太郎坊のそよ風

認定NPO法人 富士山測候所を活用する会 オフィシャルブログ

2019年04月

 無題1(.png)
        挨拶  (公財)中部科学技術センター撮影

3月26日の本ブログ欄に「富士山のテッペンとボクの手のひら」というタイトルでご紹介しましたが、古田豊理事が4月20日に名古屋市科学館で行った講演は、約150人の聴衆があったとのことです。

最初の挨拶に続いて、次のような目次で講演が始まりました。 
  1. 「富士山のテッペン」に 何がある?
  2. 「手のひら 何ができる?
  3. びっくりしたこと
  4. 風を釣る        実験 (ステージ実験)
  5. 落ちる           実験 (手元実験 ステージ実験)
  6. 玉を浮かせる   実験 (ステージ実験)
  7. 運ぶ              実験 (ステージ実験)
  8. 聞こえた音
  9. 動物・植物
  10. 写真から読み取ろう
  11. 食事
  12. すてきな富士山
 以下に古田理事のメールを紹介します。


ステージ実験と手元実験を交えた約80分間の講演は、私立小学校の理科の先生と協力して行われ、小・中学生と保護者などが楽しく学び合いました。「富士山のテッペン」の自然を探る理科実験を4つ紹介し、「手のひら」を使った工夫を考えました。

例えば「風を釣る実験」では、釣り糸の先につけたバルーンで富士山頂の空気の流れを探り、釣竿のしなりで風の強さを探る方法と動画を紹介しました。

無題2
 「風を釣る実験」ヘリウムガス入りバルーンを空中に浮かせる  (公財)中部科学技術センター撮影

無題3
「風を釣る実験」送風機から空気を当てて、風向きを見る  (公財)中部科学技術センター撮影

ヘアドライヤーの送風で「玉を浮かせる実験」では、玉の浮き方が山頂と平地でどう違うかを探る方法を紹介しました。

無題4
 「玉を浮かせる実験」玉は浮上し、どう回転し、どう振動するか  (公財)中部科学技術センター撮影

無題5
 直径約1mの風船に空気を斜めから当てて、空気の流れを想像する  (公財)中部科学技術センター撮影

「落ちる実験」では、軽いカップ状の物体を同じ高さから落とすと、平地の方が富士山頂よりゆっくり落ちました。講演会場ではほぼ等速で落ちることを手元実験で確かめました。

植物のタネが回転しながらゆっくり落ちる落ち方を、折り紙とクリップの簡単工作で真似をして、自然界の植物の営みの一端を探る実験と見方を学びました。

こうした旧富士山測候所での教材づくりの活動が、次世代を担う小・中学生に襷を繋げる自然探究の一助となれば嬉しいです。


今年の夏も富士山頂では、新しい教材作りに意欲を燃やす古田理事やそれに続く教育者の活動が計画されています。13年目を迎えた富士山頂での夏季観測は多様化していますが、教育分野でも大きい花を咲かせることでしょう。

(広報委員会)






DSCN3106
富士山環境研究センター(LERMF)発足会に集まったメンバー(撮影:鴨川仁)

4月20日に富士山環境研究センター発足第1回目の会議を、NPOの東京事務所で行いました。

只でさえ狭い東京事務所の片隅に、センターの場所を作り、4名の構成員(畠山理事長が研究センター長を兼務、第一研究部、土器屋、安本、源)という陣容で、目下、文部科学省へ書類を提出、e-Radを申請できる団体にする準備中です。

英文名称はACPM(Symposium on Atmospheric Chemistry and Physics at Mountain Cites) 2014 の主催者だったGannet A. Haller、Uhta 大学准教授でSPL(Storm Peak Laboratory)の協力を得て
Laboratory for Environmental Research at Mount Fuji (LERMF) と決めました。

現在のところ無給、研究費自弁のまことに小さい研究部ですが、夢は大きく、世界の大気を捉えるために富士山頂で観測研究をスタートさせます。115年前の明治28年、野中到・千代子夫妻が富士山頂で自費で建てた観測所の流れをくむ「富士山測候所」の利用をさらに進めるための研究センターです。

悪い条件にめげない、否、条件が悪いからこそ、得られるデータの貴重さを理解するガッツのある若い研究者の方々の参加をお待ちしています。

NPOは今年の夏の第2次公募と学生公募を現在行っています。興味のある方は是非ご連絡下さい!!

2次公募(4月15日~6月28日)
http://npo.fuji3776.net/document/20190415news.pdf
学生公募(4月15日~5月24日)
http://npo.fuji3776.net/document/20190415-1news.pdf

(広報委員会)







21,may,fuji 004
    富士山測候所 2007年5月21日(撮影、岩崎洋)

年度が改まり、人事異動と桜前線が気になる慌ただしい4月のはじめですが、富士山頂では何が起こっているでしょうか?

