、専門家である長尾年恭理事のブログを掲載いたします。

1995年1月17日早朝、関西地方で大地震が発生しました。これが阪神・淡路大震災です。今年はこの震災発生から丁度30年という節目の年にあたります。この地震では、約6,500人の命が奪われました。この地震の丁度1年前(1994年1月17日)、カリフォルニア州でノースリッジ地震が発生していました。ノースリッジ地震では、高速道路が大規模に崩壊し大きな話題となりました。当時の日本の建築学・土木工学の専門家は「日本では地震で高速道路が崩壊するような事は無い」と発言していたのですが、阪神・淡路大震災では、阪神高速道路が600m以上に渡って横倒しとなり、その自信が打ち砕かれる事になったのです。
この大震災では、死者の80%はほぼ即死であり、実は建物倒壊が原因となっていたのです。このため、関東大震災では、火災のみが注目されていたのですが、この大震災では、耐震補強という事が大きくクローズアップされる事となりました。次の図は阪神・淡路大震災で何時にどれくらいの方が亡くなったかの検死記録です。

ブログ図1

図1
 阪神・淡路大震災(における死者の死亡推定時刻(神戸市分) 
 (当時神戸市監察医の横浜市大西村明儒氏らによる)

筆者は地震予知研究をこれまで長年行ってきました。もし地震予知が実現すれば、それは人的被害低減に大きく貢献する事を意味します。また「予知か防災か」という議論がなされる事がありますがこのステレオタイプの議論は間違いです。たとえ予知に成功しても地震は発生しますので、防災と比較すべき事では無いのです。あえて言えば「予知も防災も」が正しく、予知は地震防災において人的被害を減らすという意味で最後の砦なのだと考えています。

またこの地震で明らかになったのは、関西地方の人は「関西には大地震は来ない」と考えていた人が多かったという事で、いかに地学的な知識・地域の伝承が重要かという事を思い知らされた地震でもありました。
さらにこの地震では、関東大震災のように火災で亡くなったというより、さきほども述べましたが建物の倒壊により命を落とした方が極めて多かった事が特徴でした。窒息死、圧死、ショック・損傷、打撲・挫滅症、臓器不全・凍死・衰弱死、焼死・全身火傷等の死因に分類されているのですが、実に死者の83%の方が建物倒壊等により亡くなっていたのです。これが阪神・淡路大震災の最も大きな特徴でした。それと、火災の発生と建物の倒壊との間に極めて興味深い関係が明らかとなったのもこの震災でした。次の図は、この地震における建物全壊率と直後出火率の関係です。

ブログ図2

図2 消防庁ウェブサイトより

この図から、極めて興味深い事実が見てとれます。つまり、火災は建物が倒壊した事により引き起こされていたのです。建物が全壊しなかった北区と垂水区ではなんと直後出火件数はゼロだったのです。建物を壊さない事が火事を減らす最大の要因だったのです。

さらにこの震災では死者の年齢分布について、極めて深刻な結果が得られたのです。次の図は阪神・淡路大震災における年齢別死亡者数です。さきほどこの震災では、80%以上の方がほぼ即死であった事を説明しました。そのため、この年齢別の死亡者数のグラフはおおよそ即死した方の年齢分布とも言えるのです。中年からご高齢の方が確かに多いですが、これは中小企業や古い商店街であった長田区で多くの方が亡くなったためと解釈されています。

ブログ図3カラー

図3
  阪神・淡路大震災における年齢別死亡者数
 (厚生統計協会『国民衛生の動向』1996年版より)

それ以外に特徴的なのは、20歳から24歳の所に顕著なピークが存在する事です。実はこれは大学生なのです。一般的に日本では高校生まではご両親と一緒に暮らしている方がほとんどです。そして大学を卒業しますと、初任給も入りますから、学生時代よりは少しは良いアパート等に住む事になります。
つまり日本で、一番安い=古い家に住んでいるのは、大学生なのです。このグラフは家が地震と同時に圧潰(pancake collapseと英語では表現します)してしまうと、体力は関係無いという事を意味しているのです。極端に言えば、地震が人を殺すのではなく、家が人を殺すのです。
このような事実から阪神・淡路大震災では、耐震補強の重要性が改めて認識される事になったのです。(文責:長尾年恭)

(広報委員会)
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