太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2014年09月

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学会長の若松伸司氏から賞状を授与される土器屋理事
   
9月17日(水)から19日(金)まで、愛媛大学で開催された第55回大気環境学会で当NPO法人の土器屋由紀子理事が「大気環境学会功労賞 (鈴木武夫賞)」を受賞しました。

この度の受賞は、長年にわたる分析化学、気象学の観点からの酸性雨の研究、次代を担う後進の育成、さらに旧富士山測候所の保存および研究・教育拠点として の再生などを通じて、地域・社会の環境保全施策を推進し、有形・無形の成果を社会に還元したことが高く評価されたもの。
これからも後進の指導にご活躍いただきたいものです。

さて、一般研究発表、ポスターセッションでは、富士山測候所で観測した成果の発表も。
「都市域,森林域,山岳域における多環芳香族炭化水素の大気圏動態と降水洗浄」
 早稲田大学・小野一樹さん
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「富士山体を利用した自由対流圏大気中酸性ガスおよびエアロゾルの観測」
 早稲田大学・小川智司さん
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番外編。
懇親会で角帽姿のシルエットの方は・・・
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・・・大河内理事(早稲田大学教授)でした。次回の大気環境学会年会が早稲田大学で開催されるということで、決死の覚悟によるパフォーマンスでした。
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懇親会がお開きとなった後に有志で開かれた受賞のお祝い会でのひとコマ。
たいへんな盛り上がりとなり、閉店となる12時まで続いたとか。翌日の発表は大丈夫だったのかな?
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(皆巳幸也 記)


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見学が終わった8月11日の夕方、シンポジウムの受付とレセプションがありました。プログラムとアブストラクトの載った冊子(写真)を配られ、名札をぶら下げて、次の部屋でレセプション。これはごく簡単なもので、飲み物と巨大なピザ、チーズ、クラッカーなどを食べながら(アルコール飲料は有料)適当にテーブルを囲んで話し合う形式でした。台湾から来たGeorge Linや2008年に富士山で水銀を測定したSheuさんたちとテーブルを囲みました。

会議の参加者は40名程度。6月に提出したAbstractは49名だったのですが、キャンセルがかなりありました。デンバーから乗り継いで、さらに空港からも1時間以上かかる場所に加えて、夏の真ん中という時期も影響したのでしょうか、前回2010年インターラーケンで行われた会議は100人以上集まったのと比べると半分以下で、アメリカ国内の集会に少し外国が加わったという感じでした。講演のキャンセルも結構ありました。大物では、3件申し込んでいたオーストリアのSonnblick ObservatoryのG. Shauerが来なかったこと、中国Waliguan観測所のZhaoyang、とケニヤのC. Okukuがプログラムに載っていたのに来ませんでした。

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最初のプログラムからも少し変更があり、日本から予定していた国立環境研究所の谷本浩志さんも欠席。Abstractなしの追加が3件。2日だけ参加して 帰ってしまったので、正確には分かりませんが、講演は36件、うちアメリカ20件(カナダやグリーンランド、ポルトガルの山の観測を含む)、台湾5件 (ルーリンの George Lin ががんばっていました。)、スイス、スペイン、日本各3件、カナダ2件というところでした。

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私は最初のOverview of scientific activities at specific mountain site の最初の講演を行いましたが、座長のGeorge と大会運営の説明をしたIanのおかげで少し講演時間を延長してもらい、20分以上は話しました。鴨川先生から出発の前日送られてきた Gigantic Jet の動画もみせ、ライブカメラへのクリックもお願いしました。しかし、通年観測がCO2と宇宙線だけということはほかの観測施設と比べると少しさびしい感じは否めなかったと思います。8年間頑張っていることは一定の評価をもらってトップバッターにしていただけたのに申し訳ない気持ちでした。

午後の三浦先生の講演はきちんと時間厳守大変わかり易い講演で、谷風の影響などに関する質問も出て、活発な討論が行われていました。

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2日目午後の最後の2講演がキャンセルで時間があまったので、前回宿題だった各山岳施設の Advantage と Challenge についての中間まとめが行われました。ちょうど George に鹿林山のまとめをもらってそれを参考に書きかけていた下書を使って、少ししゃべりました(お金がないこと、HPを見てほしいことなど、時間も少しオーバーし、しゃべりすぎたかな?と反省・・)。ほとんどの関係者が自分の施設について話しましたが、みなさん、研究資金獲得には結構苦労しているようでした。全体についてはそのうち主催者がまとめてくれることを期待しています。

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この話し合いの結果、2016/17の次の会議は台湾+日本で引き受けるような話になっています。George は2019年に大きい集まりをやらなければならないとのことで、意外とそれほど積極的ではなく、三浦先生と私も「帰ってみんなに相談しなければ・・・」と言い続けたのですが・・・

本当に決まるのは、9月末~10月に George が畠山先生のところに来るときに話し合う・・ということになるようです。

予稿集や講演から、今回関係した山岳研究施設のリストを表にしてみました。三浦先生と帰りの飛行機乗り継ぎ時間の空港で下書きを作ったものです。

 表 今回関係した山岳研究施設
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 (↑クリックで拡大)

