太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2018年08月

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 富士山測候所北側の貯水槽の上で行った風力主体ハイブリッド発電機の実証実験(Youtubeへリンク)

ネパール高所非電化農村地帯向け風力主体ハイブリッド発電機の実証実験
桐原悦雄,三沢一浩(産業技術大学院大学)
ネパールの電源確保のため再生エネルギー発電の有効活用を目指して、風力を主にしたハイブリッド発電機を設置した。今後は3千㍍級山村の電力供給に向けて無電化農村地帯の課題である「突風で羽根破損がないか」の試験・実験を日本の富士山頂で実証して、ネパール山村に展開する。

ネパールの高度3千㍍級の山村地帯は、まだ電化されていないところも多いそうです。この非電化農村地帯に電力を供給するという社会課題の解決のために、産業技術大学院大学・村越教授研究室が持ち運び可能な風力発電と太陽光発電システムを組み合わせたハイブリッド発電システムの開発に取り組んでいます。

プロジェクトの代表者・桐原悦雄氏は昨年の夏、トライアル利用で参加し山頂で設置場所などを現地調査。今回の山頂での実証実験にあたっては、チューター(産総研・兼保直樹研究グループ長)のアドバイスも受けて安全性を高めるための改良を重ね、地上での入念な試験を行って臨みました。

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 地上での準備風景。安全対策として安全柵の設置,土台をアイボルトによる固定に改良

発電システムは、7月23日から24日にかけて測候所北端の旧水槽の上に取り付け。作業は約1時間で完了。風力と太陽光による発電を行い、小型のバッテリーに蓄電できることが確認できました。今回の試験結果では、予定していた内容をすべてクリア。持ち運びが可能で簡単に電力が使えることで、社会課題解決の可能性は広がりそうです。

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 発電試験を監視するコントローラにより記録機材は,天候を考慮しクリアBOXに収納

また、試験状態を無線WEBカメラによりインターネットを利用して地上から遠隔監視しました。5分間隔(撮影間隔は設定により変更可能)で状況写真を自動的に撮影し、撮影データをクラウド上に保管する取り組みにも成功しました。

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(上)持ち運びできる風力発電と太陽光発電システム手前のBOXにWEBカメラを設置(下)Webカメラが自動撮影した画像。左から7月24日の10:05、12:00、15:20に撮影

これにより,運転状態の確認に加えて,気象の変化も遠隔で状況把握が可能になることから,各方面での利用用途に可能性が広がります。今後は、より発電効率の向上を目指し改良を加え、試作品の設計情報の公開も目指して行くそうです。

さらにこの秋には富士山麓太郎坊(標高1,300㍍)で約1ヶ月間の地上試験を行う計画も浮上しているとか。富士山体をフルに活用したプロジェクトの成果に期待も高まります。

(関連記事)
ネパールで風力発電の伝道師に 富士通を定年退職の横浜・桐原悦雄さん(東京新聞)

(広報委員会)


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180809葉書裏

先日の山頂からの「消印付スペシャル暑中見舞い」には御殿場の環境協会からも反響がありました。

案内所のお客様には今年のライブカメラご紹介しています。珍しい角度でびっくりされます。
開かれた研究は山頂への魅力と観測タワーへの理解が進みますね。
引き続き、みなさまのご活動を下から応援させていただきます。

との有難いご返事です。
なお、この観光協会案内所にはNPOのパンフも置かせていただいています。

(広報委員会)


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「富士山頂日誌既に廃棄:68年間つづった40冊、専門家「一級の資料」
毎日新聞8月10日朝刊、社会面p30に荒木涼子記者の署名入り記事が載りました。

富士山測候所の簡単な紹介や、廃棄された日誌の写真と共に
中島博「カンテラ日記-富士山測候所の50年」(ちくま少年図書館90、社会の本、1985)の内容から、主なものが紹介されており、1944年11月24日「首都圏空襲」、1945年7月10日「地方都市も」、7月30日「被弾」と戦争中の測候所や1945年9月19日の「米兵登山」、1966年3月5日の英旅客機墜落などの記事もあります。

最後に、本NPOの鴨川理事による「世界でも珍しい資料。なぜ廃棄されたのか理解できない」というコメントも載せられています。

内容は下記のURLからもご覧になれます。

https://mainichi.jp/articles/20180810/k00/00m/040/187000c

(広報委員会)

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東京理科大学ブランディング事業ウォーターフロンティアサイエンス&テクノロジー研究センター主催の国際会議WMS2018(Water on Materials Surface 2018、物質表面の水2018)が2018年7月25日〜27日に東京理科大学葛飾キャンパスで開催されました。口頭発表22件、ポスター発表84件、343名の参加がありました。若手対象のポスターは約40件で、7件がBest Poster Awardを受賞し、その中で

