太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2018年01月

171109184
 バンケットは地元の食材をふんだんに使った料理に舌鼓
171109172x
DSCN1986
 スクリーンには山頂班が撮影し土器屋先生がインスタグラムに投稿した夏の山頂風景を投影
38400684982_8bb9e9729b_k
 学生も他大学の学生と交流できたようだ


George Lin 先生のこと


バンケットは18時から2F宴会場『ふじの間』で、宴会担当の皆巳先生(石川県立大学)と勝見先生(同)の司会で賑やかに始まった。

畠山実行委員長の挨拶に続いて乾杯の音頭に壇上に立ったのは George Lin 教授(台湾)。「前回アメリカの Steamboat Springs での会議で、次の会議は日本か台湾で開催することに決まっていました。しかし Mt.Fuji は(台湾の)Mt.Lulin より1千㍍も高いので、今回は日本にやってもらうことにしたのです」とユーモアたっぷりにスピーチ。(*1)

26651357739_96a9d38404_k
 乾杯の前に挨拶する Neng-Huei (George) Lin(台湾)

Lin先生は台湾中央大学の教授で、ACPの最初の立ち上げにも関わっており、今回の会議でも International Advisory Boardとして助言をしていただいている。

NPOのスタート時からマウナロアの Russ Scnell 博士と一緒に応援して下さり、2006- 7年のNPO主催の3回の国際集会での講演、台湾の Lulin山 Baseline Stationとの共同研究など、富士山測候所を活用する研究面 で絶大なサポートをしてくださった。

2009年に土器屋先生に送られてきた手紙 (*2) でも「日本政府はなぜ富士山測候所の運用を止めようとしているのか。われわれの助けが必要ならぜひ連絡をもらいたい。富士山測候所の運用を続けられるようどんなことでも引き受ける」とまで言ってくださっている。

2014年6月に畠山理事長(当時は東京農工大学教授)の招聘で東京農工大学のスーパー教授英語では "Distinguished Professor" )として来日された時にも、わざわざNPOのために講演 (*3)をしてくださった。

その時点ではまだ日本での開催は決まっていなかったが「次のACPMは日本で開催すべきだ。 NPOのためにもやったほうが良い」と、NPOの主だったメンバーに熱心に説いておられた。 外からNPOのことを気にかけてくださっている一番の良き理解者である。

今回、このような形で日本で会議が開催できたことを一番よろこんでおられるのは Lin 先生なのではなかろうか。

lin&shiro

(*1) 富士山の標高:3776㍍ Lulin山の標高:2882㍍
(*2) 応援メッセージ 2009年12月3日「Mt. Fuji station - the legacy that should not be ignored.」
(*3) スタッフブログ『太郎坊のそよ風』2014年10月6日 「"We have to keep going"…ジョージ・リン教授の講演」



想定外のクレーム


今回の国際会議にあたり頼りにしているJNTO『国際会議開催マニュアル』の「登録デスク」の項に以下の記述がある。
 クレーム対応
 会議の参加者などから寄せられるクレームの大半は参加登録に関するものであるが、予想されるクレームをあらかじめ想定し、共有しておく。また、クレームを受けた場合の連絡・報告系統を事前に決めておくことで速やかに対応することができる。
予想されているクレームの場合は、なるほどその通りであろう。しかし、受付デスクに来るのはマニュアルで謳っているような想定内のクレームばかりではない。受付を開いたばかりの9時前、Po-Hsiung Lin(台湾)がやって来た。「4階の廊下に大きな蜘蛛(Spider)がいて宿泊している女性が怖がっている。何とかしてもらえないか」

すぐにホテルのフロントに行って説明し、処理を依頼した。夕方、バンケットの前にフロントに寄って蜘蛛はどうなったのか尋ねた。「わたしたちが行った時には既に蜘蛛は居なくなっていました。この辺りは朝の蜘蛛は縁起が良いと言われているんですよ」

