富士山測候所北側の貯水槽の上で行った風力主体ハイブリッド発電機の実証実験(Youtubeへリンク)
ネパール高所非電化農村地帯向け風力主体ハイブリッド発電機の実証実験
桐原悦雄,三沢一浩(産業技術大学院大学)
ネパールの電源確保のため再生エネルギー発電の有効活用を目指して、風力を主にしたハイブリッド発電機を設置した。今後は3千㍍級山村の電力供給に向けて無電化農村地帯の課題である「突風で羽根破損がないか」の試験・実験を日本の富士山頂で実証して、ネパール山村に展開する。
ネパールの高度3千㍍級の山村地帯は、まだ電化されていないところも多いそうです。この非電化農村地帯に電力を供給するという社会課題の解決のために、産業技術大学院大学・村越教授研究室が持ち運び可能な風力発電と太陽光発電システムを組み合わせたハイブリッド発電システムの開発に取り組んでいます。
プロジェクトの代表者・桐原悦雄氏は昨年の夏、トライアル利用で参加し山頂で設置場所などを現地調査。今回の山頂での実証実験にあたっては、チューター(産総研・兼保直樹研究グループ長)のアドバイスも受けて安全性を高めるための改良を重ね、地上での入念な試験を行って臨みました。
地上での準備風景。安全対策として安全柵の設置,土台をアイボルトによる固定に改良
発電システムは、7月23日から24日にかけて測候所北端の旧水槽の上に取り付け。作業は約1時間で完了。風力と太陽光による発電を行い、小型のバッテリーに蓄電できることが確認できました。今回の試験結果では、予定していた内容をすべてクリア。持ち運びが可能で簡単に電力が使えることで、社会課題解決の可能性は広がりそうです。
発電試験を監視するコントローラにより記録機材は,天候を考慮しクリアBOXに収納
また、試験状態を無線WEBカメラによりインターネットを利用して地上から遠隔監視しました。5分間隔(撮影間隔は設定により変更可能)で状況写真を自動的に撮影し、撮影データをクラウド上に保管する取り組みにも成功しました。
(上)持ち運びできる風力発電と太陽光発電システム手前のBOXにWEBカメラを設置(下)Webカメラが自動撮影した画像。左から7月24日の10:05、12:00、15:20に撮影
これにより,運転状態の確認に加えて,気象の変化も遠隔で状況把握が可能になることから,各方面での利用用途に可能性が広がります。今後は、より発電効率の向上を目指し改良を加え、試作品の設計情報の公開も目指して行くそうです。
さらにこの秋には富士山麓太郎坊(標高1,300㍍)で約1ヶ月間の地上試験を行う計画も浮上しているとか。富士山体をフルに活用したプロジェクトの成果に期待も高まります。
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