前田麻人、三浦和彦、森樹大、佐藤丈徳(東京理科大学)、岩本洋子(広島大学)の5氏による
 Comparison of CCN characteristics measured in the Tokyo Sky Tree and various places

の発表は、東京スカイツリーで測定した雲凝結核特性を富士山頂などの他の地域と比較したものであり、環境分野で唯一、賞に選考されました。
 富士山測候所を活用した研究はこんな形でも最先端の科学研究を支えています。


(広報委員会)


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 1990年代の測候所(佐藤政博撮影)


1990年代まで富士山レーダーを擁して「台風の砦」であった富士山測候所は、当然のことながら、台風に襲われることが多いところです。上空の大気の動きが速いため、山頂では台風の影響は地上より数時間早く現れます。

立平良三・元気象庁長官は、富士山測候所勤務を経験された方ですが、「富士山測候所との10年」(変わる富士山測候所、春風社、2004)の中で次のように書いておられます。


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・・・・・・期待通り、富士山レーダーは南方洋上から接近する台風を、500~600kmもの遠方から監視する役割を果たしてきました。富士山のレドームは秒速100mの強風にも耐えることのできる設計でしたが、一度だけ、レドーム(レーダードーム)のフレームに取り付けられている強化プラスチック(一辺2m程度の三角形)が破損したことがあります。1966年台風26号が富士山の西側を通過した時のことです。このとき、山頂の風速計は最大風速91.0mを記録、その後壊れてしまいました。


強風はベルヌーイの定理が示すように、レドーム内の静止空気より気圧が低いため、内部の空気は破損部分から吸い出され、床に張られていた防水用のゴムシートは膨れ上がり、裂け目が生じました。雨水が裂け目から降りかかり、危険を避けるために送信を停止せざるを得ない状況にい陥りました。この時台風の中心は既に山梨県付近まで移動、ほかのレーダーに観測を引き継ぐことで富士山レーダーは任務を全うすることが出来ました。破れたプラスチックパネルはレドームの下部に取り付けられていたもので、風によってではなく、飛ばされた岩石が衝突して破れたものと推察されます。風だけなら、設計通り十分に持ちこたえたでしょう。

   ・・・・・・・・・・


その後、大型パネルに強大な風圧が直接かかり、ねじれて掛け金が外れ、内側に倒れ掛かってきました。80kgもあるパネルを5人がかりで必死に支え、重い箱や心張り棒に少しずつ置き換え、一時間ほど耐え抜きました。パネルが倒れていたら、塔内のレーダー機器や地上観測機器は水浸しになり、大損害はまぬかれなかったでしょう。・・・・ 


NPOが夏の2か月、管理運営するようになってからも、台風による影響は多く出ていますが、会報誌『芙蓉の新風』の中から、台風関連を拾ってみると:2007の開所時の台風のあと、2009年長澤先生グループが登山中止、2011年見学会見合せ、2014年7月に大型台風8号接近で一時閉所下山(生越班長)、2015年、大気化学の荷揚げと重なったり、ブラタモリの撮影がぎりぎりだったり、2016年は7.8でブルが断念して下山(大河内研、8.21)など。

これらは、山頂班の岩崎班長が「通常業務の範囲です」といわれるものがほとんどですが、今年はどうやら、それ以上の「当たり年」のような予感があります。前回の台風12号は東から西へ動く異例のコースをとり、仮設庁舎の雪囲いにも被害をもたらしましたが、今回の様子は(岩崎班長のチャットによると)

徐々に風が強まっています。風が前回と同じNNEなので、雪囲いが無くなった所からの吹込みが強く、仮設(庁舎)ー4号(庁舎)間の連結部分が脆弱で、危険だったので応急処置をしていました。
相変わらず風圧でドアの開け閉めが大変です。酔っぱらっている訳では無いのですが、小刻みに仮設が揺れています。(笑)長い1日になりそうです。まあ、いつものことですが、気持ちよくはないですね。
仮設はあちこちから風が吹き込んで結構寒いです。最近床下からも吹き上がって来ます。


とのことで、一昨日(8月7日)、研究者たちを急きょ下山させた山頂班の判断に感謝して、台風13号が12号で傷んだ仮設庁舎を吹き飛ばさないことを祈って長い一日が過ぎました。何とか無事にやり過ごしてほっとしていますが、南海上には台風14号が発生したとか・・・心配の種はつきません。

(広報委員会)




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