バンケットの時に件の Po-Hsiung Lin にこの話をしたところ、「蜘蛛は彼女が捕まえたそうです」と M. Collaud Coen (スイス)を連れてきた。彼女が差し出したスマホには、青緑色がかった大きな蜘蛛の画像が画面一杯に収められていた。

martine

「どうやって捕まえたのか」と聞くと、よくぞ聞いてくれたとばかりにジェスチャーたっぷりに、ガラスコップを逆さまに伏せて捕まえる素振りをしてみせた。

彼女は初日の Ice Breaker から最後の Closing Remark まですべての行事に参加した。もちろん自ら口頭発表もし、2つのセッションの座長も務めた。小柄ながら持ち前の行動力で目一杯動き回り、目一杯楽しんでいったのではないだろうか。帰国後、彼女から土器屋先生に届いたメールを最後にご紹介したい。

Once again thank you very much for the organization of this very nice and convivial conference! I was really pleased to participate and to have some insights of Japan even if I didn’t stay long enough to catch the japan way of life! I also really enjoy all the contacts that could be made in such a small but really important scientific community.
Martine Collaud Coen (Switzeland)

このように友好的な雰囲気の素晴らしい会議を開催していただいたことに対し、改めて感謝申し上げます。日本の生活文化を把握できるほど長い間日本にいたわけではないのですが、皆さんとご一緒できて日本のことを少しでも知ることができ心からうれしく思っています。また、今回の会議は規模は小さいながらも非常に重要なものでしたし、ここでお会いした研究者の皆さまとの交流も本当に楽しいものでした。

171109210
 余興の大太鼓を演奏してみせる Martine Collaud Coen (スイス)

snowcapped_fuji
 冠雪して一晩で変身した富士山

朝起きると、部屋の窓から見える富士山の頭に雪!前日のランチのとき、御殿場在住の小林喬夫先生が「今日の気温、湿度からすると明日の朝は富士山は雪になる」と予言されていたとおりになった。会期中に夏冬の両方の富士山を見ることができるなんて、今回の参加者はラッキーだ。

今日は9時から口頭発表、16時からはポスター発表・企業展示、18時からはバンケットと盛り沢山のイベントが用意されている。研究者も、昨晩遅く Tsona が到着したことでフルメンバーとなり、参加者数は約100人と会期中で最大となる。

口頭発表は2日目。会場もぎっしりと埋まり奥の壁側には補助椅子も並べられた。8時40分から15時まで15件の発表があり、活発な意見交換が行われた。

171109071
 ぎっしり埋まったオーラル発表会場
38371901026_df1ece2051_k
 会議の合間に設定されたコーヒーブレイクでくつろぐ研究者


ポスター会場への誘導策はサンドイッチ

171109136


ポスターセッション会場となる1階会議室はホテルの東端にあり、西端にあるオーラルセッション会場の『さくらの間』からは、ホテルの端から端まで移動しなければならない。会場の位置関係としては最悪で不便この上ない。

実行委員会でもこのことは問題になっていた。ポスター会場への誘導対策として、ランチの弁当BOX(サンドイッチ)と飲み物はわざわざポスターセッション会場前のロビーの前に机を置いて、そこに取りに行ってもらうようにした。

誘導策がどれだけ効果があったかはわからないが、弁当を食べるときはロビーやラウンジ、事務局の部屋など、それぞれ思い思いの場所を使ってもらった。サンドイッチは二日間とも中身は同じようだったが、味はともかくボリュームに関しては申し分なかった。

171109093
 ランチは各自が思い思いの場所でとる

あまりにも短すぎた審査時間

ポスターセッションは全部で33件の発表があった。学生発表者に対しては学生賞を審査するため審査員となった研究者が忙しく質問して回っていたが、それでも全部は回りきれなかったという方もいた。惜しむらくは時間が余りにも短すぎたようだった。

