(前回に続く)

2006年3月はじめの国際集会の第2弾と位置づけられたのが、この年の科研費(基礎(C)企画・富士山プロジェクト、代表研究者・土器屋由紀子)による、「富士山プロジェクト”山岳極地高所拠点”の実現に向けて」を利用した11月の集まりでした。

3月には、WMOのマウナロアから、Russ Schnell 博士の参加を得て盛り上がったので、今回は是非「ヨーロッパの屋根」といわれるユングフラウヨッホ観測所(注)からの研究者を呼びたいという声が上がりました。


 Jungfraujoch - Top of Europe Travel Switzerland YouTubeより

『変わる富士山測候所』(江戸川大学・土器屋由紀子ゼミ編、春風社、2004)でもご紹介しましたが、
観光の名所として年間数十万人の人が訪れるユングフラウヨッホには、ユングフラウ鉄道と、スイス、独、仏、伊、オーストリア、ベルギー、フィンランドなどからなる・ゴルナグラッド・ユングフラウ財団(建設には財団が3、鉄道が4の出費)が維持管理する「ユングフラウヨッホ観測所(3,454m)」があり、ヨーロッパの大気観測の中心になっています。鉄道で山の下まで行き、山頂へは120mのエレベーターが通じています。財団による安定した経営基盤、ベルン大学に講座を持ち観測研究の選考などを行い、2名の管理者(2組の夫婦が交代制で、気象観測も行う)が常駐するこの施設は富士山研究者たちのあこがれの的でした。

科研費による国際集会への出席と講演依頼をお願いしていたErwin Fluckiger 博士(宇宙線の専門家)に、
「ちょうどヨーロッパへ行くから、面会し、招聘状を届けましょう」
という、黒岩秩子監事にお願いした結果、当時の様子が彼女のブログとメールに残っています。


 2006年8月、江戸川大の学生他と登山する黒岩秩子さん(向かって左端)

元衆議院議員、障害児施設の経営者、7人の子供の母親といういくつもの顔を持ちバイタリティーの塊のような黒岩さんは、土器屋理事の大学時代の友人で理学部数学科出身。5合目から富士山頂を眺めて「そうだ!ここから上の曲率がマイナスだから美しいのだ!」
と、「富士山学校」の登山研修に参加しながら「発見」するような楽しい人です。
ブログの一部をご紹介すると:

「私は富士山に関わり始めたら、このユングフラウヨッホという名前がよく出てくるので、単純にそこに登ってみたいと思い、その計画をはじめたら、NPO富士山測候所を活用する会からお使いを頼まれる事になったのです。…(略)
そもそもユウグフラウとユングフラウヨッホの区別がわからないまま現地に行った私でした。」


当時ユングフラウヨッホ観測所の75周年で多忙なフルッキガー教授からの現地で突然の連絡があり、行く先をベルンに変えたり、国際電話とメールで土器屋理事とやりとをして、教授が長い休暇に入る前に無事面談にこぎつけて、招聘に成功。

この間、お財布とカードを失くす災難にもめげず、帰国後、二人で乾杯した経緯は、ユングフラウヨッホの維持管理の実態など、後日、本NPO運動の中で参考になった情報と併せてブログに紹介されていました。(ブログは現在アクセス不能ですが、内容は「きしょう春秋2006年10月号の山本英郎氏の記事」でご覧になれます)

「…結局ベルン大学のキャンパスでフルッキガー教授に会い、”乗鞍があるのになぜ富士山が必要なのか?国際集会の異議は?”と質問する教授をなんとか説得して11月22日の東京のシンポジウムに来てくださることになりました。」

このほか、春の国際シンポジウムに参加されたWMOのRuss Schnell 博士、台湾LABSのGeorge Lin教授、高地に長期間滞在するチベット人に見られる慢性高山病の権威である Ge Ri-Li 教授らへの招聘も併行して行われており、11月に向けて、国際集会の準備が慌ただしくなっていました。

注:「ヨッホ」はつなぐという意味で馬の鞍などを指す。ユングフラウ山は4,107m、ユングフラウヨッホは3,571mでその一部に観測所がある。3,545mの所にあるエレベーターがは観光客と一緒に利用する。「Between heaven and earth」というタイトルの観光案内があり、その日本語版は富士山高所研究関係者によるとか。2006年は観測所の75周年であった。

(広報委員会)
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