上の写真は、2007年5月に点検のために登山した岩崎洋山頂班長が撮影した測候所です。NPOはこの測候所のほぼ3分の2にあたる496.94㎡ を気象庁から通年で借用しています。研究者等の立ち入りは安全のため夏の2か月に制限されているため、現在、測候所の建物は無人で、バッテリー駆動の装置だけが動いています。

一昨日、本ブログに富士山頂の積雪量(4月から5月に増えること)を入れたら、岩崎さんから下記のような指摘がありました。

山頂のデータ(気象庁:アメダス、富士山頂)が欠測になっています。
湿度は10日の13:00から気温、気圧は今朝(4月11日)05:00から、止まっています。
http://www.jma.go.jp/jp/amedas_h/today-50066.html?areaCode=000&groupCode=34


これは気象庁が管理している部分にあるアメダス装置に何か問題があったようです。おそらく、4月10日の降雪や霧氷による影響と思われます。この時期は、山頂で稼働している測器にも、いろいろ問題が起こりやすいのです。厳冬期のサラサラの雪は吹き飛ばされてしまいますが、4-5月の水分を多く含んだ雪はソーラーパネルの表面に付着したり、根雪となって重さで測器を押しつぶしたりします。

NPOが借用している部分では、国立環境研究所の野村渉平・博士研究員による二酸化炭素などの通年観測、東京学芸大学(現・静岡県立大学)鴨川仁准教授らのグループの大気電気、宇宙線関係の観測、産業技術総合研究所・兼保直樹主任研究員による大気水銀の観測などが行われています。

幸いなことに、野村さんによると、二酸化炭素のデータは順調に送られてきているいるとのことですが(16日現在)、一部の観測データは夏になって、ロガーを開けるまで分からないものもあり、ハラハラしながら、登山が許される夏まで待つほかはありません。

一方、一足先に春が来る富士山麓でも問題は山積です。
2016年にもこんなことがありました。5月2日のNPO(関電工)の架空送電線の点検では異常なかったのに、5月25日に気象庁が同じ場所で大量の土砂の埋設を発見し、開所直前に埋設土砂の撤去工事して間に合わせました。雪崩がこの間に発生したようです。
http://npofuji3776.blog.jp/archives/1059929148.html

これらの結果、修復にかかる経費は着実にNPOの運営を圧迫します。 美しく雪化粧した富士山を眺めながら、NPOのメンバーには気がもめる季節です。

(広報委員会)




1ED73FDF-83B5-415F-B58B-1EBC8EA668CB
 多摩川・浅間神社から見た富士山(撮影:超泰勇・2019年4月11日朝)


「花冷え」で日本列島が震え上がった一昨日(4月10日)、富士山も雪化粧を改めました。

東京都の多摩川浅間神社から11日の朝、趙泰勇さん(昨年、山頂のライブカメラでお世話になったCHO&CompanyのCEO) がスマホで撮影して送って下さった上の写真では手前の丹沢まで雪が付いていることがわかります。

d399ea31x
 静岡県立大から見た富士山(撮影:鴨川仁、2019年4月11日昼)

一方、こちらは4月11日昼、静岡県立大学から鴨川仁・特任准教授が撮影した富士山ですが、この角度から見るとそれほどはっきりわかりませんが、積雪量は着実に増えています。

ところで、富士山の積雪量はいつが一番多いでしょうか?

気象庁が有人観測をやっていた72年間の記録をまとめた「富士山頂:有人観測72年の歴史(2004)によると



IMG_1281

 富士山頂の気温は低く、月平均気温がプラスになるのは6-9月の期間にかぎられる。このため、降雪の期間が長く、初雪は9月14日で終雪は7月10日である(平年値)。一般的に「根雪」と呼ばれる積雪は上図に示すように4月下旬が最深となり2m弱の深さが平年値である。厳冬期を中心に降る雪は雪片密度が小さく、平均風速が15m/sを越える西(北)風によって山頂部の積雪は飛ばされ、富士山体の東から南斜面に多く積もる。
 春先になると冬型の気圧配置はゆるみ、日本海や東海地方の南岸を温帯低気圧が北東進する頻度が高くなる。気温が高く十分に水分を含んだ雪片は、山頂部にも大量の降雪をもたらす。積雪深が増し、古い降雪と、新しい降雪との固着強度、または山体と積雪との固着強度が何らかの原因で弱まると、平均斜度22°、山頂部で30°を超える斜面では、雪崩の危険性が高くなる。・・・・
「2003年11月地質ニュース591号」より抜粋


このように、富士山頂付近の積雪量はこれから増え始めます。今年も、第13回目の夏の観測に向けて、NPOの学術科学や活用委員会では研究テーマの選定などの作業が大詰めで、NPO事務局は大忙しですが、積雪量の増加は、雪崩や送電線の事故につながることが多く、気がもめる時期です。

ここ数年は積雪が少なく、比較的スムーズに開所できたのですが、過去には積雪が多くて、7月半ばになってもブルによる荷物運びに苦戦したことがあり、これ以上積雪が増えないことを祈っています。

(広報委員会)


↑このページのトップヘ