ポスターセッションが終わった後、桃井裕広さん(東京理科大学生)が「海外の国際会議にもポスターを出したことがあるが、外国の研究者からこんなに熱心に質問を受けたのは初めてだ」と手応えを感じたらしく感激した面持ちで話してくれた。こんなに身近で海外の著名な研究者と討論できるのもコンパクトな国際会議ならでは、ではなかろうか。

DSC_1567


もうひとつの遠距離対策

ポスター会場の受付には「要員配置計画」にもとづき学生2名を配置した。受付といってもコアタイム以外は来場者も少ない。口頭発表を聴きに行くには距離が離れすぎている。そこで、無料のビデオ会議システムを使って口頭発表会場の様子をリアルタイムで受付でも見れるようにしてみた。

appear-inは、昨年8月25日のブログ(*1)でも紹介した「URL発行のみでビデオチャットができるビデオ会議システム」だ。クラウドで無料サービスとしてはSkypeが有名だが、登録設定が面倒なのに比べ、こちらのサービスはわずらわしい事前登録がいらない。活用範囲はいくらでもありそうだと思っていたので、今回試用してみた次第。

このURLは御殿場市観光協会と東部地域コンベンションビューローにもメールで伝え、それぞれのPCからも国際会議の実況を見ていただいてた(*2)。
「実況、案内所で拝見してます。ちょっとスクリーンは明るくて見えないのですが、音ははいっています。ビデオもオンにしてみました!」
「今アクセスしたら見ることが出来ました。音声も映像も途切れずに、すごいサービスですね」
でも、肝心の受付の学生には、実際はあまり利用されてはいなかったようだった・・・。

38427619941_92e2dc0c71_k
 ポスター会場の受付でランチ

(*1) スタッフブログ『太郎坊のそよ風』2017年8月25日「臨場感満点…山頂と成蹊高校を結んでインタラクティブ授業」
(*2) この様子は東部地域コンベンションビューローのFacebookでも紹介されている。



24556524738_c31decf6d5_k
171106109
 時之栖ではこの季節は夜になるとまばゆいばかりのイルミネーションが飾られる


Tsona is here !

17時には第一日目の口頭発表も予定通り終わり、登録受付デスクも閉めた。今日までに登録を予定していた海外からの参加者の中で未登録者は Narcisse T. Tsona(カメルーン)ただ一人となった。査証の申請手続きが間に合わなくて来れなくなったのだろうか、と半ば諦めかけていた。

21時頃だと思うが、レストラン麦畑で食事の後ホテルに引き返したところ、玄関前に横付けされたタクシーからひとりの人物が降りて来た。すでに周囲は暗かったが、黒い人影だったので「もしかして Tsona?」と話しかけた。

びっくりした様子でニッコリ。間違いなく本人だった! 羽田から電車を乗り継ぎ御殿場まで行って、そこからタクシーで来たとのこと。夜も遅いのでフロントに案内し、部屋に行ってもらった。


Tsona は山東大学(中国)に在籍するポスドクである。てっきり中国人と思ってメールのやり取りをしていたのであるが、VISA申請書類を準備する中でカメルーン国籍であることを知った。

彼とは8月にクレジット決済のことでメールのやり取りがあったが、9月になるとメールはもっぱら入国の手続きに関する依頼と催促になった。
「大学から公式の招待状(Official Invitatation letter)の提出を求められているので送ってもらいたい」(9/18)
「まだ招待状が届かない。これがないとVISAの申請手続きに進むことができないので早くお願いしたい」(9/26)