このグループは山岳の大気化学・物理の研究者たちの集まりとしては今後も中心的なものになると思われます。
(土器屋由紀子 記)

氏名:向井人史 / Hitoshi Mukai
所属:国立環境研究所 / National institute for Environmental studies (NIES)
共同研究者氏名・所属:
野尻幸宏、寺尾有希夫、野村渉平 Yukihiro Nojiri, Yukio Terao and Shohei Nomura (NIES)
    
研究テーマ:
富士山頂における長期二酸化炭素濃度観測
Study on long-term CO2 observation at summit of Mt. Fuji

成果の概要:
(1) 目的

二酸化炭素濃度は、全球的に増加の一途を辿っている。その人為発生量や自然の吸収量は地域で異なることから、濃度の変動に地域性があることが知られている。研究の対象とした富士山は、日本列島のおおよそ中央に位置し、その山頂は、自由対流圏に突き出している。そのため、山頂において二酸化炭素濃度の長期観測を行うことは、北半球中緯度の日本やアジア域のバックグラウンド二酸化炭素濃度の変動の解明に寄与すると考えられる。一方、富士山頂は夏期(7-8月)のみ通電する通年観測が困難な場所である。このような地点において通年観測できるシステムを構築することは、今後、電力の整備が未発達な地域において応用できると考えられる。
このように、本研究では富士山頂において、省電力で観測可能な二酸化炭素濃度観測システムの構築をしながら、アジアの中緯度の二酸化炭素の長期観測を行うことを目的とした。

(2) 結果
①二酸化炭素濃度観測システムの構築

CO2計システムの雷対策の一つとして、イリジウム通信アンテナが設置してある3号庁舎北側に位置する貯水タンク基礎鉄骨、3号庁舎基礎鉄骨、2号庁舎基礎鉄骨を電気的に接続した。
②二酸化炭素濃度の長期観測
 2013年8月末から2014年7月末まで1年を通して、2013年夏期に充電した100個の鉛蓄電池から得た電気により、22~24時に富士山頂の二酸化炭素濃度を計測できた。2013年8月末から2014年7月末に計測された二酸化炭素濃度推移は、過去3年間観測された結果と同様であった。すなわち晩夏まで低下し、その後、初夏まで増加し、再び低下した。2014年に観測された最も高い濃度は約406ppmで、最も低い濃度は約396ppmであった。これは昨年の最高値(約403ppm)、最低値(約393ppm)より約3ppm、山頂で観測を開始した2010年の最高値(約396ppm)、最低値(約386ppm)より約10ppm高かった。
落雷の影響により、2014年8月1日から18日の間は、CO2計の観測が停止した。

(英語表記)
Long term atmospheric CO2 concentration measurement on the top of Mt. Fuji (3776m) has been operated by an automatic CO2 measurement system developed by NIES (National Institute for Environmental Studies) since August 2009. The system is designed for remote areas where the environmental condition is harsh from the observational point of view. Now because we concluded that the measurement system became stable and reliable enough, we shifted into a regular operation in summer, 2012.
 During summer, we operate maintenance including charging the 100 Pb batteries to have the system prepared for winter season when the ordinal electricity is not used.

研究成果の公表:

201410月 気象学会発表




研究テーマ:
富士山頂にお富士山頂における一酸化炭素,オゾン,二酸化硫黄の夏季の長期測定
Long term observation of carbon monoxide, ozone, and sulfur dioxide during summer at the summit of Ft. Fuji


氏名:加藤俊吾 Shungo KATO
所属:
首都大学東京 Tokyo Metropolitan University

研究結果の概要:
富士山頂において大気中の一酸化炭素(CO)、オゾン(O3)、二酸化硫黄(SO2)の連続測定を行い、714日~825日にかけて観測データを得た。COは車の排気ガスや工場など燃焼により発生するため、汚染大気が輸送されてきている指標となる。2014年夏季は、CO60ppb程度と低濃度であることが多く、太平洋からの清浄な大気の影響を受けている期間が長くみられた。7月中、8月中ごろにCOが高くなる期間は汚染大気が輸送されてきたと考えられる。O3は汚染大気が日射にあたることで化学反応を起こして生成するため、COO3の濃度は全体としては同じような変動をする。しかし、728-30日、87日、13日などはO3だけ高濃度となっており、O3濃度が高濃度で存在する高い高度の大気(成層圏)の影響を受けていたと考えられる。また、813日にはSO2が上昇し、桜島の噴煙が輸送されて富士山に到達したものであると考えられる。
(英文表記)

Atmospheric carbon monoxide (CO), ozone (O3), and sulfur dioxide (SO2) were measured at the top of Mt. Fuji during summer in 2014. CO can work as an indicator of transport of polluted air. In most of cases, CO and O3 show similar concentration change. Around July 28-30, and August 7 and 13, only O3 was high concentration. During these periods, air at high altitude containing high O3 transported to Mt. Fuji. High SO2 concentration was observed on August 13. This high SO2 was expected to be transported from eruption of Mt. Sakura-jima.

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研究成果の公表:
20153月 日本化学会発表予定

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