-中山さん参加者

12月14日は冷たい雨の降る日曜日でしたが、東京事務所は暖かく、事務所で用意されていた温かいお茶と事務局お勧めの温かい唐揚げ弁当で、軽いお昼をとりながら下記のプログラムでスタートしました。事務所に5人、zoomで4人参加のハイブリッド会議です。
プログラム

畠山史郎・富士山環境研究センター(LERMF)長の司会で、George Lin 教授の講演が始まると、すぐにその熱気に圧倒されてゆきました。

George Lin スライド表紙

台湾の中央部にそびえる鹿林山(標高2,862m)。ここに、地球規模の大気の流れを監視する最前線基地、LABS(Lulin  Atmospherid Baseline Station)があります。
道も電気もなかった30年以上前から、大学が国立公園から土地を借りて整備し、行政機関に認めさせて、最終的に資金援助を得て、2006年に観測所を開設した苦労話に始まり、観測所までの820mの道のりは、今でも徒歩。重いガスタンクなどの機材は、「若くて屈強な」地元の登山家たちに運搬を依頼しているといいます。このような地道な努力が、日々の観測を支えていること。

鹿林山は、東南アジア諸国などから汚染大気の長距離輸送を観測するのに、地理的に理想的な場所に位置しおり、世界中の研究機関と協力し、地球の空気を監視する重要な拠点となっていること。

研究を支えているのは、科学への情熱と世代を超えた人のつながりであること。かつて観測所の設立を手伝った博士課程の学生が、20年後に台湾の環境大臣になったエピソードを、写真を見せながら誇らしげに語られました。
「若い世代は大切にしなければならない。彼らが将来、大臣になるかもしれないからね。」
と述べられたのが印象的でした。

次は、富士山の代表的な研究として、まず最近注目されている早稲田大学大河内副理事長グループの大気中マイクロプラスチックの話をWANG博士が話しました。

wangさんタイトル

海洋のマイクロプラスチック汚染については近年問題になっています。もしそれが雲水の中に含まれていることを、早稲田大学大河内博研究グループの王さんらが報告し世界に衝撃を与えました。
これらの微小なプラスチック粒子は、気流に乗って運ばれてきたと考えられています。

特に2024年に観測された高い濃度は東南アジアからの大気輸送が原因であり、また劣化の激しい粒子は中国や東南アジアからの気団と関連して検出されていました。
さらに、紫外線などで劣化したプラスチックは、親水性であることがわかり、雲の発生や成長に影響を与える「核」として働く可能性を示唆しています。この発見は、気候変動との関連も視野に入れた、非常に重要な研究テーマとなっています。

加藤さんタイトル

続いて、NPOスタート時から継続している加藤俊吾理事によるCO,O3,SO2の濃度に関する報告がありました。富士山頂と、南東1,300mの山麓、太郎坊での長期的な観測からは、興味深い謎が浮かび上がっています。中国など大陸からの汚染物質の排出削減努力により、一酸化炭素(CO)の濃度は明らかに減少傾向にあります。しかし、光化学スモッグの原因物質でもあるオゾン(O3)の濃度には、ほとんど変化が見られないのです。この謎を解き明かすため、今も研究が続けられています。

+村田さんタイトル

微生物・氷晶核(INP)の研究者である村田浩太郎理事は、市販の装置がないため、「SNICS」と名付けた独自の測定装置を自作して観測に挑みました。
その結果、富士山では日中にINPの濃度が高まることが分かりました。これは、「谷風」が、地表の物質を山頂まで運んでいるためと考えられます。驚くべきことに、富士山の山肌の砂ぼこりや、山麓の森林から舞い上がった微生物が、雨を降らせる重要なきっかけになっている可能性が示され、山そのものが、天気を生み出す巨大な装置として機能している可能性を考えています。

次に、本NPOの活動の中で、新しく開発されて、「新しい雷測定技術」について、安本勝LERMF研究員らの報告がありましたが、この講演は土器屋由紀子理事が導入だけを英語で話し、質問を受ける形にしました。
安本さんタイトル+

富士山測候所の建物を「フランクリンの凧」に7kmの埋設線を「タコ糸」に模して、「安本装置」はライデン瓶に当たるという発想で、作成された装置です。
この画期的な方法により、雷をその性質ごとに4つの異なるタイプ(「プラス/マイナスの電気」と「雲から地上へ/地上から雲へ」の組み合わせ)に精密に分類できるようになりました。この研究は、雷の発生メカニズムの解明だけでなく、雷による被害を減らすことにも貢献すると期待されます。

土器屋タイトル

最後に、土器屋理事が2017年の国際シンポジウムACPM2017以降、コロナ禍による財政的な危機でNPOは存続の危機に直面したこと、研究者たちが立ち上げたクラウドファンディングには、目標額の2倍を超える支援が集まり、翌年からはコロナに注意しながら活動を再開し、ギリギリで生き延びていることなどを話しました。しかし、何とか生き延びて、富士山の仕事が世界的にも注目され始めていますが、これまで活動してきた会員や理事の高齢化、若手の超多忙、全体的なマンパワー不足が目立つようになってきており、本NPOも一つの分岐点に来ているのかもしれない現実もあります。以前引用した立平良三・元気象庁長官の「日本人が富士山に対して抱く独特の想い」を再び引用して望みを託していると締めくくりました。

元NOAA,マウナロア観測所のRuss Schnell 博士が米国コロラド州からZoomで特別参加してくださいましたが、そこで、衝撃的な現実を知りました。
マウナロア観測所の火山被害は、公費によって修復されますが、NOAAの全球監視部門は、若手科学者の全員を失いました。彼らは全員解雇され、年長の科学者のほとんどは早期退職を求められているとのこと。政治の風向きひとつで、長年の研究基盤が揺らぐことがあるのです。このような不安定な状況下でも、地球の未来のために観測を続けようとする科学者たちの使命感で何とか生き延びようとしているとのことです。

これから、「冬の時代」を迎えそうな「観測研究」をどうやって続けてゆくか改めて気を引き締めるような集まりでもありました。

(広報委員会)
 
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