催促を受けて招待状を送ったのは、最初の依頼を受けてから9日後の9/27だった。この初動対応が後々にしわ寄せが行くことになった。会議も迫った10月最終週になってようやく査証の申請手続きに進むことができたらしい。メールの間隔は短くなり、次第に切羽詰まってくる。
「VISA申請のための書類一式を作って送ってもらいたい」(10/24)
半日かけて書類を作り、急ぎ押印した書類のPDFをメールに添付して送る。
「PDFではなくて本書(original document)が必要だと言われた。領事館で最初からそう言ってくれればいいのに・・・」とメールには愚痴まで (10/25)
「もう時間がないので、送るのはEMS(国際スピード郵便)にしてください」(10/26)
外務省に電話し、書類内容と本書でなければならないということを確認のうえ、半蔵門駅前郵便局からEMSで郵送(同日)
「書類がまだ届かない。どこまで行っているか調べたいので EMS の追跡番号を教えてください」(10/30)
「市内まで届いていることは確認できた。明日には配達されると思います」(同日)
これ以降 Tsona からの音信は途絶えたままになっていた。
夜、ホテルの部屋に戻ってから、関係者に「Tsona is here ! 」とメールを打った。

171109111x
 口頭発表するTsona(11月9日)

(*) Tsona には事務局の不手際で大変迷惑をかけることになり申し訳ないことをした。彼はてっきり「楽天的でのんきなカメルーン人」を想像していたが、会ってみるとむしろ正反対の真面目な好青年であった。

中国では学生に化学を教えており、「将来は研究者というよりは教師になりたい」のだとか。初来日なのに忙しいらしく、会議後は慌ただしく羽田へ向かった。「今度はワイフと一緒に来たい」と言っていたが、そのときはゆっくりと日本を満喫していってもらいたいものだ。

38376229986_849e2830af_o
 Tsona(中央)を挟んでRoss Petersen(左)鴨川(右)11月9日ポスター会場にて

38375578576_df104ef424_k
 今日から始まる口頭発表の最初のセッションで発表をするポーランドの研究者たちはいち早く会場に現れた


窮地を救ったプロジェクター

この日から『さくらの間』を会場に、いよいよテクニカル・プログラムの口頭発表に入る。
朝一番に『さくらの間』の扉を開けると、夜中の間に会場はできあがっていた。横断幕は、前夜指示した通り舞台の最前面上部にとりつけられてある。会場入口にはOral Session 会場を示す行灯も置いてある。受付デスクはこの日から2Fに移動し、あとは9時からの開会セレモニーを待つばかりであった。

問題が発覚したのはこの頃である。会場にいち早く現れPCをつないでスライドの映像を確認していたポーランドの二人の研究者が、「プロジェクターの解像度が低い」と指摘したことから、会場の前方がざわめきだした。

xx
 プロジェクターの解像度が低いことがわかり、会場内がざわめき出す

異変に気づいた会場担当の加藤先生の周りに関係者が集まる。ホテルの会場係を呼び出し、プロジェクターの取り替えを伝えるもホテル内にはこれ以上の解像度のものはないという。どこかから代替機を取り寄せる「ツテ」もないと・・・。

ホテルの会場担当に「国際会議をやるのに、こんなプロジェクターでは困る」と思わず八つ当たりをする。「この発表のための国際会議ではないか」…気ばかり焦るだけでいたずらに時間が過ぎていく。そうこうしているうちに時刻は9時になり、プログラムに従って粛々と畠山実行委員長の Welcome Address が始まった。

「今回の国際シンポジウムで色々とお世話になっている東部コンベンションビューローにあるかもしれない」・・・祈るような気持ちで担当の多田さんに電話した。

電話口の多田さんは、ちょうど車でこちらに向かうところだった。「吊り下げ型でなく据え置き型ですが、かまわないですか」と確認され、「OK。できるだけ早く届けてもらいたい」と頼み込む。多田さんはその後、わざわざ事務所に戻ってプロジェクターを積み込み、沼津を発った。

この間、会場では開催地を代表して静岡県知事代理で静岡県環境衛生科学研究所・杉山浩一所長のご挨拶。そして最初のセッション「山岳域の気体観測」に入り、野村祥平先生(国立環境研究所)、 Lukasz Chmura(ポーランド)、 そして Jaroslaw M. Necki(ポーランド) と発表はつづく。

沼津からプロジェクターが会場に着いたのは、3番目の講演の最中である。10時10分からのコーヒーブレイクの間に、プロジェクターは会場最前列のテーブルの上に据え置かれた。投影映像は鮮明だ。天井から下がっている薄っぺらなプロジェクターに比べると、いかにもどっしりしてたのもしく思われたのは気のせいか。

最初の3人の講演者には気の毒だったが、以降3日間38人の発表は新しいプロジェクターが引き継いで、最後までキッチリと代役を果たした。東部地域コンベンションビューロー (*) のご支援には感謝してもしきれない思いである。

projector2xx
 沼津から到着したプロジェクターはコーヒーブレークの間に会場最前列の机上に据え置かれた
slide2x
 コーヒーブレイクの後は天井にあるプロジェクターに代わり、会場最前列に置かれたプロジェクターで発表がつづけられた

*正式名称「静岡県東部地域コンベンションビューロー」は沼津市、三島市、御殿場市、熱海市など静岡県東部地域への国内外のコンベンションの誘致・開催のサポートを行っており事務局を沼津市に置いている。

24556200688_71d28207ed_k
 「一富士二鷹三茄子」は静岡県にゆかりが深いバスの出発前に見送りのスタッフも入って記念撮影


晴れのち曇りでも満足のツアー

ian
 8Fレストランで。前日遅く着いたIan McCubbin(中央)を挟んで Yoko Iwamoto (左) と Ross Petersen (右)

前日登録デスクに現れなかったクロアチアの Sonja Vidic 一行3名のことは、朝食のときに土器屋先生から聞いた。航空機トラブルでドーハ経由で17時間かけて羽田に着き、そのままタクシーで深夜ホテルに着いてチェックインしたとのこと。これで One-Day-Trip の参加者は事前に申し込みしていた26人全員(外国人21名、日本人5名)がそろった。

ホテルロビーで和田龍一先生(帝京科学大学)の点呼のあと、大型貸切バスで出発。行き先は『水の都』三島市の三嶋大社と柿田川湧水、伊豆フルーツパークでランチの後、箱根駒ケ岳ロープウェーへ。ツアーの行程は担当の小林拓先生(山梨大学)と和田先生が事前に下見と味見をしておいていたという。

天気の方は午前中は快晴の上々の天気であったが、午後のロープウェーの頃はあいにくガスがかかってお目当ての富士山も見えず、しかも寒かったらしい。それでも三島大社では神前結婚のカップルに遭遇し日本文化の一端に触れることができたり、参加者には十分楽しんでもらったとのこと。会議が始まる前に懇親を深める良い機会になったようだ。

24556199548_7da4e28556_k
 出発前にロビーで参加者の点呼をとる和田先生
bus
  記念撮影を終えてバスに乗り込む
wada
 ツアーのガイドは和田先生
171107093
 タイ・チェンマイ大学の一行
24556212148_c99d71e4b7_k
 柿田川湧水
38371536226_bffb1b9278_k

171107141



自分の発表がウェブサイトに載ってない

バスが発車する直前に、土器屋先生から「Ross Peterson(USA)が『自分の発表がウェブサイトのプログラムに載っていない』と言っていた」という話を聞いた。事務局部屋に戻り調べたところ、彼が発表するセッションの画像が欠落していることが直ぐにわかり、その場で手当てをした。原因は御殿場に来る直前に突貫作業で行ったサイトの改修にあった。

国際シンポジウムのウェブサイトは論文投稿収集(Abstract submission)、参加登録申込(Registration)、クレジット決済などの機能のほか、プログラム、交通案内、会場のフロアプランなど様々な情報を参加者に提供し会議の円滑な運営をサポートするものである。

ACPM2017のサイトの構築は外部の制作会社に委託していたのであるが、のっぴきならない事情があってこちら側でメンテナンスをしなければならなくなった、ということを確認したのは9月29日のことである。会議まではあと1ヶ月余りしかない。作業はまず、ウェブサイトの仕組みを解読することから始まった。

このサイトはMODXという聞きなれないCMS(コンテンツマネジメントシステム)を使って構築されている。どちらかというとややマイナーなCMSで、マニュアルも簡単なものを渡されているだけでほかには頼るものがない。MODX特有の「スニペット (snippet)」とか「チャンク (chunk)」といった用語も初めてである。その構造を理解するのに1週間、その後改造するのに1週間、都合約2週間かかった。

サイトの顔ともいえるトップページには、ヘッダーに青木一真先生(富山大学)が撮影された冬の富士山頂の風景を配し、フッターには主催団体と事務局の情報を入れ、右側のサイドバーからは余計なロゴ等を一掃しスッキリとしたデザインにした。コンテンツ増に対応できるようナビゲーションバーは全てプルダウンメニューを採用した。

ウェブサイトは改造に合わせて10日には Third Announcementを発信。16日と20日にはプログラム担当の長田和雄先生(名古屋大学)と矢吹正教先生(京都大学)が編集された Program BookAbstract Book のPDFを立て続けに登録。会場担当の加藤先生からは「ACPM2017のWEBサイトにいろいろ情報ができてきてもうすぐだなという実感がてきました」と Presentation Guideline が送られてくる。ツアー担当の和田先生からはさらに詳しいツアーの情報が・・・。サイトは一気に息を吹き返した。

件の登録漏れに容易に対応することができたのは、このような経緯があったからでもある。「怪我の功名」とでも言えようか。それにしても1年前に公開していた会議のウェブサイトを会議直前の1ヶ月前になって抜本的に作り変えるなどということは、プロジェクト管理上あってはならないこと。多くの反省材料が残った。

acpmwebsite2
 会議2週間前にリニューアルオープンしたACPM2017公式サイトのトップページ


会場下見で確認しなかった天井のプロジェクター

ホテルでは、午後から会場担当の加藤先生(首都大学東京)と米持真一先生(埼玉県環境科学国際センター)が中心となって、1階会議室で企業展示とポスター会場の設営にとりかかる。協賛企業は11社のうち展示するのは9社。ポスター発表は34件。会場スペースは十分で、余裕をもったレイアウトができた。

38371539676_5dc11f2a65_k


一方、翌日から始まるテクニカル・プログラムのメイン会場となる『さくらの間』も事前に確認することにしていたが、会場は遅くまで使われていた関係で待たされ、やっと中に入ることができたのは19時過ぎになってからである。なんでも「あべ静江のトークショー」があったらしい。

実行委員とスタッフ10数名で、横断幕の位置や発表者の登壇場所などを30分ほどかけて入念にチェック。横幅7㍍の横断幕はホテル側で壇上の奥の方に取り付けようとしていたが、スライド投影の際は邪魔になるので垂れ幕の前面にもってくるように変更を指示した。

38376400446_c4b8c5e98d_oxx
 直前の団体が使っていた横断幕は奥に引っ込んでいるのでスライドでは邪魔になる
24556266968_a87fe7ef20_ocdfaasd
 問題のプロジェクターは天井備え付け(右上方に写っている)

このとき天井備え付けのプロジェクター(写真右上に写っている)の解像度を確認しなかったのは、うかつだった。翌朝の発表が始まる前にこれでひと騒動が起きようとは想像もしていなかった。

会場ではこの夜10時過ぎになっても、女性を含むホテルのスタッフが3人がかりで模様替えを行っていた。だだっ広い会場のテーブルも前の配置のままになっており、まだまだ終わりそうもなかった。ホテルの舞台裏の大変さを垣間見た思いである。

↑このページのトップヘ